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222.におい
しおりを挟むニオイがする。
湧き出たばかりの、奥深く甘ったるい蜜。
たった今まで、目の前に佇む男は、どれほどか分からぬほど発情した子兎を味わっていたのだ。
儀式が始まる寸前すら惜しみ体を貫かれていたならば、ミチルは彼にどれほど繰り返し犯されたのか?
「───殺してやる」
2時の刻を告げる鐘が爆破音を遮る。
ルシフェルの決定的な弱点を上げるとしたら、今が満月の深夜であること。
サタンが特に深い眠りに着いている二刻の代は魔力操縦が制限され不安定になる。完全に無力化する丁度2時を狙ったバイオレットの炎は、ルシフェルの全身に無数の刃を突き立てた。
刹那、刃はそれぞれに破裂する。
飛び散る炎の断片を無視して、ハインツェは既に先を移動し始めた。
手応えは抜群だった。
回復にはかなりの時間を要する。
その筈だった。
「·····かはッ··········」
視界が傾く。
口の中に鉄の味が広がる。
ハインツェはその場に膝を着いた。
「これでも10分の1の威力だが·····並外れたエネルギーだ」
「少し見くびっていたようだ」と、仕留めたはずの相手は、実験の経過を見るように言った。
「どうだい、自ら編み出した攻撃を自身で受けるのは」
いつの間にか目の前に立った男をみあげる。
傷一つない純白のタキシード。見下ろす赤は、いっそ青にも見えるほど冴えていた。
(そんなはずがない)
特性は空間移動。皇族の中で、統治の次に特異とされる能力だ。
しかし、攻撃を与えた時、たしかに彼の魔力は無力化中だった。
そもそも攻撃だけを移動させるなど、聞いたことがない。
彼は、一体何だ?
「既にワープで魔力を限界消費した上、敵の位置も定かでないのに体力を消費し続ける。あまりにも無鉄砲な様子から、目的は他にあるようだ」
「グ·····ッ」
伸びてきた蔦が背で両腕を縛り付ける。
おかしい。
まるでマナは、彼の両腕のように思うがまま作動する。
(こんなことが可能なのは·····)
「·····全く·····」
ルシフェルは不意に呟いた。
無言に失笑が混ざる。
「·····?」
周囲に視線を走らせたハインツェは、ふと動きを止める。
新たな気配だ。
ヨハネスでは無い。瞬時にわかるほど、大きな気配だ。
全身に悪寒が駆け抜けた。
そして、数秒間、赤い月が消えた。
「··········っ!」
扉が開くのとともに、体をさらったのは暴風だった。
柱にしがみついてしゃがみこむ。
背後は闇。目をこらすと、どこからか明かりが弾けて消える。
ずっと下に剥き出しの高原が広がっていた。
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