悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

文字の大きさ
上 下
103 / 699

88.選択肢

しおりを挟む





また・・逃げるのかい?」


行く先は磨きあげられた革靴で遮られる。

「また」。
まるで、幾度となく自分が彼から逃げたがっているような言い草だ。
そんなこと一度もなかったはずだ。
いつでも、少しでも振り向いて欲しくてたまらなかったのに。


「さて」


冷静な声が暗く沈んで聞こえる。
ほかのことを考えているみたいに抑揚のない声だ。

大理石の床が膝に痛い。
革靴が顎を持ち上げる。強制的に見上げさせられた美形が、言い聞かせるように言った。


「このまま続けるか、ベットに移動するか、好きな方を選ぶといい」


尻から伝った愛液がそっと床を濡らす。

抱かれることは決定している。
選択肢は二つあって一つしかないようなものだった。


(なら、断ったら、ここで·····?)


こんなところでこの前のように揺すられたら、身体中打撲痕だらけになってしまう。

痛くてたまらないだろう。
故にこれは、脅しにほかならない。


ミチルは彼の望む通りの答えを告げた。
無造作に姫抱きされ、硬い胸に身体を預けることになる。
ベットに降ろされる頃、心臓は壊れてしまいそうなほどうるさかった。

彼はもう何も話さなかった。
こちらへ迫ってくる体躯にならい、恐る恐る脚を開く。ネクタイを緩める姿は吐息が漏れるほど性的だった。

正常位この体制はだめだ。

彼の顔を見ながら抱かれる自信が無い。きっと今よりももっとはしたなくておかしくなってしまう。
ミチルはうつ伏せになり、彼の方に尻を突き上げ枕をにぎりしめた。

慣らされることも無く、直ぐに蕾に熱を感じた。


「にぁ"う"ッ♡!」


ズン、と、鉄の棍棒が限界まで内蔵を押し拡げる。

押し出されるような叫び声とともに鼻水が垂れる。彼の肉棒は、根元まで余すことなく奥へ突き刺されていた。


「·····く·····ヒッ·····」


甘イキしたまま痙攣が止まらない。
シーツには、一撃で透明な液体が噴射される。


「········まともに解していないにもかかわらず、随分柔らかいな·····」


「ああ」と、誰にともなく低い声が呟く。
溶けるような音色を背に吹きかけられると、感じたのは恐怖心だった。


「今みたいに善がったのか?」


続く笑みの不気味さに戸惑いながらも、振動を拾ってクヒクヒ鼻が鳴る。
しがみついていた枕は取り上げられ、どこかへ投げ飛ばされてしまった。


「どうやら、俺の言いつけを忘れるほど夢中に交わったらしい」

「·····へ····?·····──ぁ、ッ♡」


「なぁ」と、ダリアが前かがみにこちらをのぞきこんでくる。
高い鼻がこめかみを撫でた。濡れた吐息に続き彼が引き抜かれ、元の場所へ戻された内臓が、また欲棒に押し上げられる。


(·····なんのこと·····?)


ねっとり舐めるような動きだ。
肉襞は不規則な凹凸に擦られる。頭の先からつま先まで、えもいえぬ快感が駆けていった。

彼は無言のまま動きを止めた。
しばらくしてもなんの反応もない。

腹の中に馴染んだ熱は、粘膜と隙間なくくっついて異様な執着性を覚える。
おかしなことだ。
彼に執着しているのは、自分の方だというのに。


「あいつの熱欲は美味かったか?」


言葉の意味をやっと理解したミチルは言葉を失った。

どうしたらそんなふうに勘違いするんだ。
確かに危ないところだったけれど、今夜はダリアのところに行くと思って───。


「ち、がう·····」


(なのに、どうして)


ダリアを思うと、最近は辛くて惨めで、苦しくてたまらない。
ハインツェに虐められるのとは訳が違う。身体よりも心へ、耐え難い痛みが襲う。なのに逃げることも出来ない。

もう、ダリアの言いなりにはなりたくないと思った。

パーティは楽しかった。
ダリア以外のことで胸がはずんで、痛みや苦しみから開放された。


"君には選択肢がある"


ルシと過ごす時間は穏やかで特別な雰囲気だ。
彼なら、この惨めで辛いところから連れ出してくれると、確信さえ感じる何かを覚えた。

でもここに来てしまったのだ。


「ルシ、は·······」

「·····──ルシだって·····?」

「ちが·····──~~~っ"!!、♡」


パンと高い音が響いた。
熱い痛みが尻の頬に広がる。目の前を火花が散り、一瞬意識が遠のいた。


「少し·····黙っててくれるか?」


まだおぼつかない耳の奥に、抑揚のない言葉が囁かれる。


「でないと殺してしまいそうだ」






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ぽち

uca
恋愛
小松鈴芽、二十四歳。社会人になって二年、しばらく前から大学の先輩高橋さんとふたりで読書会を催している。ある読書会の日、ノーブラノーパンで参加することになってしまった。 ※ 他サイトにも同内容の作品を投稿しています。

人生初の友達ができたので一緒に世界救ってきます (せかます)

す!ず!は!
BL
 20年間まともに友達のいなかったコミュ障・透の話し相手は、  火の玉の姿をしたウィルという悪魔だけ。  ある日、ウィルと異世界転生モノについて話していたところ、  彼の力を借りれば異世界と日本を行き来できると判明。  日帰り感覚で異世界に転移することになる。  転移先で見たものは、主に日曜日の朝あたりになんだか見覚えがある変身ヒーロー……  が、ファンタジー作品定番の魔物にキックでとどめをさす場面だった。  これは、自称悪魔しか友達のいなかった主人公・透が異世界転移によって「異世界転生者」たちと知り合い、  仲間に入れてもらったりセクハラを受けたり冒険したりしながら強くなっていくお話。 2022.09.17~しばらく毎週土日更新の予定。 各0時更新の予定でしたが予約設定を間違えて微妙な時間に更新してしまったので ちょっと調整します……mm 2022.10.15 すみません、ちょっと別口の漫画原稿が追い付いていないので少しお休みします 具体的には10/23までは上がってこれなさそうです。 2019/07/18 注意書き ①「ファンタジー系王道少年漫画、ただしヒロインが男」みたいな話をヒロイン(受)視点で書いてます。 ②ムーン、フジョなど重複投稿中。更新最速はアルファポリスのみです。 ③★:作者による挿絵付き、※:R指定。「Rは保険」状態が続いてます。 ④メインルートは勝宏×透。色んな人にセクハラを受けますが主人公は勝宏一筋です。 ⑤救いようの無いほど受が酷い目に遭うことはありませんが事件・災難にはよく巻き込まれます。 ⑥受の一時的な女体化がありますが、妊娠ネタなどはありません。 ↓↓大好きな水森なつるさんに当作品のイラストをたくさん描いていただいています! *pixivにまとめていただいた分はこちらから https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=76077313 2019/08/20 タイトル タイトルが長いので、略称アンケートを取ったのち、残った2つから水森なつるさんに選んでいただきました。 「せかます」になりました。引き続きよろしくお願いします!

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~

雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。 元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。 ※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ

中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。 ※ 作品 「男装バレてイケメンに~」 「灼熱の砂丘」 「イケメンはずんどうぽっちゃり…」 こちらの作品を先にお読みください。 各、作品のファン様へ。 こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。 故に、本作品のイメージが崩れた!とか。 あのキャラにこんなことさせないで!とか。 その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)

アルファ喪女は発情中のオメガ男子に子種を求められています

M
恋愛
私はアルファとして生まれた貴腐寺院 喪子(きふじいん もこ)。 オメガ男が発する強烈なフェロモンのせいで私は常時発情中だった。強すぎる性欲に毎日悶々としていた私の前に突然、天使のようなオメガ美少年である処田 尾芽牙(しょた おめが)が現れる。彼は番のいないフリーのアルファやベータを性別問わず強く惹き付けるフェロモンを常に出してしまうため、アルファである私と番になることを要求してきた。オメガはアルファと番になることでフェロモンを放出しなくなる。だからアルファと番になりたいのは分かるけど、どうして私なの⁉︎ アルファ喪女×オメガ男子の変態劇がここに開幕! ※オメガバースという性別設定を使用しています。逆アナル、喪女×男の子、男がアンアン喘ぐ、男性妊娠などの各種特殊性癖要素を含みます。ムーンライトノベルズにも同作を公開中。

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

処理中です...