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63.自慰
しおりを挟むどうしたら、ダリアはまた微笑んでくれるんだろう?
あの日の彼はおかしかったんだ。きっと自分が、とても悪いことをしたから、あんな事をしたんだ。
だからまた彼の言うことを聞いていたら、優しく頭を撫でてくれる。
まだ必要だと、そう言ってくれる。
「·····ごめんなさい·····」
怒っている彼は怖い。
どうか優しくなってくれるようにと願うが、謝罪は逆効果だった。
1歩近づいたダリアにならって半歩後ずさる。
威圧的に見えるのは、背が高いことだけが理由ではないだろう。
「本当に無知なんだな」
ミチルはその場にへたりこんだ。
立ち止まった彼は宙を眺め、面倒そうにこちらを見下ろす。
服を脱げと、冷たい声が言った。
「へ·····」
「下着も全て」
有無を言わせぬ雰囲気に、疑問さえ奪われてゆく。
促されるまま服を脱ぐ。あらわになる裸は、冷たい空気のせいで熱く感じた。
(下着も·····)
恥ずかしさに震える足を持ち上げて素っ裸になる。
ダリアは顎でベットを指した。
それが意味することは明確だ。
恐怖の中に浮かぶ浅ましい期待に惨めさを感じながら、ミチルは彼を見上げた。
「で、でも、今は·····」
「勘違いするな」
蚊の鳴くような声は一蹴される。
ベットは彼の匂いがした。それだけで、腰の辺りが鈍く疼いた。
この後はどうしたらいいんだろう。
膝を抱えて縮こまると、秀麗な眉が歪んだ。
「自分で慰めるんだ」
ミチルは驚いて彼を見返した。
冷ややかな瞳は執務机からこちらを眺めるだけだ。
出来るわけない。『じい』の意味をやっと理解したのだった。
「どうした?」
お前の大好きな事だろう。
そう言ったダリアを見つめながら、あれは白昼夢でもなければ、いっときの過ちでもなかったと知る。
あの時の彼こそが本当なんだ。
罵倒し大嫌いだと言い捨てたのは、全部本音だったのだ。
「まだ"分からない"か?」
静かな恥じらいに耐えるしかなかった。
膝を抱えたまま孔を探し当てると、皮肉にもそこは潤っていた。心と体は裏腹で、まるで自分自身のものでは無いように感じた。
「当たり前のようにそこを慰めるんだな」
長い指から覗いたのは失笑。
頬が熱くなると、ねばつきのある蜜が漏れだした。
「獣人は皆そこで自涜するのか?」
「·····っ·······ン·····っ········」
彼の言い方からして、返答は既に知っているようだった。
男も妊娠できる生殖器能を持つが、長らく戦争が途絶え、男女の比率が均等な今、地球での同性愛は極めて稀だ。
故に男は種をうえつけるためだけの欲望を持つ。
自分がここをいじるのは──彼らの種を覚えたせいだ。
「·····っ·····♡」
中指をしのばせて、縮んだ粘膜を撫でる。
こんなこと、1人のときでさえしたことがない。
恥ずかしくてそれどころではなかったのは、時間にすればたった2分弱後だった。
「はぅ·····ン·····っ」
空気が揺れて、彼が足を組みかえる気配がする。
覗き見ると、冷めたバイオレットがこちらを監視している。片時も離されない視線が辛くて、恥ずかしくて惨めなのに、鼓動が高まってゆく。
自ら快楽を得る痴態を彼に見られている。
時計の針の音に混じる吐息を殺して、そっと薬指も追加した。
「臭うな·····」
「臭うな·····」
「!」
不意にガラス窓が開け放たれた。
「フェロモンを調節することも出来ない」
頷いて答えることしか出来ない。
発したら、不愉快な声を聞かせてしまうかもしれない。
全身を巡る甘電に震えながら、出来る限り奥へ指を押し込む。
胸元に滴ってから、唾液をこぼしていたと気付かされた。
ふと、こちらを振り返ったダリアが立ち止まった。
長い影が近づいてくる。
びっくりして局部を手のひらで隠す。直ぐに「続けろ」と命令された。
ダリアとの距離はたった1メートルほど。
彼はさらに近づいてきて、上半身をかたむけた。
「性交もしていないのにここまで濡れるとは」
「·····ぁ·····!」
指先が、熟した潤いをなでた。
入口がかさついた中指の腹にちゅうと吸い付く。
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