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58.上書き
しおりを挟む器用な指だ。掻き出すように2本が出入りして、ヒクつくと、力を抜くよう囁かれた。
「ふ、ぅ········ん·····っ」
血管の浮きでる腕を抱きしめて、代わりに下半身から力を抜こうとする。
彼はなぜか、大袈裟なほどビクリと震え、しかし無機質な機械のように作業を続行した。
「はぁ····っ·····あ、ぅ··········んぅ·····」
白い濁りが水と一緒に排水口へ流れてゆく。股が閉じてきてしまうと、浴槽の外に運ばれ、膝立ちにさせられた。
尻を突き出した格好で床に這い蹲る。
彼の身体に背を任せるのが楽だったが、吐き出すためにはこの方が良さそうだ。
「ひぁんっ♡」
ミチルはあわてて下唇を噛んだ。
中指が奥を直進したのだ。この体制だと、深過ぎる。
ミチルは弱く首を振った。
「少し我慢してください」
肛門にシャワーをあてられる。まさかと思った頃、シャワー口がつぼみに密着した。
「ぁ·····──ッ♡」
跳ねる尻は片手に抑えつけられる。
目の前には白い火粉が散っている。
軽くイッてしまった。
彼は一度手を止め──また内側へ侵入してきた。
「·····ぁ·····♡·····はぅ·····ぅん·····♡」
「その声、やめていただけますか」
ジェロンはぶっきらぼうに告げた。
「こ、え」
抑えていたつもりなのに、効果はなかったらしい。
やめろと言われてもやめられないのだ。
奥の襞を拭った指が折り曲げられる。情けない鳴き声が漏れると、ジェロンはそれをわざとだと受け取ったらしかった。
「不愉快なのですが」
「·····っ」
苛立ちの含まれた声だった。
汚い仕事をさせられてブチ切れ寸前なのだろうか。声を押し殺すと、彼の指がまた、ピタリと止まった。
「変ですね」
「·····っン、!」
妙だ。
長い指は割れ目を伝い、また指先からゆっくりとナカを侵食してゆく。
「掻き出しているはずなのに、粘付きが取れません」
こんなのイジメと変わらない。
膝が痛いし、声を我慢することも出来ない。
熱心に雑務をこなすジェロンを想うと申し訳なくてたまらなくなった。
仕事だろうが無愛想だろうが、面倒を見てくれている事に変わりないのだ。
「タオルを取ってきます」
少し砕けた敬語を残して立ち上がったジェロンの前に影ができた。
「あとは俺がやる」
入口に寄りかかっていた男が告げる。
彼に、先程までの殺気はなかった。
「下がれ」
ミチルはそっと瞼を閉じた。
「はぁ····っ·····あ、ぅ··········んぅ·····」
白い濁りが水と一緒に排水口へ流れてゆく。
やりにくいので床に寝かせ、尻を突き出す格好にさせて、また作業に取り掛かる。
ニャーニャーと鳴く幼い声に、ジェロンは若干のいらだちを覚えた。
勿論、それ以外の感情は持ちえない。
まるで他人事のように手を動かす。聞こえてくる甘声に欲望が頭をもたげるのも無視していた。
手っ取り早いところ終わらせ、邪心は殺さなければいけない。
肛門にシャワーをあてる。水と一緒に吐き出させようと、少し水圧をあげる。
「ぁ·····──ッ♡」
大きく跳ねた尻はビクビク痙攣しながら震えていた。
いっそう甘い声に、自らかけていた魔法が解けてしまった気分だった。
「·····ぁ·····♡·····はぅ·····ぅん·····っ♡」
──イッたのか?
快楽を拾って、熱い肉が収縮する。
ゆっくりと中指を押し込めてゆく。
すると、それを味わうように、粘膜が絡みついてくる。
「その声、やめていただけますか」
「こ、え」
いらだちは大きくなってゆく。
無防備で幼いミチル。弱いのも、そのせいでここまで傷つけられたことも、全て自己責任だ。
小さな身体が快楽に濡れるのを見るのは初めてではない。
この頼りない唇から、ありえないほど悩ましい声だって出るのだ。
知っている。
ただそばにいたからだ。
「不愉快なのですが」
男たちに抱かれた時の声。
嫌いで仕方が無いのに───理性を奪われそうな光景を見て、誰かが、上書きしたいと云う。
ジェロンはふと手を止めた。
指先に熱い液体が滴り、肉壁の隙間から濃密な香りが漂ってきた。
獣人が欲情した時に漏らすものだ。
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