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しおりを挟む「せんぱ·····」
寝言のように呟き、優介はぱちりと目を開けた。
「せ、先輩?!」
慌てて立ち上がる。
バランスを崩した優介は、翔に抱き留められた。
「大丈夫?」
彼はここにいる。どこでもなく目の前にいるというのに、もうその唇に触れることすら叶わないというのだろうか?
少し口ごもってから、優介ははいと頷いた。
翔は優介から手を離した。
「先輩、俺、もう先輩とは必要以上に関われません」
六月下旬、丁度一年前。
優介と翔がこの図書室で言葉を交わした頃だろう。
その時よりも、翔は日に日に魅力的になっていった。
彼を知るたび、恋心は留まることなく大きくなっていった。
なのに、自分はおかしいのだ。
つい一ヶ月程前に現れた本郷司に弄ばれて、大好きな翔を裏切ってしまった。
終わらせなければいけない。
優介は翔の返答を待った。
「分かったよ」
おもむろに言った翔を見上げる。
優介は、切なく揺らめく瞳から視線を逸らすことしか出来なかった。
もともと手の届かない相手だった。だからこれ以上、自分のせいで彼を傷つけてはいけないのだ。
「翔先輩、俺、短い間だったけど·····翔先輩の特別な存在になれて幸せでした」
眩しそうに目を細めて微笑む翔が切なくて、優介は瞬きを繰り返した。
自分が泣くなんてお門違いだ。
彼は良く分かったと再度頷いた。
これからはペアとして、彼に尽くそう。
彼に憧れ、尊敬していることに変わりはなかった。
「優介、最後に一度だけ·····俺に時間をくれないか?今日だけでいい」
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