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しおりを挟む「気に入らないことがあるなら、いくらでも改善する。だから、やり直そう」
木陰の下に立ち止まった翔は、口を開くなりそう言った。
優介は、無意識に半開きになった口を閉じる。
あれだけ酷い態度をとったのに、翔はまだ自分と付き合っていたいという。
「好きじゃなくなりました」
突き放すために、嘘を付いた。
本当は、初めの頃よりずっと翔のことが好きになっていた。
けれど、想い人が二人もいるなんておかしい。恋人がいるのに、司のことも好きになってしまった。
自分は最低な奴で、翔と付き合う資格なんてない。
「·····好きじゃ、なくなった?」
翔が、優介の言葉を反復する。
ホームルームの予鈴が、沈黙を壊す。優介は翔の横をすり抜けようとした。
行先は、長い腕にさえぎられた。
「これからはただのペア関係になるわけだ」
「は、はい·····」
受け入れてくれた。優介は多少の寂しさを感じながらも、安堵のため息をついた。
「それなら、もう甘やかす必要も無いね」
「?」
「ペアとして俺の命令に従ってもらうよ。耐えられないなら、いつでもペアを解除しよう」
ペア関係は、お互いが同意すれば解除することが可能だ。
しかし、ペアを途中解除した生徒は規則として百万円の罰金を支払う義務が発生する。
優介の家は決して裕福とは言えない。規則違反ごときで五百万円など払えるわけが無かった。
つまりペアの解除など、優介には鼻から不可能だ。
さっさと歩き去る翔の背中が冷たい。
嫌われてしまった。
(自業自得だ)
解除しようと言われないだけマシな方だ。せめて、ペアとしての責務は全うしよう。
どんなに辛いことでも構わない。
(だって·····)
優介は、翔が去っていった道を眺め、唇を引き結んだ。
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