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しおりを挟む司の存在だ。
彼は、自分を危険な目から守ってくれた。
司だって、きっと、根っからの悪者では無い。話せば理解してくれるだろうし、ペアになった以上良い関係を築きたい。
(そのためには、もう、あんな事はしちゃだめだ)
優介は、ふと司の傷の具合が心配になった。
優介のせいで司が負った傷は、決して浅いものではない。
今日も司からの連絡は無かった。
電話も繋がらなければ、メッセージの返信もない。
優介は放課後、手当てに必要な道具をもって3学年の寮棟に向かった。
そして3年の寮についてすぐ、優介は自分の判断を後悔することとなる。
廊下の突き当たりを曲がると、目の前に人影が飛び出してきた。
すんでのところでぶつかるのを防ぐ。ガラの悪い上級生三人が、物珍しそうな顔で優介を見下ろした。
「ごめんなさい」
優介は、そそくさと彼らの横を通り過ぎようとする。
「おいおい、ちょっと待てよ」
行先は、太い腕にさえぎられた。
タバコを片手に廊下の端へたむろっていた集団のうちの1人だった。
「ぶつかっといて、何だ?その態度は」
「·····え?ぶつかっては·····」
「どう責任とってくれんの?」
優介は三人に囲まれ、逃げ場を失ってしまった。
鞄を握りしめ、後ずさる。
すかさず伸びてきた手が、優介の腕を掴んだ。
「逃げちゃだめだよ」
「とりあえず、部屋連れてこうぜ」
優介は彼らに腕を引かれ、廊下を引きずられる。
「い、嫌だ!」
喚くのと同時に、足が地面から離れた。
後ろから首根っこを掴まれ、息が出来なくなる。
脇腹を固定される。目線が普段より数十センチ高くなった。
「こいつ、もらってくわ」
「·····えっ?」
すぐ横から、聞き覚えのある声が聞こえた。
「つ、司?!」
優介は、司の肩に担がれていた。
先程まで見上げていた三人の生徒が、今は小さく見える。
彼らに見送られながら、優介は抗うすべなく司に連れ去られた。
(また、助けられた·····?)
それにしては、ハイエナの巣からライオンに拾われた草食動物のような気分だ。
「何しに来た?」
司は自室へ入ると、優介を乱暴に降ろした。
薄暗い部屋が、妙に物寂しい。
優介は、司を確認しながら部屋の電気をつけた。
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