236 / 342
《232》3人の夫
しおりを挟むボタンが解かれ、シャツを乱されてゆく。
熱い手がノワを放縦にまさぐる。声を殺していると、ため息のような笑い声が聞こえた。
「肌が吸い付くようだ」
「·····っ」
ノワは全身が熱くなるようだった。
身体中はしっとりと汗ばんでいた。
「ノワ」
オレンジの明かりが、フィアンの横顔に影を作る。
「お前が欲しい」
普段凛然としている声は、間近で囁かれると、驚くほど甘い。
何度も囁かれた告白だ。
返答に困っていると、シャツを捲り揚げられ、彼の前で裸の上半身が晒された。
「·····はぅ·····っ」
慌てて口をつぐむ。
鎖骨に吸い付いた唇が、啄むような口付けをしながら、少しずつ下へずれてゆく。
そっと彼を見下ろす。薄明かりに照らされた舌が、見せびらかすようにして、胸の突起の前に差し出された。
「あ·······」
触れられていないのに、そこは期待のせいでピンと存在を主張している。
それを見下ろしたフィアンが、続いてノワの顔をあおぎみた。
「お前の身体は、今すぐにでも俺を望んでいるようだが」
まるで、神が丹精込めた芸術品のような顔が、悪戯に微笑む。
皇帝であるフィアン、ユージーン公爵、そして、イアード大公。契約上の3人の夫だ。
その中でもフィアンは積極的だった。
ノワが目を覚ましてすぐ、自ら結婚を申し出たのだ。
ユージーンからの贈物も後を絶たない。二人がノワを取り合い火花を散らしているという噂は、帝国中の噂だった。
実際は、噂のようにロマンチックなものは何も無い。
自分が"聖女"だから。ただそれだけの理由で、彼らはこの身体を欲しがる。
それはとても虚しく、2人にとっても申し訳ない事だった。
「見ないでください·····」
想いとは裏腹に、身体は熱く火照る。
突如、扉が叩かれた。
「陛下」
扉の向こうから、聞き馴染みのある声がした。
最悪のタイミングだ。
ノワは縋るような視線でフィアンを見上げる。彼は美しい流し目を宙で遊ばせた。
「丁度いい所に来た。入れ」
「!?」
引き留めようとした頃には遅かった。
扉が開き、涼しい髪色の若者が姿を現す。数秒の沈黙の後、相手が息を着く気配がした。
「今宵は陛下の元に来ていたんだね」
蜜を含んだような声が、意味深な言葉を紡ぐ。
「昨日は、俺の腕の中であんなに乱れていたというのに·····」
新たな重みが加わり、ベットが歪む。
背後から腰を引き寄せられ、背は硬い温もりに支えられた。
「そうだろう?俺の聖徒様」
66
お気に入りに追加
5,000
あなたにおすすめの小説
悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
哀しい目に遭った皆と一緒にしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜
咲
BL
公爵家の長女、アイリス
国で一番と言われる第一王子の妻で、周りからは“悪女”と呼ばれている
それが「私」……いや、
それが今の「僕」
僕は10年前の事故で行方不明になった姉の代わりに、愛する人の元へ嫁ぐ
前世にプレイしていた乙女ゲームの世界のバグになった僕は、僕の2回目の人生を狂わせた実父である公爵へと復讐を決意する
復讐を遂げるまではなんとか男である事を隠して生き延び、そして、僕の死刑の時には公爵を道連れにする
そう思った矢先に、夫の弟である第二王子に正体がバレてしまい……⁉︎
切なく甘い新感覚転生BL!
下記の内容を含みます
・差別表現
・嘔吐
・座薬
・R-18❇︎
130話少し前のエリーサイド小説も投稿しています。(百合)
《イラスト》黒咲留時(@kurosaki_writer)
※流血表現、死ネタを含みます
※誤字脱字は教えて頂けると嬉しいです
※感想なども頂けると跳んで喜びます!
※恋愛描写は少なめですが、終盤に詰め込む予定です
※若干の百合要素を含みます
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました
白兪
BL
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム「君とユニバース」に転生してしまったアース。
攻略対象者ってことはイケメンだし将来も安泰じゃん!と喜ぶが、アースは人気最下位キャラ。あんまりパッとするところがないアースだが、気がついたら王太子の婚約者になっていた…。
なんとか友達に戻ろうとする主人公と離そうとしない激甘王太子の攻防はいかに!?
ゆっくり書き進めていこうと思います。拙い文章ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる