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《154》ストーカー
しおりを挟む彼は、ノワが臨時監督を務めている間、大抵半径10メートル以内に待機している。
もちろん偶然とは言い難い。何らかのイチャモンをつけようとしていることは目に見えていた。
だからあえて無視していたのだ。
前回の件から大人しくなったと思っていたのに残念だ。
「これは怠慢ですか?」
(とても面倒くさい·····)
フランシスの剣の腕前は中々のものだ。
注意すべきところがあるとするなら、練習中の態度くらいだろう。
「とりあえず、筋トレでもしたら?」
相手が舐め腐った態度をとるのだから、こっちだって真剣に指導してやる義理はない。
適当にあしらって、関わらないようにしよう。
「俺の体が貧弱だって言いたいんですか?」
「·····は?そんなこと、一言も·····」
「俺は毎日欠かさず筋力トレーニングをしているんです!歳は下ですが、身体は立派な男です。それでも、まだ俺の身体に不満があるんですか?」
何故かご立腹で、言い回しは妙に嫌だ。ノワはブンブンと首を振った。
「不満とか不満じゃないとかじゃなくて·····」
「ふん。非力な先輩のことなんて、俺が本気を出せば容易く組み敷けるんですから」
周りの一年生達が遠巻きにこちらを眺めている。
彼の嫌がらせに構っている暇はない。
ノワは、じゃあ、と踵を返した。
「ちょ·····っ指導はどうしたんですか?!」
簡単には放してくれないらしい。
「他の生徒と同じように、俺にも抱き·····いえ、後ろから手を回す方法で指導するのが公平だと思いますが?」
「態度を改めなさい。あんまり酷いと、ペナルティーを·····」
「·····この俺に、ペナルティーを課すというのですか?」
フランシスが問う。
眼力が並じゃないのだ。視線は一時も話されず、一言ずつこちらへ迫ってきてるようにも感じられる。
「具体的にはどのような?」
質問の意図が全く分からない。ノワはもはや会話をすることさえ面倒になってきた。
「ええ·····鞭で打つとか?」
「·····まあ、上級生命令とあらば、仕方ありませんね」
「はい?」
「屋根の下に行きましょう」
何故こんなにも乗り気なんだろう。
後で、不当な体罰を与えられたとか訴える目論見だろうか。
「やっぱ、しない」
「は?!言ってることが·····──」
「もうやめろよフランシス」
「俺たちのノワ先輩を困らせるな」
「ストーカー」
見かねた1年達が、フランシスを口々に避難する。
休憩時間がやってきて、ノワはやっと監督の役目から解放された。
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