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人は増えていく
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土曜日となった文化祭。 昨日までは学生だけの文化祭だったが、それが比にならないくらいに人で埋め尽くされていた。
「うわぁ。 これが高校の文化祭の人の波かぁ。」
「完全に1つのテーマパークのようですね。」
僕と安見さんは教室棟の3階の教室の窓から入り口近くを見ていた。 昨日までは「僕らの文化祭」。 だけど今日は「学校の文化祭」。 まさに人が人を呼んでいる。 そんな気がする。
「どうしました? お客様。」
「あ、すみません。 大丈夫です。」
僕たちがいるのは3年生が行っている「手品の部屋」に来ていた。 もちろん僕たちだけで来てはいない。 ここにはいないが、円藤さんと小舞君。 それに佐渡君も今は一緒だ。 ちなみに江ノ島さんは屋台の方で販売をしていて、濱井さんは真岩さんと一緒に回ってるし、坂内君は演劇部の手伝いをしているため、ここにはいない。
「では、ボールはどこにあるでしょうか?」
「えっと、ここに、あると、思います。」
「正解は、こちらになります。」
「え? わ、私、ちゃんとみていた、のに?」
「このボールが、花になり、そしてこうして握ると、鳩が現れます。」
「あらー、素晴らしいです。 本当に不思議に思いますね。」
「では、この山札の・・・出ている部分を出してください。」
「・・・うわ! 本当だ! まさしく俺が引いたカードじゃねぇか!」
みんながみんなそれぞれに手品を楽しんでいる。 僕らもカードを使った手品をやっていた。
「では君達2人のそれぞれ選んだカードをお当ていたしましょう。」
そういって手品師の人は2枚のカードを選ぶ。
「あなたはこちらのカード、そしてあなたにはこちらのカードを。」
僕らの前に裏返しにカードを置く。 そしてカードを見ると、僕が選んだスペードの6が置いてあった。
「安見さんは?」
「ハートの10。 当たりですよ。」
「僕もだ。」
「お二人は分かりやすかっただけですよ。」
そう言われると、なんというか他人を騙すのは僕には無理だと感じる。 選ぶ手品間違えたかな?
「しかし改めて見てみると、本当に行き交うだけで大変だって分かる位に人が多いや。」
手品の部屋から外に出ると、廊下をでて驚いた。 もう右も左もわちゃわちゃな位に人が溢れかえっていた。
「これでは戻るのも一苦労ですね。」
「まだ、時間はあるから、大丈夫だけど、私達は、そろそろ行かないと、いけないかな?」
「そうだな。 これだけ人がいるんだ。 戻るのに苦労しそうだ。 俺達は行くから、館と須今はまだ楽しんでてくれよ。」
小舞君がそう言うと人混みの中に紛れ込んでいってしまった。 円藤さん、大丈夫かな?
僕たちはあれからフラリフラリと校内を歩いていた。 もちろん近くに安見さんがいるが、離れないように少し密着気味になっている。
「・・・安見さん、近くにいる?」
「・・・ええ、いますよ。」
密着はしている・・・そう、僕たちは今密着状態にある。 それが何を意味するのか。 服の袖を掴むとか、手を繋ぐとかそんなちゃちなものでは当然ない。 今僕の左腕に安見さんが腕と体を密着させている。 そしてなにより体を密着させているということは、安見さんの顔が近くに来るということ、さらに言えば柔らかいものが腕に感触として伝わってくるのだ。 安見さんは気がついているのかいないのか。 とにかく平静を保つので精一杯の自分がいる。 人が密集していなければこんなことはない。 だからこそ意識をしてはいけないと感じている。
「・・・クラスの誰かならともかく、知り合いに見られるのはちょっと・・・」
「あ、あれお姉じゃない?」
そんな願いも虚しく、安見さんの妹である味柑ちゃんに見つかってしまう。 もう少しまともな人に見つかりたかった。
「やぁ、味柑ちゃん。 お姉さん達と一緒に来たの?」
「あ、お兄さん。 こんにちは。 そうですよ。 ちょっと今は離れちゃったけれど。」
「味柑、離れてはいけないと言ったでしょ? あ、館君、こんにちは。」
味柑ちゃんとやりとりをしていると後ろから音理亜さんが人混みの中から現れる。 というかよくこんな中で普通にしていられますね。
「どうも音理亜さん。」
「姉さんも味柑も来てくれたのですね。 ここだとあれなので、移動しましょう。 窮屈すぎて、ここでは会話出来ない・・・ふぁ。」
「っとと。 大丈夫?」
「え、ええ。 なんとか。」
僕は安見さんにそう声を掛けるのだが、僕は安見さんが近づいてきたことに対してまた心拍数が上がる。 だがそこも平静を保つように、しっかりと意識している。
「そうだね。 とりあえず移動を・・・え、ええっとどうしました?」
僕が移動を呼び掛けたときに音理亜さんも味柑ちゃんもただただ見ているだけだった。
「お姉、やっぱりお兄さんの前だとかなり甘えてない?」
「それだけ心を許しているということでしょう。 私達のことなんか、ほとんど見えてないのと一緒ですよ。」
そんな姉と妹のひそひそ話を聞こえていたのかいないのか、安見さんは慌てて僕から離れる。
「ご、ごめんなさい館君! つい身を任せてしまって!」
「い、いや、これだけの人がいるから、そうなってもしょうがないって。 ここからだとどこが空いてたっけ?」
「あ、あそことかどうですか? 閲覧店、あそこならいいと思いますよ?」
「僕が言ったからあれかもしれないけれど、流石に失礼になっちゃうよね。」
そんなことを言いつつも他に行き先が考え付かなかったので、閲覧店の方に向かうことにした僕たちだった。
「そういえば母さんと父さんは一緒では無かったのですね?」
「母さん達ならお兄さんの両親と回るって言って、どっか行っちゃった。」
「あ、やっぱり母さん、来てるんだ。 父さんも一緒なのは意外だったかな?」
「皆さん楽しそうにしていましたよ。 私達のことなんか忘れる位に。」
「そこは忘れられちゃダメだと思う・・・」
「うわぁ。 これが高校の文化祭の人の波かぁ。」
「完全に1つのテーマパークのようですね。」
僕と安見さんは教室棟の3階の教室の窓から入り口近くを見ていた。 昨日までは「僕らの文化祭」。 だけど今日は「学校の文化祭」。 まさに人が人を呼んでいる。 そんな気がする。
「どうしました? お客様。」
「あ、すみません。 大丈夫です。」
僕たちがいるのは3年生が行っている「手品の部屋」に来ていた。 もちろん僕たちだけで来てはいない。 ここにはいないが、円藤さんと小舞君。 それに佐渡君も今は一緒だ。 ちなみに江ノ島さんは屋台の方で販売をしていて、濱井さんは真岩さんと一緒に回ってるし、坂内君は演劇部の手伝いをしているため、ここにはいない。
「では、ボールはどこにあるでしょうか?」
「えっと、ここに、あると、思います。」
「正解は、こちらになります。」
「え? わ、私、ちゃんとみていた、のに?」
「このボールが、花になり、そしてこうして握ると、鳩が現れます。」
「あらー、素晴らしいです。 本当に不思議に思いますね。」
「では、この山札の・・・出ている部分を出してください。」
「・・・うわ! 本当だ! まさしく俺が引いたカードじゃねぇか!」
みんながみんなそれぞれに手品を楽しんでいる。 僕らもカードを使った手品をやっていた。
「では君達2人のそれぞれ選んだカードをお当ていたしましょう。」
そういって手品師の人は2枚のカードを選ぶ。
「あなたはこちらのカード、そしてあなたにはこちらのカードを。」
僕らの前に裏返しにカードを置く。 そしてカードを見ると、僕が選んだスペードの6が置いてあった。
「安見さんは?」
「ハートの10。 当たりですよ。」
「僕もだ。」
「お二人は分かりやすかっただけですよ。」
そう言われると、なんというか他人を騙すのは僕には無理だと感じる。 選ぶ手品間違えたかな?
「しかし改めて見てみると、本当に行き交うだけで大変だって分かる位に人が多いや。」
手品の部屋から外に出ると、廊下をでて驚いた。 もう右も左もわちゃわちゃな位に人が溢れかえっていた。
「これでは戻るのも一苦労ですね。」
「まだ、時間はあるから、大丈夫だけど、私達は、そろそろ行かないと、いけないかな?」
「そうだな。 これだけ人がいるんだ。 戻るのに苦労しそうだ。 俺達は行くから、館と須今はまだ楽しんでてくれよ。」
小舞君がそう言うと人混みの中に紛れ込んでいってしまった。 円藤さん、大丈夫かな?
僕たちはあれからフラリフラリと校内を歩いていた。 もちろん近くに安見さんがいるが、離れないように少し密着気味になっている。
「・・・安見さん、近くにいる?」
「・・・ええ、いますよ。」
密着はしている・・・そう、僕たちは今密着状態にある。 それが何を意味するのか。 服の袖を掴むとか、手を繋ぐとかそんなちゃちなものでは当然ない。 今僕の左腕に安見さんが腕と体を密着させている。 そしてなにより体を密着させているということは、安見さんの顔が近くに来るということ、さらに言えば柔らかいものが腕に感触として伝わってくるのだ。 安見さんは気がついているのかいないのか。 とにかく平静を保つので精一杯の自分がいる。 人が密集していなければこんなことはない。 だからこそ意識をしてはいけないと感じている。
「・・・クラスの誰かならともかく、知り合いに見られるのはちょっと・・・」
「あ、あれお姉じゃない?」
そんな願いも虚しく、安見さんの妹である味柑ちゃんに見つかってしまう。 もう少しまともな人に見つかりたかった。
「やぁ、味柑ちゃん。 お姉さん達と一緒に来たの?」
「あ、お兄さん。 こんにちは。 そうですよ。 ちょっと今は離れちゃったけれど。」
「味柑、離れてはいけないと言ったでしょ? あ、館君、こんにちは。」
味柑ちゃんとやりとりをしていると後ろから音理亜さんが人混みの中から現れる。 というかよくこんな中で普通にしていられますね。
「どうも音理亜さん。」
「姉さんも味柑も来てくれたのですね。 ここだとあれなので、移動しましょう。 窮屈すぎて、ここでは会話出来ない・・・ふぁ。」
「っとと。 大丈夫?」
「え、ええ。 なんとか。」
僕は安見さんにそう声を掛けるのだが、僕は安見さんが近づいてきたことに対してまた心拍数が上がる。 だがそこも平静を保つように、しっかりと意識している。
「そうだね。 とりあえず移動を・・・え、ええっとどうしました?」
僕が移動を呼び掛けたときに音理亜さんも味柑ちゃんもただただ見ているだけだった。
「お姉、やっぱりお兄さんの前だとかなり甘えてない?」
「それだけ心を許しているということでしょう。 私達のことなんか、ほとんど見えてないのと一緒ですよ。」
そんな姉と妹のひそひそ話を聞こえていたのかいないのか、安見さんは慌てて僕から離れる。
「ご、ごめんなさい館君! つい身を任せてしまって!」
「い、いや、これだけの人がいるから、そうなってもしょうがないって。 ここからだとどこが空いてたっけ?」
「あ、あそことかどうですか? 閲覧店、あそこならいいと思いますよ?」
「僕が言ったからあれかもしれないけれど、流石に失礼になっちゃうよね。」
そんなことを言いつつも他に行き先が考え付かなかったので、閲覧店の方に向かうことにした僕たちだった。
「そういえば母さんと父さんは一緒では無かったのですね?」
「母さん達ならお兄さんの両親と回るって言って、どっか行っちゃった。」
「あ、やっぱり母さん、来てるんだ。 父さんも一緒なのは意外だったかな?」
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