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林間学校 帰りのバス
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「よぅ、朝風呂は気持ちかったか?」
朝風呂から帰ってきて、朝御飯のために食堂に向かうとみんなそれぞれで朝御飯を食べていた。 ご飯の匂いにやられ、すぐにでもご飯を取りに行きたいところだが、小舞君が話をしようとしていたので、耳を傾ける。
「それはもう。 誰もいなかったんだからゆっくり出来たよ。」
「ほっほう・・・」
そう答えると小舞君がなにかを察したかのように僕に視線を向けてくる
「なにさ?」
「別にぃ? 本当に誰もいなかったのかなぁと思ってな。」
「僕が嘘を付いていると?」
「思い当たる節があるんか?」
そう言うと小舞君がニヤニヤし始める。 なんなの? その表情は?
「小舞君。 そこまでにしてあげなよ。 困ってるじゃないか。」
「えー? いいじゃないか。 こんなに面白いことは無いって。」
その言葉にまさかとは思った。 いやそんなことはないと思いたいけれど聞かざるを得なかった。
「ねぇ。 僕がお風呂から出てきたのって何時?」
「僕らが食堂に向かうときだから、大体6時半位だろうか?」
「・・・意外と長い時間入ってたんだな、僕。」
「そうだな。 顔真っ赤だったぜ?」
「なんで声をかけてくれなかったのさ?」
「君もすぐにどこかに行ってしまったからね。 声をかける暇もなくそのまま食堂に入ったのさ。」
何故だろうか。 それだけなら小舞君がニヤつくことなんて無いはずだ。 本当にそれだけだろうか? だけれどこれ以上掘り下げてもしょうがないので、話を切ろうと思う。
「そっか。 それじゃあ僕もご飯を取りに行こうかな。」
「あぁ、行ってこい行ってこい。 無くなるとは思わないが、とりあえず行ってこい。」
「僕が付き添おう。 場所は場所は少しややこしいからね。」
そう言って坂内君が着いてくる。 食堂から出て、誰も見えなくなった廊下を歩いていく内に、坂内君に質問をしてみる。
「それで? 実際のところはどうなの?」
「君が出てくる前に須今さんが出てきたのを目撃してね。 なにかあったのではないかと推測していたのさ。 君は鈍感そうだけど、天然でもあるからね。」
「それなにか矛盾してない?」
そうは言いながらも、無自覚に安見さんの事を意識しているのはあった。 知らず知らずの内に、というやつなのかもしれない。
朝食を食べ終えて、そこからは自由行動ということで、いつものメンバーで集まって、地図を見返しながら昨日とは逆方向に歩いてみようと提案して、みんなそれに賛同してくれた。 戻ってこれなくなる可能性があったので、さすがに遠くには行かなかったけれど。
そしてお昼時になり、いよいよ林間学校も終わりを迎える。 この2日間はとても経験出来ない体験をさせてくれた。 僕は手を合わせて、一礼をした。 これは僕に大自然の素晴らしさを教えてくれた感謝の気持ちである。
みんなが戻ってきて、帰りのバスに乗り込んで、席をどうしようかなと考えていたとき
「館さん。 ここの席、空いてますよ。」
先に窓際に座っていた円藤さんが声をかけてきた。 座れなくなる可能性を考えると、席を譲ってくれるのはありがたい事だ。
「それじゃあ、隣失礼するよ。」
「はい。」
「それじゃあ、出発するぞ。 次の休憩まで席は立てないからな。」
先生に言われた後にバスが発車する。 遠くに離れていく旧校舎を窓越しに見送った。 来年もまた来れるように頑張らないとな。 バイバイ、林間学校。
「館さんは、楽しめましたか? 今回の、林間学校。」
「凄く楽しかったよ。 休日は僕はあんまり外に出ないから、とても新鮮だった。 川や滝に入ったときとかは気持ちよかったよ。 出た後は流石に不快に感じたけど。」
「そ、それは、どうなので、しょうか?」
「まあ感じ方は人それぞれだし、分かってもらえなくても、仕方ないのかな?」
そう僕は円藤さんに伝える。 でも実際に楽しかったのは事実だし、なによりもこの林間学校でだって学べることはあった。 それだけでも僕にとっては有意義なものだった。
「そう、とても楽し・・・かった・・・」
「館さん?」
あれ? なんだろう? 凄くまぶたが重たくなってきた。 もしかして眠くなっちゃったのかな? はしゃぎすぎて反動が来たのかも・・・
「円藤さん・・・僕、ちょっと寝ちゃうけど・・・学校に着いたら・・・教えてね・・・」
そう言い残して僕は、眠りについた。
僕は夢を見ている。 なんで分かるのかって、さっきはバスの中にいたはずなのに、自分の住んでいる町に立っていたからだ。 よく夢の内容がどうのこうのと言われるけれど、この光景は多分日常風景だろう。
「光輝君。」
名前を呼ばれたので振り返ると、そこには僕の通う高校の制服を着たセミロングの女子がいた。 顔は見えない。 正確には口元以外は影が出来ているかのように暗くなっている。
「光輝君。 私はあなたのことが好き。 だから、ずっと側にいさせて?」
まさかの告白。 僕は戸惑う。 これは僕自身の夢。 自分の願望でも写し出されているのだろうか?
「光輝さん。」
別の方向から名前を呼ばれてそちらを向くと、今度は長い髪をおろした、こちらも制服を着た女子がいた。 こちらも顔は見えない。 見えないが、2人の声はどこかで聞いたことのある声だった。
「光輝さん。 私はあなたに見てもらえたあの日から、あなたのことが忘れられません。 私と付き合って下さい。」
こちらからも告白が飛んでくる。 これが夢だと分かっているのにどうすれはいいのか分からない自分がいる。 僕は・・・僕は・・・ そのまま視界が暗くなっていく、自分の未来が見えないように。 この瞬間を見ないように。
「僕は・・・どうすれば・・・」
「館さん?」
横から声がかかったので、目を開ける。 バスは停まっていた。
「館さん。 凄く・・・うなされていましたよ。」
「ご、ごめん。 今はどこ?」
「もう学校に、着きました。」
どうやら目的地まで戻ってきたようだ。 僕は頭がボンヤリしながらも席を立ち、出口に向かう。 夕方なのかすっかり空が赤く染まっている。 生徒が散り散りになっているので、自由解散の流れのようだ。
「じゃあ、僕は帰るよ。 また明日。」
林間学校を行ったのは週の頭だったので、学校は普通にある。 だからこういう言い回しになった。
「また、明日です。 館さん。」
円藤さんと手を振りあい、自分の帰路に入ろうとしたとき、視界に安見さんが見えたので、安見さんにも、手を振っておく。 向こうも返してきたので一安心して、フラフラな体で自分の家に、帰るのだった。
朝風呂から帰ってきて、朝御飯のために食堂に向かうとみんなそれぞれで朝御飯を食べていた。 ご飯の匂いにやられ、すぐにでもご飯を取りに行きたいところだが、小舞君が話をしようとしていたので、耳を傾ける。
「それはもう。 誰もいなかったんだからゆっくり出来たよ。」
「ほっほう・・・」
そう答えると小舞君がなにかを察したかのように僕に視線を向けてくる
「なにさ?」
「別にぃ? 本当に誰もいなかったのかなぁと思ってな。」
「僕が嘘を付いていると?」
「思い当たる節があるんか?」
そう言うと小舞君がニヤニヤし始める。 なんなの? その表情は?
「小舞君。 そこまでにしてあげなよ。 困ってるじゃないか。」
「えー? いいじゃないか。 こんなに面白いことは無いって。」
その言葉にまさかとは思った。 いやそんなことはないと思いたいけれど聞かざるを得なかった。
「ねぇ。 僕がお風呂から出てきたのって何時?」
「僕らが食堂に向かうときだから、大体6時半位だろうか?」
「・・・意外と長い時間入ってたんだな、僕。」
「そうだな。 顔真っ赤だったぜ?」
「なんで声をかけてくれなかったのさ?」
「君もすぐにどこかに行ってしまったからね。 声をかける暇もなくそのまま食堂に入ったのさ。」
何故だろうか。 それだけなら小舞君がニヤつくことなんて無いはずだ。 本当にそれだけだろうか? だけれどこれ以上掘り下げてもしょうがないので、話を切ろうと思う。
「そっか。 それじゃあ僕もご飯を取りに行こうかな。」
「あぁ、行ってこい行ってこい。 無くなるとは思わないが、とりあえず行ってこい。」
「僕が付き添おう。 場所は場所は少しややこしいからね。」
そう言って坂内君が着いてくる。 食堂から出て、誰も見えなくなった廊下を歩いていく内に、坂内君に質問をしてみる。
「それで? 実際のところはどうなの?」
「君が出てくる前に須今さんが出てきたのを目撃してね。 なにかあったのではないかと推測していたのさ。 君は鈍感そうだけど、天然でもあるからね。」
「それなにか矛盾してない?」
そうは言いながらも、無自覚に安見さんの事を意識しているのはあった。 知らず知らずの内に、というやつなのかもしれない。
朝食を食べ終えて、そこからは自由行動ということで、いつものメンバーで集まって、地図を見返しながら昨日とは逆方向に歩いてみようと提案して、みんなそれに賛同してくれた。 戻ってこれなくなる可能性があったので、さすがに遠くには行かなかったけれど。
そしてお昼時になり、いよいよ林間学校も終わりを迎える。 この2日間はとても経験出来ない体験をさせてくれた。 僕は手を合わせて、一礼をした。 これは僕に大自然の素晴らしさを教えてくれた感謝の気持ちである。
みんなが戻ってきて、帰りのバスに乗り込んで、席をどうしようかなと考えていたとき
「館さん。 ここの席、空いてますよ。」
先に窓際に座っていた円藤さんが声をかけてきた。 座れなくなる可能性を考えると、席を譲ってくれるのはありがたい事だ。
「それじゃあ、隣失礼するよ。」
「はい。」
「それじゃあ、出発するぞ。 次の休憩まで席は立てないからな。」
先生に言われた後にバスが発車する。 遠くに離れていく旧校舎を窓越しに見送った。 来年もまた来れるように頑張らないとな。 バイバイ、林間学校。
「館さんは、楽しめましたか? 今回の、林間学校。」
「凄く楽しかったよ。 休日は僕はあんまり外に出ないから、とても新鮮だった。 川や滝に入ったときとかは気持ちよかったよ。 出た後は流石に不快に感じたけど。」
「そ、それは、どうなので、しょうか?」
「まあ感じ方は人それぞれだし、分かってもらえなくても、仕方ないのかな?」
そう僕は円藤さんに伝える。 でも実際に楽しかったのは事実だし、なによりもこの林間学校でだって学べることはあった。 それだけでも僕にとっては有意義なものだった。
「そう、とても楽し・・・かった・・・」
「館さん?」
あれ? なんだろう? 凄くまぶたが重たくなってきた。 もしかして眠くなっちゃったのかな? はしゃぎすぎて反動が来たのかも・・・
「円藤さん・・・僕、ちょっと寝ちゃうけど・・・学校に着いたら・・・教えてね・・・」
そう言い残して僕は、眠りについた。
僕は夢を見ている。 なんで分かるのかって、さっきはバスの中にいたはずなのに、自分の住んでいる町に立っていたからだ。 よく夢の内容がどうのこうのと言われるけれど、この光景は多分日常風景だろう。
「光輝君。」
名前を呼ばれたので振り返ると、そこには僕の通う高校の制服を着たセミロングの女子がいた。 顔は見えない。 正確には口元以外は影が出来ているかのように暗くなっている。
「光輝君。 私はあなたのことが好き。 だから、ずっと側にいさせて?」
まさかの告白。 僕は戸惑う。 これは僕自身の夢。 自分の願望でも写し出されているのだろうか?
「光輝さん。」
別の方向から名前を呼ばれてそちらを向くと、今度は長い髪をおろした、こちらも制服を着た女子がいた。 こちらも顔は見えない。 見えないが、2人の声はどこかで聞いたことのある声だった。
「光輝さん。 私はあなたに見てもらえたあの日から、あなたのことが忘れられません。 私と付き合って下さい。」
こちらからも告白が飛んでくる。 これが夢だと分かっているのにどうすれはいいのか分からない自分がいる。 僕は・・・僕は・・・ そのまま視界が暗くなっていく、自分の未来が見えないように。 この瞬間を見ないように。
「僕は・・・どうすれば・・・」
「館さん?」
横から声がかかったので、目を開ける。 バスは停まっていた。
「館さん。 凄く・・・うなされていましたよ。」
「ご、ごめん。 今はどこ?」
「もう学校に、着きました。」
どうやら目的地まで戻ってきたようだ。 僕は頭がボンヤリしながらも席を立ち、出口に向かう。 夕方なのかすっかり空が赤く染まっている。 生徒が散り散りになっているので、自由解散の流れのようだ。
「じゃあ、僕は帰るよ。 また明日。」
林間学校を行ったのは週の頭だったので、学校は普通にある。 だからこういう言い回しになった。
「また、明日です。 館さん。」
円藤さんと手を振りあい、自分の帰路に入ろうとしたとき、視界に安見さんが見えたので、安見さんにも、手を振っておく。 向こうも返してきたので一安心して、フラフラな体で自分の家に、帰るのだった。
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