ホントの気持ち

かんこ

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59、退院当日

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空side

今から陽ちゃんのお家に行く。
病室からもほとんど出ていなかったから外の世界が怖い。
陽ちゃんは父さんは逮捕されたって言っていたけど、
ホントにいないのかな…
陽ちゃんの家に行くまでに会ったらどうしよう…
もし、会ったら帰らなくちゃいけないのかな…


「…夕紀、夕紀、」

「えっ?何?」

「さっきから何度も呼んでたんだぞ、」

「あ、ごめんなさい。」

頭の中が父さんのことでいっぱいで城崎先生の声に気付けなかった。

「で、どうした?外出るの怖いか?」

「うーうん、大丈夫。大丈夫…大丈夫…」

自分の不安を隠すため自分に言い聞かせるように
『大丈夫』と言うしかできなかった。

「夕紀、おいで。」

ぎゅーっ
城崎先生は何も言わず、抱きしめてくれた。




「懐かしいな、前にもこんな事あったな。」

前に…あ、体育の授業の時…かな、
その時もこうやって僕が落ち着くまで抱きしめてくれたっけ。


「先生、ありがとう、もう大丈夫。」

「無理しなくていいんだぞ。」

「大丈夫、今は1人じゃないから。」

「そっか、夕紀がそんなこと言ってくれる日が来るなんてな~♪嬉しいよ。
でも、無理はするなよ。なんかあったら言えよ。」

「うん、」

城崎先生は笑顔で僕の頭をわしゃわしゃした。



「そろそろ行こうか、空、忘れ物はない?」

陽ちゃんが退院の準備を終え、言ってきた。

「うん、忘れ物ない。」

って言っても何も持ってきていないから持っていくものは服くらいだけど、


「下にタクシー呼んであるから、それで帰るよ。」

「うん、」


病室を出て少し歩くと色々な人がいた。
お医者さんや患者さん、たくさんの人をがいて、
もしかするとこの中に父さんがいるのかもしれないと思うと顔を見ることができない。

「空、そんなに下向いてたら転ぶぞ。」

「……」

「ほら、よいしょ、」

「えっ…」

陽ちゃんが抱っこしてくれた。

「怖いならこうしてな、」

陽ちゃんの首元に顔を埋め目を強くつぶった。



心臓がうるさい、不安に押しつぶされそう…息が苦しい…

やっと退院できるのに…

「空、ちょっと休憩しようか。」

1階にある個室に入った。
陽ちゃんに抱っこされたままベッドに座った。



優しく背中を撫でてもらい、少しずつ呼吸が楽になってきた。

「僕、大丈夫…大丈夫だよ…」

退院を中止しされたくなくて必死に陽ちゃんに平気な振りをした。

「退院は今日するよ。
だからちょっと休憩してから出ような。」

今日退院できる。嬉しいはずなのに緊張していた。

「空くん、温かいもの飲む?」

神山先生がミルクティーを買ってきてくれた。

「神山先生ありがとうございます。
空、熱いからフーフーしてから飲めよ。」

温かい、体の力がすーっと抜け気持ちも落ち着いた。


しばらく休憩してから部屋を出た。
知らない人がどうしても怖くて陽ちゃんに抱っこしてもらいタクシーに乗った。

陽ちゃんの家は病院から近くすぐに着いた。

「着いたよ。」

「もう歩ける…」

マンションの前に着き下ろしてもらった。
さっきよりも人少ないし、歩ける。

「じゃあ行こうか、」

陽ちゃんと手を繋ぎマンションの中に入っていった。

陽ちゃんが鍵を開けるのをじっと見つめていた。
これからここに住むんだ…
どんなところかな…
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