ホントの気持ち

かんこ

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58、入院生活最後の昼食

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名取side

今日、空が退院をする。
精神的にはまだ入院をした方がいい面もあるが、
入院していても空の退院後の不安が消えるわけではない。

だから、今回は空の意思を優先したかった。
空が前に進もうよしているのであればそれを支えたい。
そう思い退院を決断した。

はぁ、…ここまでそれらしいことを言ったが、
正直不安だ。
空にとって家は恐怖の象徴と言ってもいい存在、
もしかすると今まで以上の苦痛を味あわせてしまうかもしれない。


って言っても、俺より空の方が不安だよな、
よし!退院を決めたのは俺なんだ!しっかりしろ!俺!!


気を引き締めて、退院の準備をし空の病室に向かった。

ガラッ

「おはよう」

「「おはようございます」」
今日は空の退院の日だからといって城崎先生と神山先生が朝から来てくれた。

「陽ちゃん!おはよう!退院何時??」

よっぽど楽しみなんだろうな、空はそわそわして落ち着かないみたいだ。

「お昼ご飯食べたら退院するよ。
でもその前に今日の体調を見させてな。」

体温や心臓の音、肺の音を聞き診察をした。
空はこの時間が苦手だ。緊張するのだろう正常よりも心拍数が増える。

「空、リラックスしような。一緒に深呼吸しようか、
吸って~、吐いて~、もう1回吸って~、吐いて~
そうそう、上手だよ。」

異常ないな。朝食はちゃんと食べられたらしいし昼食もちゃんと食べられたら退院できるな。

「陽ちゃん、退院できる?」

空が不安そうな顔で尋ねてきた。

「ああ、お昼ご飯もちゃんと食べたら退院できるよ。」

「よかった♪」

こんなに嬉しそうな顔久々だな…
ここに来てから初めてかもな…

そうこうしている内に昼食の時間になった。

今日は4人で食べる。空は嬉しそうにみんなの顔を見ている。

「空くんどうしたの?お昼ご飯楽しみ?」

「うん!お昼ご飯もだけど、みんなで食べるのが楽しみ!」

「そうだね!!みんなで食べたら美味しいもんね!!」

神山先生と空の会話を聞いているだけでこっちまで微笑んでしまっていた。

「ご飯準備できたよ~」

俺は城崎先生と一緒に昼食の準備をしていた。

「今日はオムライスだよ」

「わぁ!!美味しそう!!」
空は目をキラキラさせて喜んでいた。

「空くんはケチャップで何書くの?」

「ケチャップ?何か書くの?」

神山先生の問に空は首を傾げていた。
もしかして、オムライスにケチャップで何か書いたことないのか?

「うーん、例えばハート♡とか、
ほら!見て上手く描けたよ!!」

「すごーい!!お星様☆描きたい!!」

空は真剣な顔で星を描いた。
歪な形にはなったが初めてにしては上出来だ。

「おお!!上手いな!!じゃあ俺は~」

城崎先生もケチャップで絵を描いた。

「あ!車だ!!」

「正解!!結構自信作だな~!!
名取先生は何描きますか?」

オムライスに絵を描くなんていつぶりだろう。

「じゃあ、」

「分かった!お花!!」

「正解!もうすぐ春になるから桜を描いてみた。」

「みんなでお花見とか行きたいですね!」

「お!良いな!花見しながら食べるご飯は美味しいぞ~!」

神山先生の案に城崎先生も乗った。

「お花見してみたい!」

空も行きたそう。落ち着いたらのんびり花見も良いな。

「落ち着いたらみんなで行こっか、
じゃあオムライス食べるよ!」

「うん!!」

「「「「いただきます!!」」」」


たくさんお話して、空も完食できた。


「「「「ごちそうさまでした。」」」」

「陽ちゃん、」

空がまた不安そうに聞いてきた。

「全部食べれたし、退院できるよ。
ちょっとゆっくりしたら行こうか、」

「うん!!やった!!」

ゆったりしながらみんなでお喋りをした。
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