ホントの気持ち

32、空がいない

名取side

神山先生は仕事に向かい空と2人になった。
昼食もちゃんと食べることができ、今は落ち着いている。
だが、気になることが1点あった。
それは、空が朝から作り笑いをしていることだ。
全てが作り笑いというわけではないようだったが、無理して笑っているのは感じる。


「しんどいか？」

「うーうん!大丈夫!」
また作り笑いだ…何を隠している。
まぁ熱があるからしんどいとは思うが、そのしんどさとは別の何か……

「ご飯も食べたし、そろそろ寝るか？」

今は熱を下げることを優先しよう。

「うん、大丈夫。」

ゆっくりとベッドに横にさせ、胸をトントン叩いた。
うとうとし寝息を立てた。



自分も少し仮眠を取ろ思い仮眠室に移動した。
最近仕事が多く寝れていなかったから横になるとすぐに眠れた。






ドドドッド!!ガチャ!!
「名取先生!!空くんが!!」
看護師が勢いよく入ってきた。

「どうした。空に何があった。」

「空くんがいなくなりました。さっき病室に行ったらもういなくて、今監視カメラで捜しています。」

空がいなくなった？!
空が行きそうなとこ…どこだ…とりあえず今はまだ病院内にいることを願おう。

普段病室からはあまり出ないためもしかすると道に迷っているのかもしれない。
病院内を捜そう。

「見つかったら連絡してくれ、病院内を捜してくる。」

「はい、分かりました。私たちも捜します。」

「ありがとう。じゃあ。」


看護師と別れ空を捜すことにした。
外を見るとパラパラ雨が降り出していた。
外にいたとしても、雨が降っていたら帰ってくるか、



捜していると連絡が入った。
「はい、名取です。」

「カメラに空くんが映っていたのですが、どうやら外に出たみたいです。まだ戻ってきていないみたいなので、まだ外にいると思います。」

「分かった、外に行く。ありがとう。」

急いで外に向かった。
外はもう土砂降りだった。
どこにいる。どうして外に出たんだ。



外を捜していると、壁に寄り掛かりうずくまっている空の姿が見えた。
「空？……」

バッ 空と目が合った途端走り出した。

｢ちょっと待て！｣

腕を掴み引き止めた。
ずぶ濡れでガタガタ震えている。雨に濡れているから寒いのだろうか。
いや、この震え方は異常だ……虚ろな目をして体が強ばっている。
刺激すると余計に怖がらせてしまうと思い、静かに抱きしめ看護師に連絡しタオルを持ってきてもらった。



空の体をタオルで包み抱き上げた。

｢いや!!イヤ!!嫌!!離して!!嫌だ!!嫌だ!!｣

抱き上げた途端パニックになった。
急いで室内に連れて行き、落ち着くまで優しく抱きしめた。

｢う、う゛う゛う゛……はぁはぁはぁ……｣

胸元をギュッと掴み苦しそうな声を上げていた。
背中をさするが、涙を流し震え続けていた。