ホントの気持ち

神娘

文字の大きさ
上 下
20 / 136

20、不安

しおりを挟む
空side

目を覚ましたと同時に記憶が蘇り恐怖心に耐えきれず、ベッドを降り隅で隠れることにした。

しばらくするとまたドアが開き誰かが入ってきた。
息を止め隠れていたのに、入ってきた足音が怖くて声が漏れてしまった。
「ひっ………」

声を聞かれてしまったのかどんどんこちらへ向かってくる。
心臓の音がうるさく震えが止まらない。


気付くとその人は目の前まで来ていた。
怖くて見ることができず床をじっと見つめていた。


「空、大丈夫だよ。大丈夫、ここは安全だよ。」

声を掛けられたが内容が入ってこない。

「空、もう大丈夫だよ。」


恐怖でまた息が苦しくなってきた。
それに気付いたのかその人はまたさっきみたいに俺を抱きしめ背中をさすってくれた。
怖いはずなのに心が落ち着き、目から涙が溢れ出した。
止まらない。
どうやったら止まるか考えていると、

「大丈夫、大丈夫、泣いていいよ。」

と言われた。本当に泣いていていいのかな。
しばらく泣くと心が落ち着き、涙が止まった。


恐る恐るその人の顔を見ようと見上げると、その人は知っている人だった。
「陽ちゃん…」

「やっと顔見てくれた。」

その人は僕の叔父さん、母さんの弟で小さい頃よく遊んでくれたお兄さん。
名取 陽平なとり ようへいだから陽ちゃんって呼んでる。


「どうして…ここにいるの…」

父さんのところに俺を連れて行くのだろうか…もう嫌だ。でも、他に行く所がない。


「俺はこの病院で働いてるんだ。空の主治医になった。だから困った事があったらなんでも言ってな。」


そっか、陽ちゃんは医者なんだ。だから僕を助けたんだ。本当は死にたかったのに…

「帰りたくない。死にたい。」
ボソッと気持ちを伝えた。

そう言った途端、陽ちゃんは僕を力いっぱい抱き締めた。

「辛かったな。しんどかったな。でも、もう辛いことはないから、大丈夫だから。
これから俺と2人で暮らさないか?」


「でも、父さんは?」


「空の父さんは児童虐待及び自殺を誘発させたとして逮捕された。だからもう父さんのところに帰らなくていい。
俺の家に来ないか?」

父さんのところに帰らなくていい。その言葉に救われた気がした。


「ホントに…帰らなくていいの?
もう痛いのない?怖いのない?」


「帰らなくていいよ。大丈夫、もう痛いのも怖いのもないから。」


「僕、陽ちゃんの家行きたい。」


「おいで、」
抱き締められ、また涙が止まらなくなった。


「声出して泣いていいよ。」


「ぅううん…んあぁん…」
今までの分を全て出すように陽ちゃんの胸で大泣きした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

かし子
BL
養子として迎えられた家に弟が生まれた事により孤独になった僕。18歳を迎える誕生日の夜、絶望のまま外へ飛び出し、トラックに轢かれて死んだ...はずが、目が覚めると赤ん坊になっていた? 転生先には優しい母と優しい父。そして... おや?何やらこちらを見つめる赤目の少年が、 え!?兄様!?あれ僕の兄様ですか!? 優しい!綺麗!仲良くなりたいです!!!! ▼▼▼▼ 『アステル、おはよう。今日も可愛いな。』 ん? 仲良くなるはずが、それ以上な気が...。 ...まあ兄様が嬉しそうだからいいか! またBLとは名ばかりのほのぼの兄弟イチャラブ物語です。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

長編版 王太子に婚約破棄されましたが幼馴染からの愛に気付いたので問題ありません

天田れおぽん
恋愛
 頑張れば愛されると、いつから錯覚していた?  18歳のアリシア・ダナン侯爵令嬢は、長年婚約関係にあった王太子ペドロに婚約破棄を宣言される。  今までの努力は一体何のためだったの?  燃え尽きたようなアリシアの元に幼馴染の青年レアンが現れ、彼女の知らなかった事実と共にふたりの愛が動き出す。  私は私のまま、アナタに愛されたい ――――――。 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼   他サイトでも掲載中 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼  HOTランキング入りできました。  ありがとうございます。m(_ _)m

もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。
BL
公爵家の3男として生まれた俺は、家族からうとまれていた。 母が俺を産んだせいで命を落としたからだそうだ。 生を受けた俺を待っていたのは、精神的な虐待。 最低限の食事や世話のみで、物置のような部屋に放置されていた。 だれでもいいから、 暖かな目で、優しい声で俺に話しかけて欲しい。 ただそれだけを願って毎日を過ごした。 そして言葉が分かるようになって、遂に自分の状況を理解してしまった。 (ぼくはかあさまをころしてうまれた。 だから、みんなぼくのことがきらい。 ぼくがあいされることはないんだ) わずかに縋っていた希望が打ち砕かれ、絶望した。 そしてそんな俺を救うため、前世の俺「須藤卓也」の記憶が蘇ったんだ。 「いやいや、サフィが悪いんじゃなくね?」 公爵や兄たちが後悔した時にはもう遅い。 俺には新たな家族ができた。俺の叔父ゲイルだ。優しくてかっこいい最高のお父様! 俺は血のつながった家族を捨て、新たな家族と幸せになる! ★注意★ ご都合主義。基本的にチート溺愛です。ざまぁは軽め。 ひたすら主人公かわいいです。苦手な方はそっ閉じを! 感想などコメント頂ければ作者モチベが上がりますw

祓い師レイラの日常 〜それはちょっとヤなもんで〜

本見りん
恋愛
「ヤ。それはちょっと困りますね……。お断りします」  呪いが人々の身近にあるこの世界。  小さな街で呪いを解く『祓い師』の仕事をしているレイラは、今日もコレが日常なのである。嫌な依頼はザックリと断る。……もしくは2倍3倍の料金で。  まだ15歳の彼女はこの街一番と呼ばれる『祓い師』。腕は確かなのでこれでも依頼が途切れる事はなかった。  そんなレイラの元に彼女が住む王国の王家からだと言う貴族が依頼に訪れた。貴族相手にもレイラは通常運転でお断りを入れたのだが……。

実の弟が、運命の番だった。

いちの瀬
BL
「おれ、おっきくなったら、兄様と結婚する!」 ウィルとあの約束をしてから、 もう10年も経ってしまった。 約束は、もう3年も前に時効がきれている。 ウィルは、あの約束を覚えているだろうか? 覚えてるわけないか。 約束に縛られているのは、 僕だけだ。 ひたすら片思いの話です。 ハッピーエンドですが、エロ少なめなのでご注意ください 無理やり、暴力がちょこっとあります。苦手な方はご遠慮下さい 取り敢えず完結しましたが、気が向いたら番外編書きます。

【完結】人形と皇子

かずえ
BL
ずっと戦争状態にあった帝国と皇国の最後の戦いの日、帝国の戦闘人形が一体、重症を負って皇国の皇子に拾われた。 戦うことしか教えられていなかった戦闘人形が、人としての名前を貰い、人として扱われて、皇子と幸せに暮らすお話。   性表現がある話には * マークを付けています。苦手な方は飛ばしてください。 第11回BL小説大賞で奨励賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

処理中です...