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これにてごめん

むっかつく

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「って事で、私は守り手であり伴侶って事なのね」

『はい。ご主人様はこの世界に生まれ選ばれた初の伴侶。異世界から迎え入れられる伴侶達との違いは、蜜飴や体液だけでなく食物を経口摂取出来ること。つまり、エイデン様が先に星空へ召されても、ご主人様はすぐに儚くなる事はありません。私の母上とは違って…』

 ベルナールは少しだけ悲しそうに微笑んでから話を続けた。

『最後に、ご主人様とケイレブ様宛の伝言を森から言付かっております』

「は?」

 いつの間にそんな連絡をもらったの?とポカンとした顔まま向かい側に座るベルナールを見つめれば、彼は悲しそうな顔をやめて優しく微笑むと話を続けた。

『〈守り手の次代は本来ならばキャスリーンただ1人。お前達2人は赦しを受けにきた者。証は徐々に消えてゆくだろう。国にかけられた呪いはお前達が森に入ってすぐに解かれた。お前達の呪いもすぐに解ける。冬が明けたら故郷に帰って良い。男よ、希望するならば守り手として働くことを許そう〉だそうです』

「「えー!!!」」

 ベルナールの発言に私とケイレブはびっくりして同時に立ち上がった。

 ケイレブの膝に座ってたキャスリーンは落とされるようにずり落ちたが、持ち前の瞬発力で倒れるのを防ぎつつポカンとしたまま床に座った。

 ディーはウンウンと頷いて何故か納得げだ。

 双子がアワアワと体を震わせている間にもベルナールの話は続いた。

『ケイレブ様はどうなさいますか?森は貴方様が良ければ例外として2人目の守り手に任命出来るようです。キャスリーン様と2人で任務につくならば、予定任期の半分で役目は終わるだろうともいっていました。また、ご主人様はどんなにごねても守り手にはなれないとも…」

「……戦えないから?」

 私が無表情のままポツリと呟けば、ベルナールは苦笑いをした。

「いや、俺のご褒美だからだろ!!」

 その様子にすかさずディーが吠えるように発言すると、立ち上がったままの私の腰に抱きついてきた。

「冬が終わったら俺とヴィーでお前の祖国に帰ろう。俺の国は滅んでるかどうかはしらんが、元々平民だった俺にはあまり関係ないし…。貴族の血筋じゃないけど、ヴィーと仲良く暮らす国がより発展できるように、頑張るから。ケイレブの代わりに戦いだって…」

 な?な?だからそんな顔をするよっと眉尻を下げて話すディーの顔は捨てられそうな子犬のようだ。

「…ちょっと、心の整理がつかない…」

 だって、こんなこと予想していなかった。
 私はこの人生の全て置いてきたつもりだった。
 だから、振り返らないように心に蓋もした。
 だけど、それすら意味がないと嘲笑うかのうような終わり。

 私は両拳を握りプルプルと震えると、右腕を天井に突き出した。

「こんのおおおお、クソ森ブラック企業!!!なーにがお前はご褒美だから帰って良いぞ、嬉しかろう?だよ。嬉しくねーよ!こちとらここで何百年も仕事する気持ちできてんだよ!!!!なーに、テメェの勝手で決めつけてんだよ!!!!それなら事前に言ってくれてもいいじゃん!!!私の決意は!?気持ちは!?完全に無視なのね???バッカヤローーー!!!」

 天井を見上げてブンブン腕を振り回して怒り始めれば、私の腰に縋りついているディーは落ち着かせようとさらに腕に力を込めた。

「どうどうどう。落ち着け、ヴィー」

 腕を振り回しながら目線を下げてキッとケイレブを睨むと、彼はビクッと震えた。

「ケイレブ!アンタはどうすんの!」

「お、お、おれは…キャシーと居られるならなんでも…」

「いいの!?この理不尽な扱いでも!私達の気持ちや覚悟なんてクソって言われたのよ!?悔しくないの?!」

「う、うーん。なるようにしかならないかなぁと…」

「カー!プライドはないのか!お前はよー!」

「〈ぷらいど〉はわからんけど、ここに来た意味はあったからいいじゃん。俺たちの本望は呪いが解けることだろ?別に守り手にならなくても…」

 だから落ち着けよという顔でケイレブが言えば、私の心はさらにカーッと熱くなった。

「なによ!私は戦えないから相応しくない、いらなーいってするなら、初めからアンタ1人で行けばよかったじゃない!それなら…それでいいじゃない。一年あれば…国をどれだけ栄えさせられたか……私に証をつける意味はあったの?……うっうう」

 私がここに赴いた意味はあるのだろうが、それでも心の中で湧き上がる怒りはどうしようもできない。視界が歪み始めた。この気持ちをどこにぶつければよいのか!

 そう思ってダンダンダンッと片足で地団駄を踏めば、ディーがやめてーっと縋り付いてきた。

「悔しいのはわかる。自分の決断の意味がなくなった虚しさもわかる。でも、でも、頼むから。俺との未来を否定しないでくれよ」

「……」

「俺と出会うために来たんだって、そう思っても…その気持ちはおさまらないか?」

 ディーの涙声での説得を聞いて、私は振り上げていた拳をスッと下ろした。

(…そうね…。自分の運命の相手に出会えたと考えれば…。それに、ディーが嫌なわけじゃない。ただ、ブラック森企業の考え方というか、心がないやり口というか…。結果しか見なくて過程なんて見ずに評価してる感じが、なんとも、なんとも、なんとも…)

「イラつくのよおおおお!!!」

 考えてみたけどやっぱりムカつくことはムカつく。

 その後、私はしばらくギャーギャー騒いだ。

 騒いで騒いで満足した頃合いに、ボロボロ涙を流してるディーに抱きついて口の中を舐め回す勢いでディープなキスをし、相手の涙を止めた。

 その後、顔を真っ赤にしたディーに抱き抱えられて私の部屋に連れ込まれたのはいうまでもない。
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