43 / 70
妊婦には優しく
第1回妊婦なう①(Art)
しおりを挟む
「おはようございます、マイカ様」
マリアが私に声をかけてきた。ふわふわした意識がはっきりした私はパチっと目を開けてマリアに目線を向けた。
「あ、おはよう。今日は肉球ペッタン起こしじゃなかった」
「いえ、既に何度も額を…。しかしマイカ様が反応されないので拗ねて隣の部屋に」
「あ、そうなんだ。悪いことしたな…」
「殿下の御子が宿ったと伺いました。大事なお体です。今後は何かあればすぐにお申し付けください」
私はゆっくり体を起こした。マリアは私が起きるのを手伝ってくれた。すでに…過保護モード?
「ありがとう。今後体調の変化が出るかもだから、その時はよろしくね」
「はい。では身支度をお手伝いいたします」
「はーい」
マリアに連れられて、ドレスに着替えた。今日はシックなデザインの青色のドレスだった。アートに会う日は青が多い気がする。
身支度を整えて、隣の部屋に移動するとリチェ様とルーが仲良く話をしていた。
「おはよう。朝から仲良いね」
「おはようございます。マイカ様。お加減はいかがですか?」
「ん?まだそんなに変化はないよ」
『そんなにすぐには症状は出ないと思いますよ。えーっと、一ヶ月半ほどが初期で、それから二ヶ月が中期で、残り二ヶ月半が後期ぐらいでしょうか…』
2人が座っているソファーの向かい側に座ると、リチェ様がトコトコとやってきて私の膝に乗ると前足でおなかをポンポンっと叩いてきた。
『まぁ、先程行った妊娠段階も予想なので…マイカさんの世界とは勝手が違って戸惑うかもしれません。困ったらすぐ教えてください。私が毎日ちゃんと育ってるか、確認しますからね』
「つまり、リチェ様が産科医…」
『ふふふ!お任せください!』
「さすがです、リチェ様。私の子供の時もよろしくお願いいたします」
『もちろんです!』
ルーはリチェ様をヨイショっと持ち上げるのが上手い。神官とは、ある意味…神を神輿で担ぐようなモノ…だからかな?っと考えていると朝食の準備ができたとマリアから声がかかって3人で朝食をとった。
広間でのんびり3人でお茶をしていると、アートが離宮にやってきた。そして広間に入ると、ルーが対面のソファーから立ち上がってアートに場所を譲り私の後ろに控えた。
「おはよう。マイカ。子は…宿ったときいた」
「うん。リチェ様がお医者様みたいに今後見てくれるって。ちゃんと育ってるから心配しないで」
「そうか。いつ頃から腹が膨らむのだ?」
「うーん…二、三ヶ月後には大きくなってると思う。でも、一般的な妊娠期間とは違うから…どう変化するかはまだ未知数なんだよね」
「何かあればすぐに知らせてくれ。迅速に対応しよう」
「ありがとう。アートも毎日は無理でも、子供が動くようになったら話しかけたりしてお腹にいる時から触れ合ってあげてね」
「ああ、なるべく時間を見つけて毎日こよう。では、ルイスあとは頼んだ」
そう言ってアートはソファーから立ち上がって部屋から出て行った。
パタンっと扉が閉まった後に、私はルーに目線を向けた。
「まだ不機嫌なのかな。口数というか、前みたいな変態じみた発言がなかった気がする」
「…殿下は…そうですね。侮れない方なので、どこまでが本心なのかは…」
「そっか、まぁいいや。君のお父さんは腹芸が得意なんだってー。あんまり似ちゃだめだよ?」
私は自分のお腹に右手をあてて話しかけた。その姿をルーは微笑ましそうに見つめていた。
それから、月日が流れた
アートの子供は悪阻もなく順調に育っていった。アートも毎日時間は変わるが、顔を見せるという発言通り現れて少し話をして帰っていっていた。
でも、お腹が大きくなり始めた頃。私が妊娠していることをやっと実感してきたのか、徐々に開いていた距離が縮まった。ただ、前よりは離れてるが滞在時間は長くなっていった。
安定期に入った頃、アートに誘われて毎日中庭でお茶をするようになった。
アートはその頃から私のお腹を撫でたそうに見つめてくるようになった。
ある日、私がその視線に耐えかねて、触るか聞く前にアートの右手をお腹に当てた。アートはびっくりしたような表情になったが、すぐにお腹に目線を向けてしばらく静かになった。
そしてボソリと呟いた。
「子がいる腹とは、意外と柔らかいのだな」
「それは、私の脂肪も関係してるけどね…。でも、お腹が張ると結構硬くなるんだよ」
「そうか。あまり無理はするなよ」
「うん。お腹ぐらい触っていいよ?」
「…撫でてもいいか?」
「うん。たぶん音も聞こえてるから、話しかけてあげて」
アートはそっと私のお腹を優しく撫でた。撫でているアートの顔を眺めると、表情は少し硬いが瞳は穏やかだった。
「俺がお前の父上だ。元気に産まれてこい」
アートはその一言だけ、子供に話しかけた。
その後はお腹は撫でているが、あまり子供に声をかけようとはしなかった。
それから、アートは会うたびに私のお腹を撫でた。胎動を感じる頃には蹴るまでお腹に手を当てられて、身動きが取れなくて困ったこともあった。
子供に愛着がわいたようで、毎回撫でてくるのはいいのだが…。時折少し大きくなってきた胸を見てニヤッと笑うようになったのは…ちょっと…変態だった。
マリアが私に声をかけてきた。ふわふわした意識がはっきりした私はパチっと目を開けてマリアに目線を向けた。
「あ、おはよう。今日は肉球ペッタン起こしじゃなかった」
「いえ、既に何度も額を…。しかしマイカ様が反応されないので拗ねて隣の部屋に」
「あ、そうなんだ。悪いことしたな…」
「殿下の御子が宿ったと伺いました。大事なお体です。今後は何かあればすぐにお申し付けください」
私はゆっくり体を起こした。マリアは私が起きるのを手伝ってくれた。すでに…過保護モード?
「ありがとう。今後体調の変化が出るかもだから、その時はよろしくね」
「はい。では身支度をお手伝いいたします」
「はーい」
マリアに連れられて、ドレスに着替えた。今日はシックなデザインの青色のドレスだった。アートに会う日は青が多い気がする。
身支度を整えて、隣の部屋に移動するとリチェ様とルーが仲良く話をしていた。
「おはよう。朝から仲良いね」
「おはようございます。マイカ様。お加減はいかがですか?」
「ん?まだそんなに変化はないよ」
『そんなにすぐには症状は出ないと思いますよ。えーっと、一ヶ月半ほどが初期で、それから二ヶ月が中期で、残り二ヶ月半が後期ぐらいでしょうか…』
2人が座っているソファーの向かい側に座ると、リチェ様がトコトコとやってきて私の膝に乗ると前足でおなかをポンポンっと叩いてきた。
『まぁ、先程行った妊娠段階も予想なので…マイカさんの世界とは勝手が違って戸惑うかもしれません。困ったらすぐ教えてください。私が毎日ちゃんと育ってるか、確認しますからね』
「つまり、リチェ様が産科医…」
『ふふふ!お任せください!』
「さすがです、リチェ様。私の子供の時もよろしくお願いいたします」
『もちろんです!』
ルーはリチェ様をヨイショっと持ち上げるのが上手い。神官とは、ある意味…神を神輿で担ぐようなモノ…だからかな?っと考えていると朝食の準備ができたとマリアから声がかかって3人で朝食をとった。
広間でのんびり3人でお茶をしていると、アートが離宮にやってきた。そして広間に入ると、ルーが対面のソファーから立ち上がってアートに場所を譲り私の後ろに控えた。
「おはよう。マイカ。子は…宿ったときいた」
「うん。リチェ様がお医者様みたいに今後見てくれるって。ちゃんと育ってるから心配しないで」
「そうか。いつ頃から腹が膨らむのだ?」
「うーん…二、三ヶ月後には大きくなってると思う。でも、一般的な妊娠期間とは違うから…どう変化するかはまだ未知数なんだよね」
「何かあればすぐに知らせてくれ。迅速に対応しよう」
「ありがとう。アートも毎日は無理でも、子供が動くようになったら話しかけたりしてお腹にいる時から触れ合ってあげてね」
「ああ、なるべく時間を見つけて毎日こよう。では、ルイスあとは頼んだ」
そう言ってアートはソファーから立ち上がって部屋から出て行った。
パタンっと扉が閉まった後に、私はルーに目線を向けた。
「まだ不機嫌なのかな。口数というか、前みたいな変態じみた発言がなかった気がする」
「…殿下は…そうですね。侮れない方なので、どこまでが本心なのかは…」
「そっか、まぁいいや。君のお父さんは腹芸が得意なんだってー。あんまり似ちゃだめだよ?」
私は自分のお腹に右手をあてて話しかけた。その姿をルーは微笑ましそうに見つめていた。
それから、月日が流れた
アートの子供は悪阻もなく順調に育っていった。アートも毎日時間は変わるが、顔を見せるという発言通り現れて少し話をして帰っていっていた。
でも、お腹が大きくなり始めた頃。私が妊娠していることをやっと実感してきたのか、徐々に開いていた距離が縮まった。ただ、前よりは離れてるが滞在時間は長くなっていった。
安定期に入った頃、アートに誘われて毎日中庭でお茶をするようになった。
アートはその頃から私のお腹を撫でたそうに見つめてくるようになった。
ある日、私がその視線に耐えかねて、触るか聞く前にアートの右手をお腹に当てた。アートはびっくりしたような表情になったが、すぐにお腹に目線を向けてしばらく静かになった。
そしてボソリと呟いた。
「子がいる腹とは、意外と柔らかいのだな」
「それは、私の脂肪も関係してるけどね…。でも、お腹が張ると結構硬くなるんだよ」
「そうか。あまり無理はするなよ」
「うん。お腹ぐらい触っていいよ?」
「…撫でてもいいか?」
「うん。たぶん音も聞こえてるから、話しかけてあげて」
アートはそっと私のお腹を優しく撫でた。撫でているアートの顔を眺めると、表情は少し硬いが瞳は穏やかだった。
「俺がお前の父上だ。元気に産まれてこい」
アートはその一言だけ、子供に話しかけた。
その後はお腹は撫でているが、あまり子供に声をかけようとはしなかった。
それから、アートは会うたびに私のお腹を撫でた。胎動を感じる頃には蹴るまでお腹に手を当てられて、身動きが取れなくて困ったこともあった。
子供に愛着がわいたようで、毎回撫でてくるのはいいのだが…。時折少し大きくなってきた胸を見てニヤッと笑うようになったのは…ちょっと…変態だった。
0
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
春画を売ったら王子たちに食べられた
四季
恋愛
どこにでもいる普通のOLの里奈は、山の中でスケッチをしていたら異世界に迷い込んだ。魔力のない里奈は『非人』として国に保護されて、洗濯の下女の仕事をしている。将来のためにお金を貯めようと、こっそりエロ画を描いて売っていた。どうも里奈の描いたエロ画はこの国では刺激が強かったらしい。「これを描いたのはおまえか?」と、俺様王子に食べられた。恋い焦がれていた人の兄と関係を持った。
里奈が王子の子どもを妊娠したことによって、長い歴史の中でねじ曲げられた非人と王族との真実が明かされようとした。そして命を狙われはじめた。二人の王子の間で揺れ動く恋心。生き残るために日本で育った常識を捨てた。
R18 *性的描写や残酷描写を想像させる描写あります。誤字脱字多で不快感を覚える方はお控えください。執筆に集中したいので感想欄を閉じさせていただきます。お読みくださり、ありがとうございます。
すみません、クライマックスですが、更新ペース下がります。
能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。
暇野無学
ファンタジー
馬鹿の巻き添えで異世界へ、召喚した神様は予定外だと魔法も授けずにテイマー神に丸投げ。テイマー神もやる気無しで、最低限のことを伝えて地上に降ろされた。
テイマーとしての能力は最低の1だが、頼りは二柱の神の加護だけと思ったら、テイマーの能力にも加護が付いていた。
無責任に放り出された俺は、何時か帰れることを願って生き延びることに専念することに。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
【完結】愛猫ともふもふ異世界で愛玩される
綾雅(りょうが)電子書籍発売中!
ファンタジー
状況不明のまま、見知らぬ草原へ放り出された私。幸いにして可愛い三匹の愛猫は無事だった。動物病院へ向かったはずなのに? そんな疑問を抱えながら、見つけた人影は二本足の熊で……。
食われる?! 固まった私に、熊は流暢な日本語で話しかけてきた。
「あなた……毛皮をどうしたの?」
「そういうあなたこそ、熊なのに立ってるじゃない」
思わず切り返した私は、彼女に気に入られたらしい。熊に保護され、狼と知り合い、豹に惚れられる。異世界転生は理解したけど、私以外が全部動物の世界だなんて……!?
もふもふしまくりの異世界で、非力な私は愛玩動物のように愛されて幸せになります。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/09/21……完結
2023/07/17……タイトル変更
2023/07/16……小説家になろう 転生/転移 ファンタジー日間 43位
2023/07/15……アルファポリス HOT女性向け 59位
2023/07/15……エブリスタ トレンド1位
2023/07/14……連載開始
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
離縁しようぜ旦那様
たなぱ
BL
『お前を愛することは無い』
羞恥を忍んで迎えた初夜に、旦那様となる相手が放った言葉に現実を放棄した
どこのざまぁ小説の導入台詞だよ?旦那様…おれじゃなかったら泣いてるよきっと?
これは、始まる冷遇新婚生活にため息しか出ないさっさと離縁したいおれと、何故か離縁したくない旦那様の不毛な戦いである
深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった
ぐうのすけ
ファンタジー
日本の社会人として暮らす|大倉潤《おおくらじゅん》は女神に英雄【ジュン】として18才に若返り異世界に召喚される。
ジュンがチートスキルを持たず、他の転移者はチートスキルを保持している為、転移してすぐにジュンはパーティーを追放された。
ジュンは最弱ジョブの投資家でロクなスキルが無いと絶望するが【経験値投資】スキルは規格外の力を持っていた。
この力でレベルを上げつつ助けたみんなに感謝され、更に超絶美少女が俺の眷属になっていく。
一方俺を追放した勇者パーティーは横暴な態度で味方に嫌われ、素行の悪さから幸運値が下がり、敵にマークされる事で衰退していく。
女神から英雄の役目は世界を救う事で、どんな手を使っても構わないし人格は問わないと聞くが、ジュンは気づく。
あのゆるふわ女神の世界管理に問題があるんじゃね?
あの女神の完璧な美貌と笑顔に騙されていたが、あいつの性格はゆるふわJKだ!
あいつの管理を変えないと世界が滅びる!
ゲームのように普通の動きをしたら駄目だ!
ジュンは世界を救う為【深刻な女神力不足】の改善を進める。
念のためR15にしてます。
カクヨムにも先行投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる