誰にも言えない初恋

山本未来

文字の大きさ
上 下
21 / 66

傍観者

しおりを挟む
拓哉に対するしごきは止まることなく

僕自身も少し拓哉から距離を

置くようになって行った


1年生の僕達はランニングや球拾い

基礎的な柔軟運動や後片付けグランドの

整備などで特別に優れた能力がある人は

バッティングなどに加わる事は出来たけれど

ほとんどがこれを毎日繰り返していた


ある日、練習が終わり後片付けをしょうと

していると

「1年生は帰っていいぞ~

こいつ一人で片付け

やってもらうから手伝うなよ~」


とライトを守っている実力があり

目立っている3年生の先輩が拓哉に指さし

いかにも意地悪な自信満々な言い方で言った


みんなは顔を見合わせて困った顔をしている

でも先輩の言う事は絶対で逆らう事もできず

拓哉を気にしながらも、みんな部室の方に

歩き出した


拓哉は何も言わすグランドの整備を始めた

僕は何度も振り向き拓哉を見つめながら

部室に入り着替えをすました


先輩達は、ばかにしたように

笑いながら着替えると

部室を出て帰って行った


僕は拓哉をかばってあげられないもどかしさ

どうする事も出来ない状況に

心が苦しくて門の外で腰掛けて拓哉を

待つ事にした


涼しい風が時折吹くものの

もうすぐ近づく

梅雨の時期を思わせるような

少しジメジメした夕方で段々辺りは

暗くなって来た


何時間経つただろう

足音が聞こえ

拓哉が門の側にやって来た


「拓哉、お疲れ!」

僕は普通にそう言うと


「おっ~!翔、待っててくれたんだ~

やっぱり一人でグランド整備はきついわ~

先輩ひどいよな~

俺、入部してから生意気だったから

もっと大人しくしとけば良かったかな、、」


拓哉はさっぱりとした口調で

にっこり笑って言った


「俺、拓哉の味方になれなくて

ごめんな~

どうする事も出来なくて、、」


僕は拓哉の横に並ぶと歩きながらそう言った


「いいよ、先輩達に逆らったら俺と同じ目に

合うし、夏の大会終わったら

先輩達も引退していなくなるし

それまでの辛抱だから

なんとか頑張るし

こうやって翔が待ってて

くれて嬉しかった

一人でも味方がいてくれているだけで

俺頑張れそうだから、、

翔は見て見ぬ振りしてたらいいからな!」


僕は拓哉の逞しさや優しいさに

ますます心が痛んだけれど何も言えず

下を向いて歩いていた


拓哉は昔から正義感が強いから

間違った事を言ってるやつには

ハッキリ物を言う

僕は、そんな拓哉を尊敬していたし

とても大切な親友と思っていた


でも今回はどうする事も出来なかった


世の中は上に立つ能力のある意地の悪い

自己中心的なやつらが

普通で優しくて

何も悪い事をしていない誰かに

ターゲットを絞り打ちのめし

それを見ている周りのやつらは

自分がターゲットにならないように

上手くかわし

そいつらに媚びへつらい見て見ぬ振りをする


先生さえやもそんなやつらに

関わりたくなくて

知らない振りをする


その方が平和に過ぎるから、、


何人かの悪人に対して大勢いる普通の

人達は団結する事も悪を悪とも言えず

正当化してその繰り返しだ

だからいつまでも

いじめは無くならないんだ


でも僕もその傍観者の一人である事は

間違いなかった


僕はただ拓哉が先輩達からこれ以上

いじめを受ける事がないように

祈る事しか出来なかった


こんな傍観者の僕なのに拓哉は

変わらず優しかった

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?

ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。 しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。 しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…

二分で読めるショートストーリー

佐賀かおり
ライト文芸
二分で読めるおもしろいお話です。最新話【空気の読めない神様】投稿中

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

処理中です...