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12話 メンテナンス

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「うう…少し肌寒いな」

あの後、屋上で辺りを確認した後は、そのまま音楽室で休むことになり、夜まで休憩していた。簡易的に床に毛布を何枚か重ね、掛け布団も用意したが、やはり身体は少し痛くなるだろう。
 それに、地球の季節は今は夏だったが、こちらの世界では初夏か晩夏か、特別寒いという訳では無いが、少しだけ肌寒いほどだった。

「飯を食ったら今日はそのまま寝て、明日は見つけた川に向かうついでに魔石集めでもしてガチャから布団が出ないか試してみよう。完全に寒くなる前に布団は欲しいところだ」
《うーん、そうだな。それに、何が出るか分からないというのもな…基本的な飲料や食料はともかく、家具はラインナップが見れるようになれば便利だよな…》
『やぁ、こんばんは』
「《っ!!》」

声質は違うが間違いなくこの世界に転移してきた時と同様、人間とは違う異質な声の届き、神の存在に気づき2人は一瞬にして辺りを警戒した。

『ああ、そんなに警戒しなくていい。今は神界から話しているからどっちみち手は届かないし、今の君程度じゃあ神には傷すら付けられない』
「ハッ、どうせ殺せるから警戒も無意味ってか?」
『うーん、まぁ端的にいえばそういうことだね。まぁでも安心してよ、ロキと喧嘩するのは面倒だし、僕は君を気に入っているから君は殺さない。
それに、僕は【観測者】だから、後処理がかなり面倒になるしね』
「…要件を話せ」
『君の【ナビゲート】…ああ、固有名を貰ったんだ?
君の【大和】からの申請についてだよ。
ステータスの改良だね。あれはとてもいい提案だった。神々が作ったシステムにもまだまだ改良できるところがあるっていうところが面白い。
そこで、君には時折自分が気づいたことで良いから、大和を通して【システムメンテナンス】の提案を頼みたい』
「…俺は基本的にソロで動いている。他の奴に頼んだ方がいいんじゃないか?」
『【管理者権限】を持っているのが君だけだからね。それにロキも言っていただろう?このゲームは暇つぶしだって』

…うん?ロキ?ロキって誰だ?確か、遊戯の神と名乗っていたのは…

「わかった。だが、交換条件だ。一つだけ教えてくれ。ロキとは誰だ?」
『え?…あ、もしかしてこっちで偽名で話してた?』
「セルフィナと話していた。それに、暇つぶしというのも初めて聞いた」
『…あ~、うん。じゃ、そこら辺は一旦忘れてくれる?』
「セルフィナとロキは同一神なんだな?」
『うん、そうだよ。遊戯神の通称だから、真名ではないけどね。じゃ、システムの更新を待ってるよ』
「ああ、それじゃあ早速1つ。ガチャのラインナップを閲覧できるようにしてくれ」
『…っと、早速ガチャ機能についてなんだね。でも、あれ自体はあまり構造を弄れないんだ』
「というと?」
『あれは何人かの神が共同で作ったものなんだ。
あ、だけど勘違いしないで欲しいんだけど、君たちを召喚したのには関係ないよ。ロ…セルフィナが駄々を捏ねて作って貰ったやつだから』
「うーん…一応話だけでも聞いてくれ。ラインナップといっても、基本的に地球でのガチャは中身が何が出るのかだけはわかっていたんだ」
『ああ、そういうこと?中身の一覧が?』
「ああ。例えば、欲しいものがあって引くのは分かるが、欲しいものがなかった場合は魔石を無駄にするだろ?逆も然り、欲しいものがあってガチャを引いていたが、運が悪くてほしいものが出てこない場合、出来ないとは思うが"出ない"というクレームがあがる。それを防止、対策するためにもしてほしい」
『うん。たしかにそれならこっちの管理も簡単に出来るしね。わかったよ、それをラインナップって言うんだね。こっちでやっておこう』

薄らと感じていた神の気配はそこで途絶え、想良の緊張はそこで一気に解けた。

「ッ…はぁぁ…神がこうやって接触するのはよくあることなのか?」
《んな事あるわけねぇだろ。だったら管理者権限なんてのは必要ねぇ。
僅かな人間は信託として神の言葉を受け取る言葉はできるが、それでも相当な負担だからな、あそこまで話すとなると生贄が必要になるが、生贄を捧げて来る神は悪神がほとんどだ》
「悪神?」
《悪神と言っても悪い神って訳じゃねぇぞ。そういう括りがあるだけだ。
神にはそれぞれ権能と共に役割が存在する。んで、生を司る神は善神、死を司る神は悪神と呼ばれているんだ。
有名なところで言えば、創造神と破壊神だな》
「セルフィナは?」
《あれは特殊なんだ。遊戯神は善神と悪神の両方を兼ね備えているんだ。まぁ、純粋な子供心と言えばそうなんだが…》
「なるほどな」
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