上 下
99 / 100
第五章 キングダムインベードミッション

優しい言葉が今は毒なの

しおりを挟む
 
「慎一郎ッ!貴様!これはどういうことだ!!」

 ……アズと一緒に手を繋ぎ、エドの元に現れた俺を、エドはひどく叱責した。

 時は世界大会開会式前、代表者達がいつまで経っても現れないに状況に、観客、運営からにわかにざわつきが聞こえ初めてきた頃だ。

 ……作戦名『エドを中心に他の奴らも力を合わせてエドの背中を守りつつ総力戦で戦う作戦』を決行するべく俺達は集まり、開会式のトラブルに乗じて近衛兵や国王の暗殺企てていた最中の出来事。

 作戦外の人物をつれてきた俺にエドは怒りをぶつける。

「……だって今回は負け試合ですから……なんて言うつもりはありませんが、全ての記憶を取り戻した今、アズさんの力は絶対に戦力になると保証できます!」

 ……自信を持ってそう宣言した俺だったが、エドは胸ぐらを掴んで顔を近づけた。

「……記憶を取り戻して、まだそんな事を言うのかお前はッ!!人の血が通ってないのか!!アズ様は特段戦闘が強い訳でもない、ただの普通の女の子なんだ!!傷付いた彼女を見て、お前はなんとも思わないのか!!確かにアズ様は負ける事はない。だがその間彼女は100回殺される痛みを味わうんだぞ!!それでも戦わせるつもりかッ!!」

 鬼気迫るエドを前にしても、慎一郎は態度を崩さない。そんな彼の姿勢に、反対にエドが息を飲み込んだ。

「……エドさん」

「…………なんだ?」

「……エドさんが取り戻したい物って一体何ですか?」

「…………」

「……時を戻す力を持ってしても、取り戻せないものでありつつ、犠牲を払おうとしない。貴方の目的は何ですか?」

「…………」

「……もしかして、貴方の目的は…………」




 ※




 私は泣いていた。側で私の事を宥めるライの言葉など聞こえないくらいに私は大きな声で泣きじゃくっていた。

 ライは「……逆に良かったですよ、あんなやつ。あっちから別れてくれてこっちは願ったりです」なんて言うけど、そうじゃない、そうじゃないんだよ。

 チロの事を悪く言わないで!そんな事を思うくらいに私は彼を愛してたのに、何で、どうして、私の何がいけなかったの?私はそれが知りたいの。

 ……分かってる、分からないのは分かってる。だからせめて、責めるなら私を責めて、私を納得させてほしいの。

 ああ、やっぱり私はダメなんだなって、そう思えば少しは納得がいくから。

 だから私を責めて責めて責めて責めて責めて責めて……

 ……優しい言葉が今は毒なの。





 ※





「……どうやら開会式の開会は遅れているようですが、準備だけは済ませておいて下さいよ、カナ様。私は少し情報を集めてきますので、失礼いたします」

 ……私が何時間か泣きじゃくった後、ライは外へ出かけていった。

 私の気持ちは少しは落ち着いたが、いまだに謎は解けない。

 一体どうして?……なんて、知る術は一つしかないじゃないか。

「…………会いにいこう。チロに」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

処理中です...