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第三章 ワールドウォー・トゥモロー
…何なんだ、コイツは。
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「…王国の城への潜入捜査?マジで?」
「ああ。」
王国。そこは他の国とは違い、経済力、政治的影響力、人民の数等が飛び抜けている、いわばこの世界の国々の頂点。
その為一国の王であるこのミミさえも王国への侵入は厳格に禁止されている。それほどの圧倒的力を持っているのだ。
「お前頭大丈夫か?」
「物凄い火の玉ストレートだね。」
大体そんな王国に潜入して何をするつもりなのか。鼠小僧の真似事でもするのだろうか。
「まあその辺は他のメンバーが待っている別室で話そう。彼女らを待たせるのも悪いからね。」
そう言って部屋を後にしようとするミミ。俺もそれについて行こうとするが、一人部屋で俯いているレイの存在に気付き俺は足を止めた。
「…どうした?」
「いえ、…少し心配になってしまいまして。」
「心配?」
レイは先程までの狂ったようなテンションから一転し、真剣な面持ちで呟いた。
「はい。先程ミミさんが話していた、もし私が死んでしまった世界で、…チロさんは本当に私を想って哀しんで泣いてくれるのかなと。」
「当たり前だ。身近な人が亡くなって、何とも思わないほど俺は薄情じゃない。」
特にレイには特別思い入れが強い。レイと出会う以前は殆どの時間を共に過ごしたカナを除き、深く関わった人々は皆無だった。それはやはり元の世界でも他人と関わろうとしなかった弊害だろう。
しかしそんな心を閉ざし、うわべだけのコミュニケーションしかとってこなかった俺に対し、レイは親身に接してくれて、俺のつまらない話で笑ってくれて、俺を愛してくれた。
…レイがいなくなったら、俺はきっとあの時の様に…。
「いつもそうだけど、レイは自分をそんなに卑下しなくていいと思うぞ。俺の中ではレイはかけがえのない存在だし、嫌いになることなんて絶対にあり得ない。」
レイはその言葉に小さく首肯し、涙で潤んだ目をした顔を上げた。
「それは、分かっています。でも不安なんです。…お願いですが私の事をギュッて抱き締めてくれませんか?」
だが、断る。と普段の俺ならそう言うだろうな。しかし今のレイの表情は真剣そのもの、いつもの茶らけた雰囲気は微塵もない。
レイは俺の大切な友人で、親友だ。しかし愛が無いかと言えば嘘になる。…本当に浮気性だよなぁ、俺って。
「…今回だけだからな。」
「はい、ありがとうございます…。」
レイの華奢な体を俺は抱き締める。柔らかい感触が肌に当たる。レイと触れ合うのはこれが初めてではない。だが今まではレイから一方的に抱き締められるのが殆どで、自ら彼女を抱き締める、この感触は初めてだった。
その体はか細くて、力を込めれば壊れてしまいそうな儚さを感じる。
「…本当にありがとうございます、チロさん。もう大丈夫です、安心しました。」
「おう。」
そして俺らは密着させていた体を離す。俺も何故だか妙な安心感を得ていた。本当に何故だろう。
「…今の事はカナ様に報告しておくからな。」
「ちょっ!?勘弁してくださいっ!」
今の俺らの包容を端から見ていたミミがそう一言呟く。俺は全力で謝る。
だがレイに対して持つのはあくまで友人としての好意で、俺が一番愛しているのはカナだと言うことは声高に宣言できる。先程抱いた妙な安心感は気が合う友人との同族としての感情だと俺はそう考える。
「…まあいい。とりあえずあまり時間がない、早く移動しよう。」
そう言うミミに着いていき、今度こそ俺はこの部屋を後にしたのだった。
※
「着いたぞ、ここだ。」
やって来た場所は特段変わったところがあるような部屋では無く、先程いた俺が泊まっていた部屋と何ら変わらない、何も変哲の無い部屋だった。
ミミがノックをして扉を開けると、やはりそこの部屋は先程いた部屋と変わらない内装だった。
違いはそこにある六つの人影のみ。
「おお、久しぶりやな。元気しとったか?」
「やあ、君と最後に会ったのは一ヶ月ほど前だったかな、元気そうで何よりだ。」
最初に目にしたのは見知った西の国のメンバー。代表ニシとその側近ナオだ。ナオの言う通り彼女らと会うのは一ヶ月ぶりになる。
そして…、
「君が神林慎一郎…。始めましてか?私が東の国側近のエドだ。」
全身を鎧で包んだ厳つい外見だが、その口から発されるのは優しい女性の高い声色。
俺が東の国を訪れた時は居なかった、史上最強戦士、エドがそこにいた。
そのあふれでる覇気に俺は思わず背筋が伸びる。
「そう気張らなくてもいい。力を抜け、慎一郎。」
「ハ、ハイ。」
エドにそう言われ、俺はひとまず深呼吸する。しかし力を抜けと言われても、言われたくらいじゃ出来やしない。それほどエドが出すオーラというのは圧倒的なのだ。
気を紛らわす為、俺は部屋一体を見渡す。
そして俺は部屋の端で縮こまっている全身を黒装束で包んだ人物を目にした。
「えっと、どちら様で?」
俺は尋ねた。すると俺のその質問にその黒装束はビクッと肩を震わせるのみで答えない。代わりに口を開いたのはエドだった。
「ああ、彼女か。彼女の名前は白雪七……。」
「あー!あー!あー!NONONONONO!違いますっ!プリーズコールミー、ナナ。お願いしますっ?」
「なんやねん自分。」
俺の質問にはだんまりを決め込んだかと思えば、突然叫び出す黒装束の女とおぼしき人物。
…何なんだ、コイツは。
「ああ。」
王国。そこは他の国とは違い、経済力、政治的影響力、人民の数等が飛び抜けている、いわばこの世界の国々の頂点。
その為一国の王であるこのミミさえも王国への侵入は厳格に禁止されている。それほどの圧倒的力を持っているのだ。
「お前頭大丈夫か?」
「物凄い火の玉ストレートだね。」
大体そんな王国に潜入して何をするつもりなのか。鼠小僧の真似事でもするのだろうか。
「まあその辺は他のメンバーが待っている別室で話そう。彼女らを待たせるのも悪いからね。」
そう言って部屋を後にしようとするミミ。俺もそれについて行こうとするが、一人部屋で俯いているレイの存在に気付き俺は足を止めた。
「…どうした?」
「いえ、…少し心配になってしまいまして。」
「心配?」
レイは先程までの狂ったようなテンションから一転し、真剣な面持ちで呟いた。
「はい。先程ミミさんが話していた、もし私が死んでしまった世界で、…チロさんは本当に私を想って哀しんで泣いてくれるのかなと。」
「当たり前だ。身近な人が亡くなって、何とも思わないほど俺は薄情じゃない。」
特にレイには特別思い入れが強い。レイと出会う以前は殆どの時間を共に過ごしたカナを除き、深く関わった人々は皆無だった。それはやはり元の世界でも他人と関わろうとしなかった弊害だろう。
しかしそんな心を閉ざし、うわべだけのコミュニケーションしかとってこなかった俺に対し、レイは親身に接してくれて、俺のつまらない話で笑ってくれて、俺を愛してくれた。
…レイがいなくなったら、俺はきっとあの時の様に…。
「いつもそうだけど、レイは自分をそんなに卑下しなくていいと思うぞ。俺の中ではレイはかけがえのない存在だし、嫌いになることなんて絶対にあり得ない。」
レイはその言葉に小さく首肯し、涙で潤んだ目をした顔を上げた。
「それは、分かっています。でも不安なんです。…お願いですが私の事をギュッて抱き締めてくれませんか?」
だが、断る。と普段の俺ならそう言うだろうな。しかし今のレイの表情は真剣そのもの、いつもの茶らけた雰囲気は微塵もない。
レイは俺の大切な友人で、親友だ。しかし愛が無いかと言えば嘘になる。…本当に浮気性だよなぁ、俺って。
「…今回だけだからな。」
「はい、ありがとうございます…。」
レイの華奢な体を俺は抱き締める。柔らかい感触が肌に当たる。レイと触れ合うのはこれが初めてではない。だが今まではレイから一方的に抱き締められるのが殆どで、自ら彼女を抱き締める、この感触は初めてだった。
その体はか細くて、力を込めれば壊れてしまいそうな儚さを感じる。
「…本当にありがとうございます、チロさん。もう大丈夫です、安心しました。」
「おう。」
そして俺らは密着させていた体を離す。俺も何故だか妙な安心感を得ていた。本当に何故だろう。
「…今の事はカナ様に報告しておくからな。」
「ちょっ!?勘弁してくださいっ!」
今の俺らの包容を端から見ていたミミがそう一言呟く。俺は全力で謝る。
だがレイに対して持つのはあくまで友人としての好意で、俺が一番愛しているのはカナだと言うことは声高に宣言できる。先程抱いた妙な安心感は気が合う友人との同族としての感情だと俺はそう考える。
「…まあいい。とりあえずあまり時間がない、早く移動しよう。」
そう言うミミに着いていき、今度こそ俺はこの部屋を後にしたのだった。
※
「着いたぞ、ここだ。」
やって来た場所は特段変わったところがあるような部屋では無く、先程いた俺が泊まっていた部屋と何ら変わらない、何も変哲の無い部屋だった。
ミミがノックをして扉を開けると、やはりそこの部屋は先程いた部屋と変わらない内装だった。
違いはそこにある六つの人影のみ。
「おお、久しぶりやな。元気しとったか?」
「やあ、君と最後に会ったのは一ヶ月ほど前だったかな、元気そうで何よりだ。」
最初に目にしたのは見知った西の国のメンバー。代表ニシとその側近ナオだ。ナオの言う通り彼女らと会うのは一ヶ月ぶりになる。
そして…、
「君が神林慎一郎…。始めましてか?私が東の国側近のエドだ。」
全身を鎧で包んだ厳つい外見だが、その口から発されるのは優しい女性の高い声色。
俺が東の国を訪れた時は居なかった、史上最強戦士、エドがそこにいた。
そのあふれでる覇気に俺は思わず背筋が伸びる。
「そう気張らなくてもいい。力を抜け、慎一郎。」
「ハ、ハイ。」
エドにそう言われ、俺はひとまず深呼吸する。しかし力を抜けと言われても、言われたくらいじゃ出来やしない。それほどエドが出すオーラというのは圧倒的なのだ。
気を紛らわす為、俺は部屋一体を見渡す。
そして俺は部屋の端で縮こまっている全身を黒装束で包んだ人物を目にした。
「えっと、どちら様で?」
俺は尋ねた。すると俺のその質問にその黒装束はビクッと肩を震わせるのみで答えない。代わりに口を開いたのはエドだった。
「ああ、彼女か。彼女の名前は白雪七……。」
「あー!あー!あー!NONONONONO!違いますっ!プリーズコールミー、ナナ。お願いしますっ?」
「なんやねん自分。」
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