自然と世界は廻る

已己已巳己

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第十一話 昔のヒーロー

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村の人 じゃあ、村を救ってくれた若きヒーローに、乾杯!!
全員 かんぱーい!!!
百鬼 あれ、いただきますじゃないのかー!?
葉月 おんなじ意味だよ!かんぱーい!
百鬼 かんぱーい!!
村の人 いやー、助かったよ!
百鬼 えへへー、ありがとうございます!
村の人 この集落は前にも襲われたんだけど、その時は今回とは違って助からなかったからねえ。
村の人 うわ、あんときのか、もう数年もたつのかー。
 村の人達は彩里たちに過去にも襲われたことを話した。
葉月 その時は、皆さんはどうして助かったのですか?
村の人 いや戦いに出た子たちはいたんだ。だが負けてしまってな、村を蹂躙じゅうりんするつもりの団体ではなかったから、俺らは大丈夫だったんだがな…その戦いに出たうち1人の名は北見きたみといったな。
村の人 今もこの村にいれば、君たちと同じぐらいの年齢だったんだけどねえ。
 村の人達は苦い顔をしつつその数年前の戦いを思い出した。
葉月 その北見って子を連れ去った人たちの情報ってありますか?
村の人 そうだな、団体名っぽいのは聞いたぞ。戦争を終わらせるために優秀な子供を狙っていろんな村を襲撃しゅうげきする奴らは、自分たちを争滅隊そうめつたいと言っていた。あの団体は見込んだものを無理やり引き連れようとして、逆らったやつを圧倒的な実力でじ伏せ、そのせいで子供をかばった村のやつも何人も死んだ。
錫谷 そこでなくなったうちの1人が、相馬の母親だ。父親は元からいないらしいがな。そして、俺の両親もそこで死んだらしい。
村の人 …申し訳ない、思い出させようとしたわけではないんだ…
 村の人は勇紀がそばにいることに気が付いていなく、とても申し訳なさそうな顔をしていた。
錫谷 いや、勝手に聞いてたこっちが悪かったです。
 勇紀も村の人と同じような顔をした。
百鬼 この魚ってなんか味付けてるー?
村の人 あぁ、これは…
百鬼 まって言わないで、塩焼きでしょ!
村の人 まあ、そうだな。
百鬼 やっぱそうよね!塩焼きめっちゃおいしいわー!
 重い空気が流れる中、そのすぐ近くではみなもが元気に魚について村の人と話していた。
村の人 ならみなもちゃん、これをつけて食べてみたら?1年物よー?
 村の人はニヤニヤしながら村の伝統品である、収穫していた大豆と小麦、そして食塩を原料に醸造じょうぞうした特製の液体をみなもにすすめた。
百鬼 塩焼きには勝てないと思うけど、いただきます!っておいしーぞこれも!!
村の人 いやいや、塩コショウもいいぞ!俺はこれが一番好きだな!じょうちゃんも絶対ハマるぜ!
百鬼 食べるー!
村の人 いやマヨネーズも捨てがたいわよ!これ今マイブームなのよ!
百鬼 じゃあそれも食べる!!
村の人 あの子いっぱい食べるなー!
村の人 たらふく食うやつは強くなるぞー!
 たくさんの調味料を進めていく中で、みなもはそれを全てたいらげ、村の人たちはとても感心していた。
葉月 …争滅隊っていう団体、僕たちが必ず倒して、捕らわれた方々を助けに行きます。
村の人 ただえさえ村を救ってくれたのに、そんな重いことを背負わせられないよ。みんな確かに悲しい思いはしたけれど、君たちを失うことは村の子を失ったあの時と同じようにみんなが悲しむだろうし、気持ちはとっても嬉しいけど、任せられないよ。
村の人 何より、今回の親玉なんかとは比べ物にならないほどの実力を持ってる奴らが占めてる団体だから、今の状態で行きゃあ、いい方は悪いが即死が妥当だとうだと言わざるをえんな。
葉月 だとしても、自分だけじゃないんです。特にうちには、関わった人は全員幸せになってほしい主義の子がいるので、間接的にも誰かを見捨てることはできません。
村の人 だとしてもだな…
村の人 まあいいじゃないか。ただ、いくっつーなら、日々の鍛錬たんれんおこたらずにすることだな。何かしらしてるんだろう。あと、今の君のランクを見せてくれ。
 村の人はもう1人をなだめ、それから何かを思い出したように彩里のランクを聞いた。
葉月 ?はい…あれ、ランクが、5に上がってる!
村の人 やっぱりな。俺は今回の襲撃も北見のがきんちょたちが連れ去らせた時も現場を見ていたが、戦いの中であんちゃんは特に周りの誰よりも成長速度が速い。きっと戦闘力以外の特技をよく活かせてるからだ。
葉月 (空間把握能力と、瞬時の判断能力…)
 彩里は自分の手を見て、今回に限らず過去に生きた2つの能力を思い出した。
村の人 あんちゃん自身も、何か理解わかっているならなおさらいいな。北見のガキを連れ去った連中はこっから西北西にまっすぐ行った先にある集落に行けば情報があるだろう。おそらくあの団体があそこも襲撃しに行ってるはずだ。まあ、いいこまがいたらの話だがな。
 そういって指をさしながら争滅隊のいそうな場所を教えてくれた、その時、その指の方向に気がかりがあったのか、瞬太が反応した。
相馬 え、それってあっち!?
錫谷 なんかあんのか?
相馬 ちょうどこのぐらいの温度だったころにそのお祭りってのがやってたんだよ!
錫谷 へー。
 勇紀は特に気にせず、当たり前のように話を受け流した。
葉月 教えてくれてありがとうございます。今日と明日はこちらにいさせていただき、あさってには向かいたいと思います。
村の人 そんな急がなくても、一週間ぐらいゆっくりしていっていいのにー。
葉月 自分たちには、他にも目的があるので、休んでられないですよー。それと、あまりご迷惑になるわけにもいかないですしね。
村の人 迷惑だなんて、全く考えてないわよー?
 名残なごり惜しい思いのある村の人は何とかゆっくりしていってもらいたげの反応をしたが、その隣にいたその人の旦那が言葉を返した。
村の人 あのなあ、俺たちにとってはそうでも、この子らには自然にそう感じちまうもんなんだよ。異界いかいの地で初めて会った人間にはいろいろと接しにくいところもあるだろう。俺たちにできることは、黙って見守ることだけだ。
村の人 そういうもんなのか知らねぇ…
 村の人は、手をほおにあてながら、不服そうな顔をした。
葉月 あはは…
錫谷 なあ、後で話聞いてもらってもいいか?
葉月 おう!
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