自然と世界は廻る

已己已巳己

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第一話 数年ぶりの訪問者

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葉月はづき じゃあ、川のほうまで行ってくるよ。
?? いってらっしゃーい。
 彩里いろりは今日の狩り担当で、近くの川へと足を運んだが、そこでいつもは聞かない大きな音を耳にした。
ガンガンガンガンガンッ
葉月 なんか騒がしいな…もしかして、残党が近くに来ているのかな…
 彩里は音のする周囲の状況を確認しようと近くに向かったその時、知らない1人の少女と目が合う。
??? 敵か!?
葉月 (やばい、気づかれた!!)とりま逃げ…
??? …うわああああ!
 その少女は一瞬の思考の末に、半ば強引に攻撃を仕掛けてきた。
葉月 っ!はっや!
??? 百鬼組流儀なきりぐみりゅうぎの1!名切なぎりッ!!
 その言葉に、彩里は聞き覚えがあった。
葉月 これは…!(二刀流の水剣使い!!しかも今の言葉…)ってことは、百鬼組なきりぐみの子…?
??? (今、私の組の名前を言ってた?)君、もしかして百鬼組のことを知ってる人?
 攻撃を何とかかわしたのち、緊張の中彩里は答える。
葉月 (あぶねー!)人づてだよ!確か、全面戦争の最前線にいたチームのうちの1つのところでしょ!?でもチームは全滅したって聞いていたんだけど…
 その少女は、疑い深く尋ねた。
??? あなたは百鬼組のこと、どう思ってるの?
 落ち着きつつ、彩里は答える。
葉月 百鬼組の理念は、自由と堕落の奔放主義、であってる?
??? うん、でも一部は武装派とか、発展主義のチームからはよく思われていなかったり…君は、どこの派閥の人?
 少し考えたのち、彩里は答える。
葉月 …派閥、か。(元々自分がどこの派閥にいたかなんて、そんなの知れるほど親とも、その仲間とも長い時間一緒にいなかったしなぁ)少しずれるけど、自分は、派閥のない、平和な世界を望んでる。
 顔をしかめながら、再び少女は問う。
??? 無所属ってこと?
 苦笑を浮かべながら、彩里は答える。
葉月 覚えていないんだ、とっくの昔に仲間は全員死んじゃってるだろうし。誰も自分なんか知っちゃいないよ。その上で、自分は平和を望んでる。君の組の理念も、平和を前提とした考えのように見えるし、いい人たちなんだという認識だよ。
 少し緊張がほぐれてきた様子の少女は、真剣に答えた。
??? 私は、百鬼組の唯一の生き残り。私は、百鬼組の理念を叶えたい。そのためには、私も平和を望んでる。でも、その前に目的があるの。
葉月 ?
??? 今は、私たちのチームを壊滅させた団体に会いに行きたい。もう他の団体に壊滅されてるかもしれないけど…
葉月 なるほど、とりあえず自分たちは敵じゃないってことでいいのかな。
??? うん。でも、私1人じゃ何もできないし、よかったら君も一緒に来てくれない?
 彩里は脳裏に仲間を思い浮かべ、それから答えた。
葉月 あー…なら、ひとまずは自分らの暮らしてるところに来る?仲間もいるし、そこで改めていろいろ話を聞きたいな!
 その少女は今までの緊張が完全にほどけ、笑顔で答えた。
百鬼なきり 分かった!私の名前は百鬼みなもなきりみなもだよ!改めてよろしくね!えぇっと…
葉月 葉月彩里だよ!呼び方は何でもいいけど、よろしくねー、みなも!
百鬼 彩里ね!じゃあ案内してー!
~隠れ家~
 帰ってきた彩里は嬉々として仲間に話しかける
葉月 ただいまー、お客さんだよー!
 彼らは彩里とは裏腹に警戒しながら言った。
?? お客さんー?だれー?
??? それ大丈夫な人なのー?怖いんだけどー。
葉月 百鬼組の生き残りの子なんだって!しかも当主の娘らしい!
 当主の娘という言葉に、余計心配の募る表情をした2人は、用心深く答えた。
??? えぇ、なんか捕らえられたりしないのそれ…
?? 余計怖いわー…
 特に様子を変えず、彩里はのんきに答えた。
葉月 まあまあ、とりあえず話せばわかるってー。
 みなもは、彩里の一歩前にちょこんと立つ。
百鬼 どうもー、百鬼みなもって言いますー!
 噂を知っている仲間は、少し感心したように言った。
?? おおー、でも噂に聞いたまんまっぽい感じだねー。
 流れをつかんだかのように彩里は言った。
葉月 みんなも自己紹介してー!
 感心した仲間から、返事が返ってきた。
灰白かいはく そうだねー、俺は灰白時太かいはくときただよー。
 もう1人は警戒しつつも答えた。
岩田いわた 俺は岩田進いわたすすむだよ。
百鬼 よろしくねー!
 嬉しそうな顔をして振り向いてきたみなもに、彩里は話す。
葉月 あと今はいないんだけど、もうすぐでもう2人帰ってくるだろうから、とりあえず今はゆっくりしてってねー!
 みなもは、気が抜けた返事を返す。
百鬼 あら、どうもー。
 あまりの気の抜けように、思わず進の口が開いた。
岩田 てか慣れあうの早すぎだろwさっき会ったばっかじゃないのかよw
 寝転がり始めたみなもは続けて言った。
百鬼 百鬼組というもんはもともと自由と堕落だらく奔放主義ほんぽうしゅぎだからなあ、あ、お腹すいたー!なんかないのー?
 みなものありように動揺しつつも、ふとあることに気づいた時太が話しかける。
灰白 マジかいwってか、彩里なんも採ってきてないじゃん!何をしてんのよ!w
 ハッとして、かごに何も入れてきていないことを思い出す。
葉月 そういやそうやなwごめん行ってくるねー!
 みなもは、特に何も考えてなさそうな顔をしながら言った。
百鬼 なら、私も暇だからついていくねー!
葉月 お、まじでー!
百鬼 ほいじゃ、いこー。
岩田 (結局あの人のことほとんど何にも聞いてないんだけど…)
 明らかな不服顔をした進を見て言う。
灰白 まあまあ、そんな顔しなくても、すぐわかるでしょー。
岩田 まあ、それもそうだな。
 こうして彩里はみなもを連れ、再び河川敷に向かっていった。
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