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魔族生活の薦め
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しおりを挟む「ロズ様と魔王様、お二人で大丈夫でしょうか?」
バルコニーの手前で待機をしているノワは背後に意識を集中させながら、隣で同じ様に警戒しているレフィナードに話を振った。
以前はこの竜の部下だったが、時々レフィナードの考えている事が予測できない。元は魔術の研究者として働き、魔王の側近として働く経緯を知っている故に、研究者=独特な感性を持っている、といった印象だった。
「さてな、魔王様の身に何かあればお護りするまで……」
「どうしたんです?」
考え込むような仕草で俯くレフィナードに、やはり研究者独特の空気を感じる。言葉を選び、憶測で判断しないようレフィナードは考えているのだ。
ノワは慣れた沈黙にため息を吐く。
「あれはスクロールを見てたか?」
「ロズ様ですよ。あれ呼ばわりはしないでください。しかし、スクロールはまだ見れてないかと。レフィナード様に教えて頂こうかと思いましたが、なかなか会ってくれなかったじゃないですか」
ふむ、と再び考え会話が止まる。レフィナードとの会話はテンポが悪いと内心で文句を言う。
ノワの感情が表情に出ていたのか、しかめた顔でレフィナードがため息を吐いた。
「あれの能力値は理解ができなかった。全ての基本ステータスは上限まで極められていた。人の内包する魔力ではなく、星竜や大精霊の扱う量をあの小さな体に留めている。
人であれば魔力の濃度が高くて死んでいる筈だ」
「ロズ様がですか?しかし、スクロールで解析できたのであればレフィナード様よりロズ様の経験値は下かと思ってましたが……。ロズ様は通常の異世界人とは違うのですか?」
「私はあれをスクロールで解析できなかった。なので、鑑定で能力を測った。私の鑑定スキルは前魔王様側近より受け継いだ特殊スキルで、物の価値として能力を出した」
本当の意味でロズを物扱いしていたレフィナードに呆れたが、ロズが通常の異世界人でない事に納得する。
魔王であるギルウスの真名を与えた唯一の人。
そして、ギルウスの執着も納得できた。
「そんな方が人の国に渡ったら大変です。人は貪欲ですからロズ様を礎に魔族を滅ぼそうとするかもですね」
「そうだ。だから魔王様の為、魔族の為にもあの娘にはここにいてもらいたい」
「しかし、その力はロズ様のものであって、意思に反した利用をしてはなりません」
不安が過るが、ロズの立場を考えてレフィナードに進言する。
ロズの様子が気になり、バルコニーに視線を移した瞬間にゾワリとした感覚が床から伝わる。
同じ感覚を察知したレフィナードが素早くバルコニーに移動し、ノワが後を追う。
ロズの姿を確認し安堵したが、顔面は蒼白して今にも倒れそうだった。
「ロズ様!!」
魔王であるギルウスを睨むが、その腕からロズを離そうとはしなかった。
「私の花嫁だ、私の部屋に連れて行く。心配しなくていい、傍で休ませればすぐに回復する」
「花嫁?」
レフィナードも話を理解出来ずに、狼狽えている有様でノワは舌打ちをする。
ギルウスは影を拡げ、その中に姿を消した。
自室に影を使って移動したのだろう。
ノワはレフィナードを置いて走りだす。広間の地位ある魔族にぶつかりもしたが構わなかった。
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