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転生しました。
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しおりを挟む鈍器で殴られたかの衝撃。
頭の隅では、あの世界の半分を差し出してきた魔王がぼんやりと思い浮かぶ。
ベタだとも思うが、異世界転生後の展開としてはセオリー通りと言うべきか。
ロズは深呼吸し、情報を整理する。
この後の選択は、
『勇者の仲間になりますか?』
『勇者の誘いを断りますか?』
になる事を予測する。
仲間になれば、ガンガン行こうぜ魔王退治。
断れば、ソロで命大事に魔王退治。
どちらにしても、ロズが自由にこの世界で暮らす為にも魔王討伐は避けては通れないだろう。
「その魔王の復活で、私はどう関係するのでしょう?」
ロズが挙手してスリザスに尋ねる。
「魔王の復活に対してはあまり驚かないんだね……」
スリザスが虚をつかれた顔でロズを見ると、深い息を吐いてマグカップに入った飲み物を飲んだ。
深みを帯びた瞳に暖炉の炎が映る。
パチパチと爆ぜる音が心地よく部屋に響いた。
「召喚された勇者が、同じ時期に転生もしくは召喚された人物を探しているのです。
その人物を見つける事を魔王討伐の条件に勇者は提案してきた。今この国はその人物を探すのに躍起になっていて、地方の被害なんて考えていないのが現状ですが」
「勇者が魔王討伐に仲間を探しているって事?」
「そこまではまだ分からなくて、勇者は多くを話したがらない様子でした。
ただ、探してきたらその後は魔王を討つと。
自信のある発言だとは思いますが、確かに今回召喚された勇者は並みの力の持ち主ではありませんでした」
呆れたようにスリザスは言うと、白衣の内ポケットから丸いエンブレムのような物を出す。
その様子を見てエリオが背筋を伸ばした。
大きな大樹を中心とした繊細な細工にロズは目を奪われる。
スリザスは目を細めてエンブレムを撫でると、細い鎖を指に絡めてロズに見せた。
「……恩人である貴女にこんな願いを言いたくありませんでした。
ですが、『エバーティム』の為にどうか勇者の元へ一緒に来てくれませんか?
ロズこそ、勇者の求める人に違いありません」
「僕からもお願い。魔王が復活して、スライムだけじゃなくて強い魔物まで出てきて、怪我人も出てるんだ」
エリオも苦しげにロズに伝えた。
スリザスの持つエンブレムは貴族の身分証のようなものか、二人とも改まった様子でロズに視線を向ける。
勇者が召喚された事を知っているのも、二人の立場があっての情報だ。ロズが二人に出会わなければ、早く知る機会を失っていた。
「スリザスもエリオもこの世の終わりみたいな顔してるよ。
勇者に会うだけで私は魔王と戦う事はしないし、勇者が探している転生者が私じゃないかもしれない。
『友人』の頼みなら断る理由もないし、『エバーティム』を案内してもらいながら勇者の所に行くのもいいよね」
スリザスとエリオの手を取り、ロズは笑みを向ける。
身内も友人もいない世界で、初めて知り合った仲だ。冒険の目的もないロズに急ぐ理由はない。
「一緒に勇者に会いに行こうか」
驚いた様子のスリザスに、喜ぶエリオの姿。
二人の友人を得たロズは『エバーティム』の王城を目指す事になった。
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