解錠令嬢と魔法の箱

 三月、その夜は嵐でした。
 窓を叩きつける激しい雨音が静かな食堂に響いています。

「最近、王都で殺人事件が頻発しているらしいね。どうやら殺されたのは、全員犯罪者らしい。」

 カインお兄様が食事中に物騒な話を始めました。

「私もその話を聞いたわ。社交界では、自業自得、と噂になっていたわね。」

 噂好きなお母様は、とっくにその情報をお茶会で入手していたようです。
 二人の会話を黙って聞いていたお父様が、突然、私に話を振りました。

「セシル、ワイル伯爵家から持参金が返金された。追加で賠償金も支払われて婚約破棄が成立した。もう、ワグナーとは関わるな。」
「え?」

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