3 / 23
3
しおりを挟む
「なぁ、そういえば今度陛下主催の夜会があるんだろ?」
「確か、アナスタシア様の社交界デビューだろ?」
「え?俺は甥の公爵様の帰還祝いって聞いたぜ?」
あの変な騒動?から2週間。訓練を終えた仲間の騎士たちがそんな会話をしていた。
「なぁ、フォル。実際はどっちなんだ?」
副隊長でもあるフォルティナなら警備の配置などを隊長や他の隊の者とも決めるためにすでに知っているだろう、とロイが彼女のに話を振ってきた。
「どっちも、だね。公爵閣下も帰ってきたし、アナスタシア様のデビュタントも華やかに行いたいし、ってことで一緒にやることに決めたみたいだよ。まぁ、当日うちの隊のほとんどは警備につくから参加は出来ないけどね?」
フォルティナの最後の一言にロイや周りにいた仲間からは、「やっぱりかぁ」と嘆く声が上がる。
そんな仲間に「あたりまえだろ」とフォルティナは呆れたように返す。
近衛騎士は貴族出身者で作られている。基本的に騎士団は実力主義だが、近衛だけはそうもいかない。何故なら、彼らが警護し側近くで使える相手は王族。時と場合によっては他国の王族の目にも晒されるのだ。その為、どうしても剣や魔力の腕だけでなく、それなりの所作も求められるのだ。もちろん、騎士団に入るためには腕だけではなく学力や教養もある程度は問われるので、平民出身の騎士たちもそれなりには身に着けているのだが、やはりそこは、それなり、なのである。
そして、近衛の第一部隊が特に人目につく任務に就くため、彼らは実力だけでなく、家格や教養、そして外見で選ばれている。
ちなみにフォルティナが所属しているのは第二部隊でこちらは第一部隊よりも実力重視の人選になっていた。
騎士になる貴族の多くは次男や三男といった家を継ぐ予定のない者たちである。彼らは娘しかいない家に婿として迎えられるか、功績を重ねて自分で家を持つか、はたまた身分も気にしない者は平民の女性と結婚したりと様々な選択が出来る。
そんな中で夜会は婿取りをしたいと考えている親を持つご令嬢と出会うには格好の場所といえた。もちろん、そんなことは関係なく普段男がほとんどの騎士団に身を置いている彼等にとって貴重な出会いの場でもある。
簡単に言ってしまえば、大規模なお見合いパーティーと言えた。
そこに警備で参加できないことを嘆く仲間と共に訓練場を後にしようとしたところで、出入口に人が立っていることに気付いた。
アナスタシアよりは薄いが見事な金の髪に黄水晶を思わせる瞳の青年は誰かを探しているのか騎士達が去っていく訓練場の中をキョロキョロと見回している。その姿はどこか先日のアナスタシアの姿を彷彿とさせた。
「すまない、ちょっといいだろうか…」
ロイ達と歩いていると、青年の近くを通り過ぎたフォルティナに彼は声をかけてきた。
年の頃は23、4くらいだろか。騎士団の制服に身を包んでいることから彼がどこかの隊に所属していることはわかる。しかし、所属を示す腕章がないため、どこの隊なのかまではわからなかった。
「どうしました?」
「実は人を探しているのだが…。『フォル』と呼ばれてる騎士はここにいるだろか?」
フォルティナは共に足を止めていたロイと思わず顔を見合わせる。
「ここでフォルと呼ばれているのは私ですが…」
フォルティナは困惑しつつも答える。自分を探していると言う青年に見覚えがなかった。
いや、じっとこっちを見てくる背年の顔にどこか既視感を覚える。
「君が?アナスタシア様の騎士の?」
驚いたようにそう言ってくる青年にフォルティナは頷く。
「そうか…。女性だったのか」
どこかのホッとしたように呟く青年に、あぁ、と、フォルティナはなんとなく状況を理解した。
おそらく、『アナスタシア付の騎士のフォル』と聞いて、男の騎士を想像してたのだろ。女騎士は数が少なくなく、王妃や皇女の近くに控えていることが多く、フォルティナの様に王女付でありながら副隊長まで出世しているのは珍しかった。
なので、目の前の青年も近衛第二部隊の副隊長と聞いて男だと勘違いしていたのだろう。
「確か、アナスタシア様の社交界デビューだろ?」
「え?俺は甥の公爵様の帰還祝いって聞いたぜ?」
あの変な騒動?から2週間。訓練を終えた仲間の騎士たちがそんな会話をしていた。
「なぁ、フォル。実際はどっちなんだ?」
副隊長でもあるフォルティナなら警備の配置などを隊長や他の隊の者とも決めるためにすでに知っているだろう、とロイが彼女のに話を振ってきた。
「どっちも、だね。公爵閣下も帰ってきたし、アナスタシア様のデビュタントも華やかに行いたいし、ってことで一緒にやることに決めたみたいだよ。まぁ、当日うちの隊のほとんどは警備につくから参加は出来ないけどね?」
フォルティナの最後の一言にロイや周りにいた仲間からは、「やっぱりかぁ」と嘆く声が上がる。
そんな仲間に「あたりまえだろ」とフォルティナは呆れたように返す。
近衛騎士は貴族出身者で作られている。基本的に騎士団は実力主義だが、近衛だけはそうもいかない。何故なら、彼らが警護し側近くで使える相手は王族。時と場合によっては他国の王族の目にも晒されるのだ。その為、どうしても剣や魔力の腕だけでなく、それなりの所作も求められるのだ。もちろん、騎士団に入るためには腕だけではなく学力や教養もある程度は問われるので、平民出身の騎士たちもそれなりには身に着けているのだが、やはりそこは、それなり、なのである。
そして、近衛の第一部隊が特に人目につく任務に就くため、彼らは実力だけでなく、家格や教養、そして外見で選ばれている。
ちなみにフォルティナが所属しているのは第二部隊でこちらは第一部隊よりも実力重視の人選になっていた。
騎士になる貴族の多くは次男や三男といった家を継ぐ予定のない者たちである。彼らは娘しかいない家に婿として迎えられるか、功績を重ねて自分で家を持つか、はたまた身分も気にしない者は平民の女性と結婚したりと様々な選択が出来る。
そんな中で夜会は婿取りをしたいと考えている親を持つご令嬢と出会うには格好の場所といえた。もちろん、そんなことは関係なく普段男がほとんどの騎士団に身を置いている彼等にとって貴重な出会いの場でもある。
簡単に言ってしまえば、大規模なお見合いパーティーと言えた。
そこに警備で参加できないことを嘆く仲間と共に訓練場を後にしようとしたところで、出入口に人が立っていることに気付いた。
アナスタシアよりは薄いが見事な金の髪に黄水晶を思わせる瞳の青年は誰かを探しているのか騎士達が去っていく訓練場の中をキョロキョロと見回している。その姿はどこか先日のアナスタシアの姿を彷彿とさせた。
「すまない、ちょっといいだろうか…」
ロイ達と歩いていると、青年の近くを通り過ぎたフォルティナに彼は声をかけてきた。
年の頃は23、4くらいだろか。騎士団の制服に身を包んでいることから彼がどこかの隊に所属していることはわかる。しかし、所属を示す腕章がないため、どこの隊なのかまではわからなかった。
「どうしました?」
「実は人を探しているのだが…。『フォル』と呼ばれてる騎士はここにいるだろか?」
フォルティナは共に足を止めていたロイと思わず顔を見合わせる。
「ここでフォルと呼ばれているのは私ですが…」
フォルティナは困惑しつつも答える。自分を探していると言う青年に見覚えがなかった。
いや、じっとこっちを見てくる背年の顔にどこか既視感を覚える。
「君が?アナスタシア様の騎士の?」
驚いたようにそう言ってくる青年にフォルティナは頷く。
「そうか…。女性だったのか」
どこかのホッとしたように呟く青年に、あぁ、と、フォルティナはなんとなく状況を理解した。
おそらく、『アナスタシア付の騎士のフォル』と聞いて、男の騎士を想像してたのだろ。女騎士は数が少なくなく、王妃や皇女の近くに控えていることが多く、フォルティナの様に王女付でありながら副隊長まで出世しているのは珍しかった。
なので、目の前の青年も近衛第二部隊の副隊長と聞いて男だと勘違いしていたのだろう。
0
お気に入りに追加
194
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる