4 / 30
本編
王子様がきました。
しおりを挟む
「レティ!今の光は一体なんだい!」
そう言いながら勢いよく部屋に入ってきたのはお兄様、とその後ろを私と同じくらいの年頃の少年がお兄様に続いて入ってくる。
廊下で待つように言われたのか、彼の護衛だろうか?少年と言っても差し支えなさそうな青年の姿がチラリと見えた。
「光ですか?」
私はお兄様の言葉を反復する。そしてすぐにそれが何を指しているのかを察した。
どうやら、先ほど瞼越しに感じた光は思ったよりもずっと規模が大きかったようだ。
私としては指先に光が集まっているくらいだと思っていたのに…
「…多分、これのせいですわ。どうせ消えないならせめて見苦しくなければいいかと思いましたの」
そう言って少しだけ寝巻の襟を緩めてお兄様にだけ見えるように傷のあったところを見せる。
「…まだ、自分では確認していませんの。少しはマシになっています?」
傷跡を見たまま固まってしまったお兄様の様子に不安になってきて、私は襟をもとに戻しながら恐る恐る聞いてみた。
…やっぱり、思いつきでやってもダメよね。
けど、これで貴族令嬢としての体面を繕えるならそれに越したことはないと思ったのだけれど…
そしたら、王子様からの求婚も断れるかと思ったのに…
お兄様の反応の無さに、自然に顔は下を向き、しゅん、と俯いてしまう。
「い、いや、そんなことないよ!あんまりにも変わっていて驚いただけだから」
そう言って私の頭を優しく撫でると、「見てごらん」と、ベッドサイドに置かれていた鏡を手渡してくれた。どうやら最初に目覚めたときに使った鏡はずっとそこに置かれていたらしい。
自分の部屋のことなのに全く気付かないあったのは、うん、色々思い出して気が動転してたからってことにしておこう。
そんなことを思いつつ、手渡された鏡を覗き込む。
うん、実はさっきからこっちを見ている少年が気になってもいるんだけど、まずは傷跡がどうなったか確認しないとだしね。この出来次第で断れるかにかかってるんだし。
まぁ、こんな傷一つで第二子とはいえ王子が求婚に来るなんてゲームではそうだったかもしれないけど、現実にあるわけないわよねぇ。
なんて、現実逃避な思考に捕らわれつつ、覗き込んだ鏡に映る肌に思わず目を見張って、お兄様に目を向けた。
「…お兄さま、普通傷跡ってこんな簡単に形を変えられるものですの?それに、それに、目の色が…」
私の言いかけた言葉をお兄様はそっと唇に指を押し当てて遮る。
その時になって、お兄様の後から入ってきた少年の姿を私の方からは見えるけれど、彼からは私の顔が見えないように兄いさまが彼を視線を遮ってくれていることに気付いた。
お兄様は私が気付いたことに気付いたのか優しく頭を撫でながらさり気なく前髪で目を隠した。それからそっと体を離すと後ろを振り返った。
「殿下、申し訳ありませんが妹は先ほど目覚めたばかりですので、今日はご遠慮願えないでしょうか?」
お兄様の『殿下』という言葉にピクリと体が感応する。
まさか、本当に求婚しに来たの?
道理で、お兄様が見えないようにしてくれていたはずだわ。
きっとシスコンなお兄様のことだ、断ってくれていたのだろうが、断り切れなかったといったとこだろう。
いくらお兄様が王太子殿下と仲が良いとは言っても相手は年下でも王族である。臣下の立場になるお兄様としては立場を出されては断りきれないだろう。
まして、うちは公爵家で第二王子と私は同い年、見た目はお兄様と似ているから不細工ってことはないわけで…
彼の婚約者候補の一人に挙げられても元々おかしくはないのである。
それが怪我をさせたという醜聞が原因とはいえ、色んな家から権力闘争を考えつつ他の婚約者を宛がうより、レティーナにしてしまった方が楽というのもあるのだろう。
まして、国王陛下と父であるラナンキュラス公爵は旧知の仲である。
なんでも、学生時代からの仲らしい。
魔力の無い二人が通っていたのは騎士学校らしいが。
なんで、国王陛下が騎士学校に通っていたのか、とか突っ込みたいところも無くはないが、とにかく二人は仲がいいのだけは確かだ。
あ、騎士良いかも。
騎士だったら怪我して当たり前だし、この傷だって気にならなくなるだろうし…
いいな、女騎士。
婚約解消されて、国にいられなくなったとしても剣があれば商隊の護衛とか、傭兵…は無理かもしれないけど、とりあえず職に困ることはないだろう…
なんなら貴族のご婦人やご令嬢の護衛なんて仕事もできるだろうし…
「し、しかし…」
「それに、ご心配には及びません。傷跡はキレイに消えていますから。殿下が責任を感じる必要はありません」
つらつらとそんなことを考えてる間もまた王子様は部屋を出て行っていなかったらしい。
お兄様の背に隠すようにされている私のことが気になるのだろうチラチラとこちらに視線を向けていることは分かった。
「それに、いくら殿下といえども面識のほとんどない女性の部屋に無断で入って、寝起きの令嬢に会わせろ、とはいささか乱暴かと思いますよ?」
「…っ。ラナンキュラス令嬢、今日は失礼いたしました。後日改めて会いにまいります!」
お兄様の言葉に言葉を詰まらせた後、王子様はそれだけ言うとくるりと踵を返して部屋を出て行った。
そして、それを見送るお兄様…。
仮にも相手はこの国の第二王子。
お見送りとかしなくてよろしいんですか?お兄様…。
そう言いながら勢いよく部屋に入ってきたのはお兄様、とその後ろを私と同じくらいの年頃の少年がお兄様に続いて入ってくる。
廊下で待つように言われたのか、彼の護衛だろうか?少年と言っても差し支えなさそうな青年の姿がチラリと見えた。
「光ですか?」
私はお兄様の言葉を反復する。そしてすぐにそれが何を指しているのかを察した。
どうやら、先ほど瞼越しに感じた光は思ったよりもずっと規模が大きかったようだ。
私としては指先に光が集まっているくらいだと思っていたのに…
「…多分、これのせいですわ。どうせ消えないならせめて見苦しくなければいいかと思いましたの」
そう言って少しだけ寝巻の襟を緩めてお兄様にだけ見えるように傷のあったところを見せる。
「…まだ、自分では確認していませんの。少しはマシになっています?」
傷跡を見たまま固まってしまったお兄様の様子に不安になってきて、私は襟をもとに戻しながら恐る恐る聞いてみた。
…やっぱり、思いつきでやってもダメよね。
けど、これで貴族令嬢としての体面を繕えるならそれに越したことはないと思ったのだけれど…
そしたら、王子様からの求婚も断れるかと思ったのに…
お兄様の反応の無さに、自然に顔は下を向き、しゅん、と俯いてしまう。
「い、いや、そんなことないよ!あんまりにも変わっていて驚いただけだから」
そう言って私の頭を優しく撫でると、「見てごらん」と、ベッドサイドに置かれていた鏡を手渡してくれた。どうやら最初に目覚めたときに使った鏡はずっとそこに置かれていたらしい。
自分の部屋のことなのに全く気付かないあったのは、うん、色々思い出して気が動転してたからってことにしておこう。
そんなことを思いつつ、手渡された鏡を覗き込む。
うん、実はさっきからこっちを見ている少年が気になってもいるんだけど、まずは傷跡がどうなったか確認しないとだしね。この出来次第で断れるかにかかってるんだし。
まぁ、こんな傷一つで第二子とはいえ王子が求婚に来るなんてゲームではそうだったかもしれないけど、現実にあるわけないわよねぇ。
なんて、現実逃避な思考に捕らわれつつ、覗き込んだ鏡に映る肌に思わず目を見張って、お兄様に目を向けた。
「…お兄さま、普通傷跡ってこんな簡単に形を変えられるものですの?それに、それに、目の色が…」
私の言いかけた言葉をお兄様はそっと唇に指を押し当てて遮る。
その時になって、お兄様の後から入ってきた少年の姿を私の方からは見えるけれど、彼からは私の顔が見えないように兄いさまが彼を視線を遮ってくれていることに気付いた。
お兄様は私が気付いたことに気付いたのか優しく頭を撫でながらさり気なく前髪で目を隠した。それからそっと体を離すと後ろを振り返った。
「殿下、申し訳ありませんが妹は先ほど目覚めたばかりですので、今日はご遠慮願えないでしょうか?」
お兄様の『殿下』という言葉にピクリと体が感応する。
まさか、本当に求婚しに来たの?
道理で、お兄様が見えないようにしてくれていたはずだわ。
きっとシスコンなお兄様のことだ、断ってくれていたのだろうが、断り切れなかったといったとこだろう。
いくらお兄様が王太子殿下と仲が良いとは言っても相手は年下でも王族である。臣下の立場になるお兄様としては立場を出されては断りきれないだろう。
まして、うちは公爵家で第二王子と私は同い年、見た目はお兄様と似ているから不細工ってことはないわけで…
彼の婚約者候補の一人に挙げられても元々おかしくはないのである。
それが怪我をさせたという醜聞が原因とはいえ、色んな家から権力闘争を考えつつ他の婚約者を宛がうより、レティーナにしてしまった方が楽というのもあるのだろう。
まして、国王陛下と父であるラナンキュラス公爵は旧知の仲である。
なんでも、学生時代からの仲らしい。
魔力の無い二人が通っていたのは騎士学校らしいが。
なんで、国王陛下が騎士学校に通っていたのか、とか突っ込みたいところも無くはないが、とにかく二人は仲がいいのだけは確かだ。
あ、騎士良いかも。
騎士だったら怪我して当たり前だし、この傷だって気にならなくなるだろうし…
いいな、女騎士。
婚約解消されて、国にいられなくなったとしても剣があれば商隊の護衛とか、傭兵…は無理かもしれないけど、とりあえず職に困ることはないだろう…
なんなら貴族のご婦人やご令嬢の護衛なんて仕事もできるだろうし…
「し、しかし…」
「それに、ご心配には及びません。傷跡はキレイに消えていますから。殿下が責任を感じる必要はありません」
つらつらとそんなことを考えてる間もまた王子様は部屋を出て行っていなかったらしい。
お兄様の背に隠すようにされている私のことが気になるのだろうチラチラとこちらに視線を向けていることは分かった。
「それに、いくら殿下といえども面識のほとんどない女性の部屋に無断で入って、寝起きの令嬢に会わせろ、とはいささか乱暴かと思いますよ?」
「…っ。ラナンキュラス令嬢、今日は失礼いたしました。後日改めて会いにまいります!」
お兄様の言葉に言葉を詰まらせた後、王子様はそれだけ言うとくるりと踵を返して部屋を出て行った。
そして、それを見送るお兄様…。
仮にも相手はこの国の第二王子。
お見送りとかしなくてよろしいんですか?お兄様…。
0
お気に入りに追加
2,053
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる