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第九夜
第52話 仮説
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「いってきまーす!」
平日の朝、まほろばに元気な声が響く。
居住棟から飛び出してゆく子どもたちを前に、森谷と三國は安堵の息をついた。
灯里誘拐事件の直後、瞳はひどく泣き乱れていた。自分が彼女を本屋に連れていかなければ──という懺悔である。瞳の責任ではない、と三國が再三説得してもしばらくは飯もろくに喉を通らないようすだったが、オーナーや施設長の聖子の支え、何より灯里の元気なすがたを見るうち少しずつ立ち直ってきたところである。
良かったなァ、と森谷がしみじみつぶやいた。
「とりあえず事件解決して」
「これ、解決って言えますかィ。けっきょく六曜会の本来の目的もわかんねえままですぜ。おまけにあの子の、灯里の両親の事件だって黒須景一の証言だけじゃどうもパッとしねえし」
「ああ、その件については」
森谷の顔がわずかに曇る。
「景一たちにどういうこっちゃか聞いてきた」
「景一たち、ってえと」
「オレ、景一の親戚やねん」
「え?」
突然のカミングアウトに三國はいっしゅんぽかんとしたが、
「へえ」
と、想像よりはるかに冷静な返答がきた。
「へえって──興味ないなぁ」
「そんなこたァねえですが、そんな蒼い顔されて言われたら突っ込むにも突っ込みづれえや。まあぶっちゃけ“へえ”って感想しか出なかったのもありますけど」
「やっぱり興味ないやん! なんやねん、必死こいて自分の汚点隠してきたオレがバカみたいやん」
「汚点ってこたァねえでしょや。黒須一族っつったら、今時みんながどよめきますぜ」
「あんなもん、商人のツラかぶった暴力団みたいなもんやで。いやそら犯罪しとるって意味ちゃうけどな。まあ、銃刀法違反はもしかしたら抵触しとるかもしらんが」
「それで──黒須の親戚さん方は、なんと仰っていたんで?」
いまのぼやきは、聞かなかったことにするらしい。
三國に話をふられた森谷が先日の記憶を思いかえした。
────。
黒須景一の病室へ見舞に行った。
まだ恭太郎ら他者には、面会の許可を出していなかったとき。森谷が病室に入ると患者である景一のほかは護衛役の岩壁と、従姉の千歳がおなじく見舞いに駆けつけていた。
長らく顔を合わせていなかっただけに森谷は多少動揺したが、彼女はかつて仲の良かった頃に向けてきた笑みそのままをこちらに見せて、ハグしてきた。
「おやシゲ、久しぶりだね」
「ちー姉やん。相変わらずの別嬪っぷりは変わらんなあ」
「なに言ってる。おまえが全然本家に寄り付かないもんだから、すっかり老け込んじまった。わるかったね、私とは顔合わせたくなかっただろうに」
「いや──ちー姉やんはええねん。次期当主として接せられるとめんどいけどな。むしろ今回の事件については、姉やんもいろいろ知ってはんねやろ。教えてくれへんか」
「────」
千歳はちらりと景一を見る。
ベッドの上で寝転がる彼はまだすこし青白い顔をしていたが、森谷と目が合うやにっこりとハンサムな笑みを浮かべた。昔からどこか刹那的で危うい印象を持たせる男であったが、けが人というデバフもあってかさらに儚げである。
「ようシゲ。わるかったな、こんな有様で言っても信じてもらえないだろうけれど、おまえのめいわくにはならんようにしたかったよ──」
「拘置所に入れられた時点でもう手遅れやっちゅーねん。もうええわ、さいあく警察クビんなったら姉やんに仕事斡旋してもらうさかい」
「なんでおまえがクビになるのさ」
と、千歳がふっと口角をあげた。
「あんな派手に銃撃戦やっといてそらないやろ。ケイちゃん、銃刀法違反やったんちゃうんか。身内に犯罪者おったら警察いられへんねんで」
「その銃は? 警察は回収したのか。硝煙反応は? 調べたの?」
「いや──」
それを言われると、森谷は困った。
なぜなら景一を搬送する時点で、応戦に使用したであろう拳銃はどこにもなかったからである。倉庫内を捜索すれど、出てきたのは白服集団が囲っていたであろう武器装備ばかりで、黒須側が銃を使用した形跡はどこにもなかった。
「おい姉やん──」
「証拠もないのに銃刀法違反だなんて、ひどい話だねえ。それでも天下の警察様か」
「姉やんの仕業か」
「人をうたがうのなら証拠を持ってくるんだね。どのみち景一は罪に問われないし、おまえがクビになることもない。安心して事件を追っかけておくれよ」
「────」
おそろしい家である。
いや、むしろこの女が元凶か──。
とはいえ、いまは自身の進退を気にしている場合ではない。このふたりが掴んでいる情報を少しでも聞き出すことが、まだ警察官である自身の最大の責務だ。森谷はどかりと椅子に腰かけた。
「まず、景一が狙われた小宮山夫妻殺人事件について。あれは──結局どういうことや。お前はホテルロビーで小宮山家族と知り合って、そこから部屋を替えようって話をした仲やった。お前を追ってきた六曜会は、黒須景一の部屋やとおもって入ったところに部屋を替えた小宮山夫妻がいたために、口封じにころされた、と。そういうことで確定なんか」
「ちょっとちがう」
即座に千歳がつぶやいた。
「いや、ちょっとでもないか。今回の被害者となった小宮山夫妻は、こっちの調べじゃクロだ」
「は?」
「彼らは六曜会──あるいは今回生き残った金井のような調査員的な立ち位置だろう。景一と接触を図ったのも暗殺の命を受けていたからだとにらんでいる」
「こ、根拠は!」
「まずは聞け。しかしながら何らかの理由によって景一への暗殺計画から小宮山夫妻が手を引いた。それに気づいた元締めが、裏切者排除のために六曜会を寄越した──と、そんなところだろう。小宮山をころしたついでに景一をやらなかったのは、単純に景一が不在だったからだろうな。銃を使用してころしをした以上、いつだれが駆けつけてもおかしくないからな」
「そ──それやと、小宮山夫妻が、灯里の両親が殺し屋っちゅうことになるやんか」
「そうだよ」
ふいに景一が口を挟む。疲れたきった声色であった。
「そうでなきゃ、俺だってあんなだんまりはしなかった」
「え?」
「だってそうだろ、小宮山夫妻が殺し屋の一味なんて──灯里が聞いたらどう思う」
「…………」
森谷は口ごもる。
だから、身代わりに捕まろうとおもったというのだろうか。だとしたら、この男は守り方を間違えている。こちらの表情から読み取ったか、千歳は「そうさな」とほくそ笑んだ。
「とはいえ、あの娘がそういう教育を受けていたとは到底おもえないがな。なんせ親の死体を見ただけで声が出なくなっちまうんだから」
それはそうだ。
困惑のあまり押し黙る森谷に、千歳は畳みかけるようにつづけた。
「つぎにバラバラの件。あれは奴らの趣味だな」
「しゅ、趣味⁉」
「殺人が、って話じゃない。奴らは何かしら大きな計画を持っていると見てる。その計画に向かうための準備運動だ。今回やっていたのは反魂蘇生だってんだろ? 奴らは十年以上前からそうだ。どうも死生についてのこだわりを持ってる」
「──金井が言うには、調査員になれるのは大切な人間を亡くした者限定やっちゅう話やった、けど」
「六曜会と調査員たち──R.I.Pか、そいつらの元締めがたいそうな野望をかかげていらっしゃるのだろうよ。おっそろしいねえ。頭領はいっさい顔を出さずに野望実現のため殺人三昧ときた」
「山下朋子は? 彼女はちゃうやろ、両親ご兄妹もご存命やで!」
「だから腹の子を意図的に流したのだろ。闇バイトなんかで素人抜いて、暴挙を経てまで」
「ほんならなんで山下朋子やったんや。不妊治療してはったんはほかにも」
「偶々だろう。あの病院が目をつけられて、たまたま山下朋子が選ばれた。それだけのこと」
「でも──ふだんそんな素振りはなかった、て旦那はんも」
「“暗示”は奴らの十八番だよ。鍵があったはずだ、彼女を目覚めさせるための──キーワードか何かがね」
「────」
そういえば、事件後に聞き取りをしたときに恭太郎が妙なことを言っていた。
──Rest in Peaceって。
──奴らの合言葉なの?
──皮肉だな。
まさか。いや、わからない。
話を変えよう。一番聞きたいのはそこではない。
ほんなら、と森谷は拗ねた子どものような目を千歳に向けた。
「その元締めってのはなんやねん。姉やんが小宮山夫妻に疑惑かける以上、そこらへんもなんか掴んどるんちゃうんか」
次第に森谷の声色が尖る。
しかし千歳は表情ひとつ変えはしなかった。
「まだ調査と仮説段階だからなんとも言えん。ただ今回の事件できな臭いところがなかったか」
「え?」
「──お前んとこの女刑事さん、妙に勘が良いようだね。今度紹介しておくれよ」
「女刑事──綾ちゃんのことか? なんで急に、そん」
言いかけてやめた。
森谷の脳裏によぎった記憶。
あのとき彼女は言っていた。
──まほろばの経営母体は知ってる?
──被害者の小宮山夫妻も……傘下の会社に勤めてたのよ。
──ただでさえR.I.Pとプロの犯行って共通点が見えていた事件同士。
──さらなる共通点が出てきたのって、どう思うか聞きたくて。
──そりゃ母体がでかいから必然的に可能性はあがるけど……。
「経営母体──有栖川?」
「まだ仮説だが」
千歳がゾッとするような笑みを浮かべた。
「少なくとも無関係とは、言いがたいな」
平日の朝、まほろばに元気な声が響く。
居住棟から飛び出してゆく子どもたちを前に、森谷と三國は安堵の息をついた。
灯里誘拐事件の直後、瞳はひどく泣き乱れていた。自分が彼女を本屋に連れていかなければ──という懺悔である。瞳の責任ではない、と三國が再三説得してもしばらくは飯もろくに喉を通らないようすだったが、オーナーや施設長の聖子の支え、何より灯里の元気なすがたを見るうち少しずつ立ち直ってきたところである。
良かったなァ、と森谷がしみじみつぶやいた。
「とりあえず事件解決して」
「これ、解決って言えますかィ。けっきょく六曜会の本来の目的もわかんねえままですぜ。おまけにあの子の、灯里の両親の事件だって黒須景一の証言だけじゃどうもパッとしねえし」
「ああ、その件については」
森谷の顔がわずかに曇る。
「景一たちにどういうこっちゃか聞いてきた」
「景一たち、ってえと」
「オレ、景一の親戚やねん」
「え?」
突然のカミングアウトに三國はいっしゅんぽかんとしたが、
「へえ」
と、想像よりはるかに冷静な返答がきた。
「へえって──興味ないなぁ」
「そんなこたァねえですが、そんな蒼い顔されて言われたら突っ込むにも突っ込みづれえや。まあぶっちゃけ“へえ”って感想しか出なかったのもありますけど」
「やっぱり興味ないやん! なんやねん、必死こいて自分の汚点隠してきたオレがバカみたいやん」
「汚点ってこたァねえでしょや。黒須一族っつったら、今時みんながどよめきますぜ」
「あんなもん、商人のツラかぶった暴力団みたいなもんやで。いやそら犯罪しとるって意味ちゃうけどな。まあ、銃刀法違反はもしかしたら抵触しとるかもしらんが」
「それで──黒須の親戚さん方は、なんと仰っていたんで?」
いまのぼやきは、聞かなかったことにするらしい。
三國に話をふられた森谷が先日の記憶を思いかえした。
────。
黒須景一の病室へ見舞に行った。
まだ恭太郎ら他者には、面会の許可を出していなかったとき。森谷が病室に入ると患者である景一のほかは護衛役の岩壁と、従姉の千歳がおなじく見舞いに駆けつけていた。
長らく顔を合わせていなかっただけに森谷は多少動揺したが、彼女はかつて仲の良かった頃に向けてきた笑みそのままをこちらに見せて、ハグしてきた。
「おやシゲ、久しぶりだね」
「ちー姉やん。相変わらずの別嬪っぷりは変わらんなあ」
「なに言ってる。おまえが全然本家に寄り付かないもんだから、すっかり老け込んじまった。わるかったね、私とは顔合わせたくなかっただろうに」
「いや──ちー姉やんはええねん。次期当主として接せられるとめんどいけどな。むしろ今回の事件については、姉やんもいろいろ知ってはんねやろ。教えてくれへんか」
「────」
千歳はちらりと景一を見る。
ベッドの上で寝転がる彼はまだすこし青白い顔をしていたが、森谷と目が合うやにっこりとハンサムな笑みを浮かべた。昔からどこか刹那的で危うい印象を持たせる男であったが、けが人というデバフもあってかさらに儚げである。
「ようシゲ。わるかったな、こんな有様で言っても信じてもらえないだろうけれど、おまえのめいわくにはならんようにしたかったよ──」
「拘置所に入れられた時点でもう手遅れやっちゅーねん。もうええわ、さいあく警察クビんなったら姉やんに仕事斡旋してもらうさかい」
「なんでおまえがクビになるのさ」
と、千歳がふっと口角をあげた。
「あんな派手に銃撃戦やっといてそらないやろ。ケイちゃん、銃刀法違反やったんちゃうんか。身内に犯罪者おったら警察いられへんねんで」
「その銃は? 警察は回収したのか。硝煙反応は? 調べたの?」
「いや──」
それを言われると、森谷は困った。
なぜなら景一を搬送する時点で、応戦に使用したであろう拳銃はどこにもなかったからである。倉庫内を捜索すれど、出てきたのは白服集団が囲っていたであろう武器装備ばかりで、黒須側が銃を使用した形跡はどこにもなかった。
「おい姉やん──」
「証拠もないのに銃刀法違反だなんて、ひどい話だねえ。それでも天下の警察様か」
「姉やんの仕業か」
「人をうたがうのなら証拠を持ってくるんだね。どのみち景一は罪に問われないし、おまえがクビになることもない。安心して事件を追っかけておくれよ」
「────」
おそろしい家である。
いや、むしろこの女が元凶か──。
とはいえ、いまは自身の進退を気にしている場合ではない。このふたりが掴んでいる情報を少しでも聞き出すことが、まだ警察官である自身の最大の責務だ。森谷はどかりと椅子に腰かけた。
「まず、景一が狙われた小宮山夫妻殺人事件について。あれは──結局どういうことや。お前はホテルロビーで小宮山家族と知り合って、そこから部屋を替えようって話をした仲やった。お前を追ってきた六曜会は、黒須景一の部屋やとおもって入ったところに部屋を替えた小宮山夫妻がいたために、口封じにころされた、と。そういうことで確定なんか」
「ちょっとちがう」
即座に千歳がつぶやいた。
「いや、ちょっとでもないか。今回の被害者となった小宮山夫妻は、こっちの調べじゃクロだ」
「は?」
「彼らは六曜会──あるいは今回生き残った金井のような調査員的な立ち位置だろう。景一と接触を図ったのも暗殺の命を受けていたからだとにらんでいる」
「こ、根拠は!」
「まずは聞け。しかしながら何らかの理由によって景一への暗殺計画から小宮山夫妻が手を引いた。それに気づいた元締めが、裏切者排除のために六曜会を寄越した──と、そんなところだろう。小宮山をころしたついでに景一をやらなかったのは、単純に景一が不在だったからだろうな。銃を使用してころしをした以上、いつだれが駆けつけてもおかしくないからな」
「そ──それやと、小宮山夫妻が、灯里の両親が殺し屋っちゅうことになるやんか」
「そうだよ」
ふいに景一が口を挟む。疲れたきった声色であった。
「そうでなきゃ、俺だってあんなだんまりはしなかった」
「え?」
「だってそうだろ、小宮山夫妻が殺し屋の一味なんて──灯里が聞いたらどう思う」
「…………」
森谷は口ごもる。
だから、身代わりに捕まろうとおもったというのだろうか。だとしたら、この男は守り方を間違えている。こちらの表情から読み取ったか、千歳は「そうさな」とほくそ笑んだ。
「とはいえ、あの娘がそういう教育を受けていたとは到底おもえないがな。なんせ親の死体を見ただけで声が出なくなっちまうんだから」
それはそうだ。
困惑のあまり押し黙る森谷に、千歳は畳みかけるようにつづけた。
「つぎにバラバラの件。あれは奴らの趣味だな」
「しゅ、趣味⁉」
「殺人が、って話じゃない。奴らは何かしら大きな計画を持っていると見てる。その計画に向かうための準備運動だ。今回やっていたのは反魂蘇生だってんだろ? 奴らは十年以上前からそうだ。どうも死生についてのこだわりを持ってる」
「──金井が言うには、調査員になれるのは大切な人間を亡くした者限定やっちゅう話やった、けど」
「六曜会と調査員たち──R.I.Pか、そいつらの元締めがたいそうな野望をかかげていらっしゃるのだろうよ。おっそろしいねえ。頭領はいっさい顔を出さずに野望実現のため殺人三昧ときた」
「山下朋子は? 彼女はちゃうやろ、両親ご兄妹もご存命やで!」
「だから腹の子を意図的に流したのだろ。闇バイトなんかで素人抜いて、暴挙を経てまで」
「ほんならなんで山下朋子やったんや。不妊治療してはったんはほかにも」
「偶々だろう。あの病院が目をつけられて、たまたま山下朋子が選ばれた。それだけのこと」
「でも──ふだんそんな素振りはなかった、て旦那はんも」
「“暗示”は奴らの十八番だよ。鍵があったはずだ、彼女を目覚めさせるための──キーワードか何かがね」
「────」
そういえば、事件後に聞き取りをしたときに恭太郎が妙なことを言っていた。
──Rest in Peaceって。
──奴らの合言葉なの?
──皮肉だな。
まさか。いや、わからない。
話を変えよう。一番聞きたいのはそこではない。
ほんなら、と森谷は拗ねた子どものような目を千歳に向けた。
「その元締めってのはなんやねん。姉やんが小宮山夫妻に疑惑かける以上、そこらへんもなんか掴んどるんちゃうんか」
次第に森谷の声色が尖る。
しかし千歳は表情ひとつ変えはしなかった。
「まだ調査と仮説段階だからなんとも言えん。ただ今回の事件できな臭いところがなかったか」
「え?」
「──お前んとこの女刑事さん、妙に勘が良いようだね。今度紹介しておくれよ」
「女刑事──綾ちゃんのことか? なんで急に、そん」
言いかけてやめた。
森谷の脳裏によぎった記憶。
あのとき彼女は言っていた。
──まほろばの経営母体は知ってる?
──被害者の小宮山夫妻も……傘下の会社に勤めてたのよ。
──ただでさえR.I.Pとプロの犯行って共通点が見えていた事件同士。
──さらなる共通点が出てきたのって、どう思うか聞きたくて。
──そりゃ母体がでかいから必然的に可能性はあがるけど……。
「経営母体──有栖川?」
「まだ仮説だが」
千歳がゾッとするような笑みを浮かべた。
「少なくとも無関係とは、言いがたいな」
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