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ダンジョンからの脱出
第75話 1匹だけ
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私の重装鎧ともりもりさんの神王の鎧はかなりの強度がある。
しかし、お兄ちゃんの鎧にはヒビが入る。
サソリの針がお兄ちゃんを突き刺そうと迫る。
かばおうとしたもりもりさんの手から大鎌が落ちる。
私は二人を突き飛ばして、あいだに入った。
もりもりさんが落としたサタンの大鎌を手にする。
天井付近を飛ぶのはユカリスさんのドローン。一瞬で、目で合図を送る。
「お兄ちゃん、もりもりさん、ありがとう。1匹くらいなら、倒せる」
「でも……」
巨体で二人の前に立つが、後ろの階段には別のモンスターが回り込んでいた。すでに囲まれてしまっている。
「つかまるのじゃ!」
ユカリスさんのドローンが一気に下降してくる。そこにそれぞれ掴まり、上へと引き上げられる。
お兄ちゃんともりもりさんは天井高く上がった。私は重いから高さがぎりぎりだ。
3人の足元には大量のモンスターがいる。
ワニやトカゲなど地を這うモンスターばかりだったので、攻撃はなんとか届かない。
「ギガちゃんは重いのじゃ……………………」
「ユカちん……、なんとかお願い……」
「ぎりぎりなのじゃ……」
私はもりもりさんが落としたサタンの大鎌を握っている。
「1匹だけ倒す。手伝ってほしい」
「1匹ならなんとかなるじゃろうが、どうするのじゃ?」
「お願い。私を信じて」
お兄ちゃんともりもりさんは説得し、219階層へ上がってもらう。安全地帯へと移動し、220階層には私とユカリスさんのドローンのみとなった。
「デバイスで解析をお願い」
「わかったのじゃ」
ユカリスさんの声だけがドローンのスピーカーから響く。
「モンスターの数を割り出してもらっていい?」
「現在は9981匹じゃ」
「レアアイテムのドロップ確率は?」
「通常であれば0.002%。だが、ギガちゃんなら0.2%まで跳ね上がるのじゃ」
「まず、全部のモンスターをナンバリング。できるかな?」
「したのじゃ。No.1からNo.9981までいるのじゃ」
「今から指定するモンスターを倒す。アイテム狙いで」
「そんなこと…………。できるわけ……」
少しの間を開けて、ユカリスさんの返答がくる。
「わかったのじゃ」
おそらく1匹だけなら倒すことができる。
覚醒の実ねらいだ。
私は覚醒レベルを4にする。
攻略の鍵はそれしかない。
目を閉じる。
覚醒の実。
ただそれだけを狙う。
使うのはダンジョンシミュレーター……
これから起こることを事前に体験することができる。
勝利か敗北か。
その感覚はしっかりと残るはずだ。
ダンジョンシミュレーター……
できるのだろうか?
こんなことは初めてだ。同時に複数起動する。
ダンジョンシミュレーターの多重同時起動……
ダンジョンシミュレーターはコンピューターによる仮想体験のようなものだ。ならば、複数のパターンを同時に計算することもできるはずだ。
現代の科学技術は進歩している。そしてダンジョンはそれを遥かに凌駕する技術で作られているはずだ。
覚醒スキルとしてダンジョンシミュレーターの能力があるのなら、複数の人間が同時に使うこともあるはずだ。
スキルがダンジョンの計算処理であるのなら、複数同時に使うことなんて普通に有り得る。
今は私一人が複数起動しようというのだ。
同じことではないか。
技術的には可能なはずだ。
私は同時に起動し、それぞれ1体の敵を撃破していく。
そして、上手くいった感覚だけを実行に移す。
高い集中力が必要だ。
できる。
絶対にできると信じる。
覚悟を決め、シミュレーターを起動……
そして、私は仮想の未来へと足を踏み入れる。
何人もの私が、それぞれ違うモンスターを倒していく。
No.1撃破、No.2撃破……、No.1202撃破、No.2612撃破、No3515.撃破……No.4520撃破……No.5525……
脳にとんでもない負荷がかかる。だが、そんなことをかまっている余裕はない。
私は現実に引き戻される。
つぶっていた目をカッと見開く。
「そこ!! No.7642!」
「わかったのじゃ!!」
ドローンは飛ぶ。
私とユカリスさんの息はぴったりだった。
一匹のサソリ。
ナンバリングされたそのモンスターの頭上で、ドローンは私を落下させる。
落下のエネルギーも加え、サタンの大鎌を突き立てた。
サソリは「ぐえっ」と声を出し、首を上げながら絶命する。
アイテムを獲得。
――――――――――――――――――――――
『EXR覚醒の種』
対象の覚醒レベルを1上げるとともに、
覚醒ユニークスキルが開花する。
――――――――――――――――――――――
ダンジョンデバイスを使って、即座に使用。
私は覚醒レベル4になる。
だが、私の目論見とは違っていた。
てっきりダンジョンシミュレーターの能力が上がり、記憶が残るようになるものと思っていた。未来を知る能力でも手に入るのだと思い込んでいたのだ。
そうではなかった。
獲得した覚醒スキル。
新しいスキルは……。
しかし、お兄ちゃんの鎧にはヒビが入る。
サソリの針がお兄ちゃんを突き刺そうと迫る。
かばおうとしたもりもりさんの手から大鎌が落ちる。
私は二人を突き飛ばして、あいだに入った。
もりもりさんが落としたサタンの大鎌を手にする。
天井付近を飛ぶのはユカリスさんのドローン。一瞬で、目で合図を送る。
「お兄ちゃん、もりもりさん、ありがとう。1匹くらいなら、倒せる」
「でも……」
巨体で二人の前に立つが、後ろの階段には別のモンスターが回り込んでいた。すでに囲まれてしまっている。
「つかまるのじゃ!」
ユカリスさんのドローンが一気に下降してくる。そこにそれぞれ掴まり、上へと引き上げられる。
お兄ちゃんともりもりさんは天井高く上がった。私は重いから高さがぎりぎりだ。
3人の足元には大量のモンスターがいる。
ワニやトカゲなど地を這うモンスターばかりだったので、攻撃はなんとか届かない。
「ギガちゃんは重いのじゃ……………………」
「ユカちん……、なんとかお願い……」
「ぎりぎりなのじゃ……」
私はもりもりさんが落としたサタンの大鎌を握っている。
「1匹だけ倒す。手伝ってほしい」
「1匹ならなんとかなるじゃろうが、どうするのじゃ?」
「お願い。私を信じて」
お兄ちゃんともりもりさんは説得し、219階層へ上がってもらう。安全地帯へと移動し、220階層には私とユカリスさんのドローンのみとなった。
「デバイスで解析をお願い」
「わかったのじゃ」
ユカリスさんの声だけがドローンのスピーカーから響く。
「モンスターの数を割り出してもらっていい?」
「現在は9981匹じゃ」
「レアアイテムのドロップ確率は?」
「通常であれば0.002%。だが、ギガちゃんなら0.2%まで跳ね上がるのじゃ」
「まず、全部のモンスターをナンバリング。できるかな?」
「したのじゃ。No.1からNo.9981までいるのじゃ」
「今から指定するモンスターを倒す。アイテム狙いで」
「そんなこと…………。できるわけ……」
少しの間を開けて、ユカリスさんの返答がくる。
「わかったのじゃ」
おそらく1匹だけなら倒すことができる。
覚醒の実ねらいだ。
私は覚醒レベルを4にする。
攻略の鍵はそれしかない。
目を閉じる。
覚醒の実。
ただそれだけを狙う。
使うのはダンジョンシミュレーター……
これから起こることを事前に体験することができる。
勝利か敗北か。
その感覚はしっかりと残るはずだ。
ダンジョンシミュレーター……
できるのだろうか?
こんなことは初めてだ。同時に複数起動する。
ダンジョンシミュレーターの多重同時起動……
ダンジョンシミュレーターはコンピューターによる仮想体験のようなものだ。ならば、複数のパターンを同時に計算することもできるはずだ。
現代の科学技術は進歩している。そしてダンジョンはそれを遥かに凌駕する技術で作られているはずだ。
覚醒スキルとしてダンジョンシミュレーターの能力があるのなら、複数の人間が同時に使うこともあるはずだ。
スキルがダンジョンの計算処理であるのなら、複数同時に使うことなんて普通に有り得る。
今は私一人が複数起動しようというのだ。
同じことではないか。
技術的には可能なはずだ。
私は同時に起動し、それぞれ1体の敵を撃破していく。
そして、上手くいった感覚だけを実行に移す。
高い集中力が必要だ。
できる。
絶対にできると信じる。
覚悟を決め、シミュレーターを起動……
そして、私は仮想の未来へと足を踏み入れる。
何人もの私が、それぞれ違うモンスターを倒していく。
No.1撃破、No.2撃破……、No.1202撃破、No.2612撃破、No3515.撃破……No.4520撃破……No.5525……
脳にとんでもない負荷がかかる。だが、そんなことをかまっている余裕はない。
私は現実に引き戻される。
つぶっていた目をカッと見開く。
「そこ!! No.7642!」
「わかったのじゃ!!」
ドローンは飛ぶ。
私とユカリスさんの息はぴったりだった。
一匹のサソリ。
ナンバリングされたそのモンスターの頭上で、ドローンは私を落下させる。
落下のエネルギーも加え、サタンの大鎌を突き立てた。
サソリは「ぐえっ」と声を出し、首を上げながら絶命する。
アイテムを獲得。
――――――――――――――――――――――
『EXR覚醒の種』
対象の覚醒レベルを1上げるとともに、
覚醒ユニークスキルが開花する。
――――――――――――――――――――――
ダンジョンデバイスを使って、即座に使用。
私は覚醒レベル4になる。
だが、私の目論見とは違っていた。
てっきりダンジョンシミュレーターの能力が上がり、記憶が残るようになるものと思っていた。未来を知る能力でも手に入るのだと思い込んでいたのだ。
そうではなかった。
獲得した覚醒スキル。
新しいスキルは……。
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