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第32話 ガリュウの捜索会議

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 俺達はすっかり回復し、場所を移動して会議室のような部屋で話し合っていた。餓死しかけた俺とラミイ、エミリスさんが並んでソファーに座り、そしてミミカとフィーネが並んで座っている。

 フィーネの正体はここにいるものには知られているので、完全にゴブリンの格好だ。ゴブリンなんだから裸でもいいように思うのだが、上下の服はちゃんと身に着けている。

 この場で俺はミミカ・ドミニオンに所属することなった。とは言っても現在のメンバーはミミカ、ラミイと俺の三人だけだ。

 ドミニオンには転生人しか所属できない決まりなので、ゴブリンであるフィーネとこの世界の王国騎士であるエミリスさんは入ることができない。それでも二人は俺達に協力してくれると言う。

 実際問題としてドミニオンは崩壊しているに等しいから二人を加えても良さそうなものだ。だがミミカはドミニオンの存在意義は、これからこの世界に来る転生人の秩序維持のためにあるべきで、転生人の横暴な振る舞いを防止する意味合いもあるのだと主張する。

 元々この世界の住人であるフィーネやエミリスさんをドミニオンのルールで縛る必要もないし、権利もないと言う。

 最初にこういった話をしたのだが、当面の俺達の課題は組織をどうこうすることではない。

 世界のどこかにいるかもしれない他の転生人が再び捕らえられ、あのような実験の被害にあうかもしれない。少なくとも犯人は今回の実験の結果を知らないのだ。

 犯人が同じことを繰り返すことは容易に想像できる。

 まずは実行犯の可能性が高いガリュウの捜索と生死の確認がなによりの急務だった。

「私とラミイちゃんで目立った行動を取ればガリュウが接触してくる、そう考えたのですが何ヶ月も何の反応もなかったのです。転生人がこの世界に来た時にすぐに私達のことを見つけてくれるという期待もありました」

 ミミカはそう話す。ミミカの目論見通り、俺はこの世界に来てすぐにミミカを見つけることができたわけだ。

「私たちの作戦で釣れたのがマヒロさんだけやったなんてなあ。他に転生人はおらんかも知れん」

 ラミイはすっかりくつろいでだらしない格好でソファに座っている。侍女として振る舞うラミイと素のラミイとではかなり落差が激しいと感じた。

「なるほど、ミミカ殿とラミイ殿はずっとガリュウを探していたのだな。そのための聖女としての活動なのか」

 エミリスさんは腕組みをして頷きながら聞いている。

「ええ、ガリュウと転生人とその両方に発見してもらうためです。ガリュウの手がかりが全く無く、手詰まり状態でしたから」

「まあ、それは半分言い訳で、ミミカちゃんはアイドル活動を楽しんでおったけどな」

 ラミイがけたけたと笑っていた。

「ラミイちゃんだって楽しんでたじゃない。家が厳しかったせいでアイドルのコンサートとか行けなかったからって。歌詞を書いたのもラミイちゃんだし」

 あのセンスの欠片もない、くらくらするような歌詞はラミイが書いたのか……。ラミイに視線を送ると誇らしげな顔をこちらに向けてきた。「いい詩やったろ?」とでも言いたげな顔だった。

「まあなぁ。家にいた時は窮屈やったから、ここでの生活は楽しかったなぁ」

「初めてあった時のラミイちゃんはお行儀が良かったよね。良家のお嬢様って感じで」

「実際そういう風に育てられたからなぁ。まあ自分の人生が全部演技しとったみたいで、こっちに来たら楽やわぁ」

 姿勢が悪く、ソファーからずるずると滑り落ちそうになるラミイを見て、俺は呆れてしまう。

「こっちが本当のラミイさんなのか。あのシャンとしたラミイさんは演技だったってわけか」

「まあ、両方ともほんとの私やとおもうけどな」

 ラミイはにやりと笑った。

「あと、もうラミイでええで。『さん』なんかつけんで。マヒロのこともマヒロって呼ぶわ」

「じゃあ私もマヒロって呼ぶね」

 ミミカもラミイに同調してそう言った。

「わたしもマヒロって呼ぶね」

 元から「マヒロ」と呼んでいるフィーネもそれに合わせた。だが、エミリスさんはその気はないようだ。

「まあ、私は『少年』は少年と呼ばせてもらうがな。ところで話を戻すが、ガリュウの捜索の件なんだがな、ガリュウがすでに死亡しているということはないのか?」

 エミリスさんの発言ももっともだった。ガリュウがどこにもいないということはすでにこの世にいない可能性すらある。

「それはないと思うのです。一万五千種類以上のスキルを持っている以上、誰かに殺されるなんて考えにくいですし、まさか自殺とか自然死の可能性もなくはないですが……。その場合は大量のスキル玉を残すでしょうし、そうなれば騒ぎにならないはずがないですから」

 答えたのはミミカではなくラミイだった。いつのまにか口調を戻し、背筋を伸ばしてソファーに座り直していた。エミリスさんと話すときは侍女として振る舞うつもりらしい。

「でもどこにも手がかりがないのも確かです。私とラミイちゃんが何ヶ月も探しているのですから」

 そのミミカの発言に予想外の提案をしたのがフィーネだった。

「お父様に聞いてみるのはどうかな? わたしのお父様は何か知っているかも」

 その場にいた全員が一斉にフィーネに顔を向けた。フィーネはミミカを見据えて真剣な顔つきをしていた。
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