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そこは1500年後の世界
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・あらすじとプロローグと1話
・SF的BL恋愛ファンタジー、みたいな
・銃火器ありーの魔法は無しーです
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あらすじ
目が覚めたら世界が一度滅びかけたらしい。
なんか俺の記憶から1500年たってるらしいんだけど……SFの世界かよっ……!
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0話*プロローグ
「っこの変態! 俺に触んじゃねぇ!」
「ふふ、元気だなぁ……僕の天使。何も怖くないからね。あぁ、固定している箇所が擦れちゃうからそんなに動こうとしないで?
当て布でもしたら良かったなぁ……綺麗な肌が赤くなってるよ……ごめんね。
大丈夫だよ。君は何もしないで僕といつまでも一緒にいてくれたらいいだけなんだから。ね。」
身体を拘束されている俺の頬を、気持ち悪いことを言いながらうっとりとした顔で撫ぜる変質者。
四肢はXのように開かされ台の上で固定され、手首、二の腕、腿、足首のあたりでガッチリと拘束具をつけられている。
胴部分を動かそうとしても固定されているようでビクともしない。
唯一動かすことができるのは締まらないようにか緩く固定されている首くらいだが、それも軽く左右に振れ周りを伺うことができる程度で足元を見ようと少し顔を上げるだけでも喉に食い込んで苦しくなるためほとんど動くことはできない。
唯一の救いは衣服に多少の乱れはあっても一枚足りとも脱がされていなそうなことだろうか。
固定されている台は病院にありそうな手術台のような無機質な物で、動こうとしてるからかステンレスのような硬い台がグリグリと身体にあたり痛みを感じる。
少し視界を動かせば見える範囲……部屋の中には、未来的な医療装置のようなものが置いてある。SFとかでありそうな医療装置みたいな感じで、斜めに立て掛けるように設置されていて周りにはごちゃごちゃとコードやら何やら、俺が見ても何が何だか分からないが色々繋がっているようだ。
それ以外部屋には何もなく、テニスコート二つ分くらいありそうに広い部屋は無駄にスペースが余っていた。
コンクリートの打ちっ放しのような無機質な壁に医療装置のような謎の機械、拘束具がついたシンプルな台。そしてそこに拘束された俺とその目の前には白衣をきた高身長でイケメン……だが、青白い顔をうっとりさせてトリップしてそうな表情を浮かべる男。普通に気持ち悪い。イケメンはどんな顔してもイケメン、とか絶対嘘だ。気持ち悪い。
ほとんど動くことが出来ないほどガッチリと拘束されている現状は意味がわからなすぎて恐怖以外の何物でもない。
大学帰りにちょっと1人になったタイミングでいきなり何かで口を塞がれたと思ったら気付いたらここだったし……なんか嗅がされて気絶させられて連れてこられたとか、ってことか?
「離せよ、このっ誘拐犯が! なんなんだてめぇは!? ここどこだよ!?」
「やだなぁ、誘拐犯だなんて……僕は君のことが大好きなだけだよ? 橘雅貴くん。
君を一目見たあの日から、毎日毎日毎日毎日毎日毎日……研究に研究を重ねてやっと成功したんだ……。これで毎日美しい君と一緒にいることが出来るんだよ……ああ、なんて素晴らしいんだ……。
これで……遠くから君を眺めるだけの日々は終わりなんだよ……いつでも目の前にいるんだね……。
さぁ、あと少しだからね、準備をしよう……?」
ハァハァと恍惚の表情で鼻息を荒くしながら足元に置いていたアタッシュケースのようなカバンから透明な液体が入った注射器を取り出し、こちらに近づいて来る。
きっ……キモチワリィ……! 何で名前知ってんだよ……遠くから眺める日々って……それ世の中ではストーカーっていうんだよな……!?
「このっ……変態イカれストーカー野郎! 天使だの美しいだの、眺めてる日々だの……気持ち悪いことばっか言ってんじゃねぇ!
俺はれっきとした男だぞ! 不本意だけどテメェ俺の名前知ってたじゃねぇか! 名前からもわかんだろうが! ……お、おいっ、それなんだよ……な、何する気だよっ……! それ以上近づくんじゃねえ!」
逃げようと暴れても動かせるのは首だけで他はビクともしない。
こみ上げてくる恐怖に抗いながらも唯一自由になる口を最大限に利用して男に罵声を浴びせるも声が震えるのは隠しきれない。
「大丈夫、怖くないからね。これからはずっと一緒だよ……? ふふ。」
腕にチクリとする刺激を感じてものの数秒で意識が落ちていく。テメェなんかと一緒にいるくらいだったら死んだ方がマシだボケ! と言おうとしたが唇がほんの少し震えるだけで何も音にはならなかった……。
「ふふ、さぁ、これで君はいつまでも今のままだよ。永遠に、美しいままでいられるからね。
僕の……いや、僕たちの天使。」
--------------------
1話*何がどうしてこうなった
ふわふわと気持ちのいい微睡みから一気に引き戻される感覚。
ドサッという音と共に感じた背中を打ち付けたような衝撃。思わず「いてっ」と小さい声が漏れる。
更に追い討ちをかけるようにガンガンと頭痛が鳴り響き、思わず頭を抱え……ようと手を動かしたら柔らかい布の感触と何かプラスチック板のようなものに手が当たったのがわかる。
「くそいってぇ……」
再び手をぶつけることがないよう身体に沿う形でそろっと片手を上げて頭をおさえる。ガンガンと響く頭痛に耐えながら目を開くと何処からか差し込んできている光で焼かれたような刺激を感じて思わず唸りながらすぐにギュッと閉じると頭を抑えているのとは反対の手で目を覆う。
薄っすらとすこしずつ開いたり閉じたりを繰り返して、ようやく慣れたのは数分ほど経ってから。
ようやく見えるようになった目を開いて確認してみれば、さっき手が当たったのは半透明なプラスチックのようなものだったらしい。どうやら四方を囲まれて箱のようなものに閉じ込められているらしく寝返りすら打てないような狭さなためほぼ身動きできない。
身体の上には柔らかくて手触りの良い白い布がかかっていて、めくってみると記憶にある自分の服をしっかりと着ていたから少し安心した。なんか閉じ込め方的に病院とかで着てそうな服とかになってるかと思った。
周りの箱をペタペタと触れる程度で探っていく。起きてから時間がたってくると次第に焦燥感が強くなっていき、それが手の動きにも現れる。ガンガンと叩いてみてもビクともしない狭い密閉空間に少しずつ恐怖がじわじわと押し寄せてくる。
「んだよ、なんだこれっ……」
手が痛くなったのでとりあえず一度落ち着こうと深呼吸をして箱の中を観察してみれば、ギリギリ視界に入る腰のあたりに赤いボタンのようなものがあることに気付いた。どうせならもっと早く気付けよ俺、と思ったが焦ると良くないってことだな。
爆発するとかじゃねぇよな、と恐る恐る押してみれば開閉ボタンだったらしくプシューッと音をたてながら足元から箱が開いていきほっと息をついたのもつかの間
「ゲホッ……ゲホゲホッ! なんだ、すげー埃っぽ……!」
中の空気が綺麗なものだったのかなんなのか、箱の外はものすごく埃っぽくて開閉により動いた空気のせいで思わずむせてしまうほどの埃が舞い上がった。
慌てて箱の中の柔らかい布を頭から被り口元を隠すと少し息苦しさは感じるが埃っぽさはなくなって息をするのが楽になった。
そういえばさっきまで箱の中は息苦しくもなかったから空気があったうえに綺麗だったってことだよな。
息も整って周りを眺めてみると無機質なコンクリートの打ちっ放しのような部屋だったらしく、変な輪のようなものがついた台が1つと俺の入っていた謎の箱が1つ置かれているだけだった。
何やら壁も床もヒビが入っていたり欠けてる部分があるが崩れそうにボロボロ、というほどではないのだけは安心できる。生き埋めとか困る。
掃除されずに放置されていたのか、埃や塵、汚れが大量に溜まっている。
上を見れば二階分以上ありそうな天井。そしてその天井にほど近い場所に設置されている明かり取り用であろう窓から射し込む光に反射してキラキラと幻想的な光景になるほどの埃の量だ。
箱から出ようと思ったら靴を履いていなかったが、近くにはないようなので仕方なく裸足で降りる。爪先立ちになりながら唯一の家具(と言っていいものなのか?)である輪のついた台に近付く。
近くで見ると手術台のような薄汚れた台で、ついていた輪は暴れないようにするための拘束具だったようで首に一箇所、手首で二箇所、足首でも二箇所という感じのベルトの様な輪がついていた。
元はステンレスか何かだったであろう鈍い銀色の台には輝きのようなものは一切なく、手垢や埃などが降り積もり想像できる新品のころの見る影もないだろう。
……ん……あ、れ……?
無機質な部屋、に手術台……?
横を見ればさっきまで入っていた半透明な箱は、さっきまでは見えなかったが後ろにあるデカイ装置のようなものと繋がっていて大量のコードが壁に繋がっていた。
なんか未来的なスパコンかなんかって感じに見えるがそのへんはさっぱり分からない。
……って冷静に見てたけどここあの変質者に拉致られた場所じゃねーのか!?
いや、でもな……あそここんなに汚かったか? ……気にしてる余裕なんてなかったから記憶違いなだけか? ……変な箱の中に閉じ込められてたことといい……どういうことだ……?
くっそ、変態ストーカー野郎め……拘束したり閉じ込めたりしてくれやがって……ってあれ? 今拘束されてなかったよな……なんでだ?
埃を右手で払いおとしてから台に座る。埃を払いおとすつもりで手をパンパンと叩いたら濃淡あれどどちらの手も真っ黒になった。くっそ汚ねぇな……。
腰あたりで手をゴシゴシと拭き、やはり黒くなるのを辟易としながら改めて周りを眺めつつ考えてみるも分からないものは分からない。
あの時俺は気付いたら変態に拉致られてて、罵声を浴びせまくってたら注射器で眠らされた。そんで気付いたら今だ。うん、情報が少なすぎるわ。
となれば考えても仕方ねぇし……脱出するか。
あの変態も今のところいないしこっそりいけばいいだろう。どっかで遭遇したらそんときはそんときだ、拘束されてるわけじゃないし暴れりゃどうにかなるだろ!
そうと決まれば、出口は1つ。
窓は上の方に1つだけあるが……位置が高い、小さい、そして太陽の光が眩しい……ってことで外の様子は全く見えないからどうしようもないにも程がある。
爪先立ちになってそろそろと扉に近づく。音を立てないようにソッとノブを捻ると、俺のコソコソ具合を鼻で笑うかのようにガチャリといい音を立てて引っかかる。まさかの鍵がついてた。しかも内鍵とか……気付けよ俺。そろそろとした意味ないじゃないか。
鍵を開けて扉を右に開くとそこはひっそりとした、部屋同様に無機質なコンクリートの打ちっ放しの廊下だった。今度こそこそっと開けたまま様子を伺ってみても誰かが近付いてくるような音は聞こえないのでホッと息をつく。
廊下には窓もないみたいで、部屋から漏れ出る光でかろうじて近くが見える程度。暗すぎて端が見えないのでどれくらいの広さがあるかは分からない。
扉を開けたまま壁伝いに進んでみるとそれほど広くなかったようですぐにコンクリの冷たい壁に突き当たる。扉より左側には部屋はなかったらしく部屋の広さくらいの長さの廊下があるだけらしい。
扉まで戻って反対側を覗いてみるとすぐ横に下りの階段が1つあった。螺旋階段が下に続いているようだけど廊下同様明かりは全く見えなかった。
もう一つ扉付けないんだったら無駄な廊下だな……。扉開けたらすぐ階段、にしたらもうすこし明るくなって良かったのに……。
冷たい壁に手を当てながら暗い階段を探り探り下っていく。
50段くらい下ったあたりで何か出っ張りに手が当たる。
ペタペタと探ってみれば、どうやら取っ手らしきものと四角く切り出されたようなデコボコがあることからドアだと判断する。というかもうそう思っちゃったからそうとしか思えなくなった。多分最初に当たった出っ張りはドアノブなんだろう。
もう一度ノブの場所を探り捻ってみると鍵はかかってなかったようでアッサリと開くが、先ほどの部屋とは違い小さい窓すらないらしく中はなにも見えない。
そのうえ比べものにならないくらい埃っぽいのでそのまま扉を閉める。
ドアを開けた空気の流れによって埃が相当舞ったらしく鼻がむずむずしてくしゃみが出る。
「ぶえっくし! あ"ー……ハウスダストアレルギーあったら耐えられないな、ここ。」
母さんがハウスダストアレルギーがあってしょっちゅう目がかゆいって言ってたな。部屋片付けると埃がたつから嫌だって結構汚かった。
そんで片付けないとそれはそれで埃がーって嘆いてて俺が掃除してたんだが……一緒にここにきてたらくしゃみして目を真っ赤にしてるんだろうなぁと想像して苦笑がもれる。
ストーカー被害は何回もあったけど拉致は初めてだったからな……心配かけてるだろうなぁ。
再び階段を降りていくと何やら下の方から薄っすらと明かりが漏れている。
部屋も小さい窓なのに相当明るかったし、まだ昼間のようだったから外に続くドアかもしれないと期待して進んでいく。
コッソリしていたことなんてあっさりと忘れてガチャッとノブをひねるとまたもや鍵。俺の学習能力の低さといったらもう。
顔を近づけ漏れる光を頼りに内側にある鍵を外してノブをひねると再びガチャリと音がなる。何かと思いよく見れば少し下にもう3つ並んでいるのと足元にも更に4つ鍵が付いていた。
なんでこんなに鍵だらけなんだ……?
首をひねりつつも全部の鍵をせっせと外して薄っすらとした明かりの中周りをよく観察してみるが鍵らしきものはもう見当たらなかったので「いざゆかん!」と無駄に多かった鍵を外した達成感で意気揚々とドアを開ける。
そして開け放った扉の前には緊張した面持ちで長めの銃(ライフル?)やハンドガンを構えている男2人と、俺の身長くらいはありそうな大剣を構えた男1人と遭遇した。
人間驚きすぎると悲鳴なんか出ないで思考が止まるんだな、と学んだ。
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・SF的BL恋愛ファンタジー、みたいな
・銃火器ありーの魔法は無しーです
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あらすじ
目が覚めたら世界が一度滅びかけたらしい。
なんか俺の記憶から1500年たってるらしいんだけど……SFの世界かよっ……!
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0話*プロローグ
「っこの変態! 俺に触んじゃねぇ!」
「ふふ、元気だなぁ……僕の天使。何も怖くないからね。あぁ、固定している箇所が擦れちゃうからそんなに動こうとしないで?
当て布でもしたら良かったなぁ……綺麗な肌が赤くなってるよ……ごめんね。
大丈夫だよ。君は何もしないで僕といつまでも一緒にいてくれたらいいだけなんだから。ね。」
身体を拘束されている俺の頬を、気持ち悪いことを言いながらうっとりとした顔で撫ぜる変質者。
四肢はXのように開かされ台の上で固定され、手首、二の腕、腿、足首のあたりでガッチリと拘束具をつけられている。
胴部分を動かそうとしても固定されているようでビクともしない。
唯一動かすことができるのは締まらないようにか緩く固定されている首くらいだが、それも軽く左右に振れ周りを伺うことができる程度で足元を見ようと少し顔を上げるだけでも喉に食い込んで苦しくなるためほとんど動くことはできない。
唯一の救いは衣服に多少の乱れはあっても一枚足りとも脱がされていなそうなことだろうか。
固定されている台は病院にありそうな手術台のような無機質な物で、動こうとしてるからかステンレスのような硬い台がグリグリと身体にあたり痛みを感じる。
少し視界を動かせば見える範囲……部屋の中には、未来的な医療装置のようなものが置いてある。SFとかでありそうな医療装置みたいな感じで、斜めに立て掛けるように設置されていて周りにはごちゃごちゃとコードやら何やら、俺が見ても何が何だか分からないが色々繋がっているようだ。
それ以外部屋には何もなく、テニスコート二つ分くらいありそうに広い部屋は無駄にスペースが余っていた。
コンクリートの打ちっ放しのような無機質な壁に医療装置のような謎の機械、拘束具がついたシンプルな台。そしてそこに拘束された俺とその目の前には白衣をきた高身長でイケメン……だが、青白い顔をうっとりさせてトリップしてそうな表情を浮かべる男。普通に気持ち悪い。イケメンはどんな顔してもイケメン、とか絶対嘘だ。気持ち悪い。
ほとんど動くことが出来ないほどガッチリと拘束されている現状は意味がわからなすぎて恐怖以外の何物でもない。
大学帰りにちょっと1人になったタイミングでいきなり何かで口を塞がれたと思ったら気付いたらここだったし……なんか嗅がされて気絶させられて連れてこられたとか、ってことか?
「離せよ、このっ誘拐犯が! なんなんだてめぇは!? ここどこだよ!?」
「やだなぁ、誘拐犯だなんて……僕は君のことが大好きなだけだよ? 橘雅貴くん。
君を一目見たあの日から、毎日毎日毎日毎日毎日毎日……研究に研究を重ねてやっと成功したんだ……。これで毎日美しい君と一緒にいることが出来るんだよ……ああ、なんて素晴らしいんだ……。
これで……遠くから君を眺めるだけの日々は終わりなんだよ……いつでも目の前にいるんだね……。
さぁ、あと少しだからね、準備をしよう……?」
ハァハァと恍惚の表情で鼻息を荒くしながら足元に置いていたアタッシュケースのようなカバンから透明な液体が入った注射器を取り出し、こちらに近づいて来る。
きっ……キモチワリィ……! 何で名前知ってんだよ……遠くから眺める日々って……それ世の中ではストーカーっていうんだよな……!?
「このっ……変態イカれストーカー野郎! 天使だの美しいだの、眺めてる日々だの……気持ち悪いことばっか言ってんじゃねぇ!
俺はれっきとした男だぞ! 不本意だけどテメェ俺の名前知ってたじゃねぇか! 名前からもわかんだろうが! ……お、おいっ、それなんだよ……な、何する気だよっ……! それ以上近づくんじゃねえ!」
逃げようと暴れても動かせるのは首だけで他はビクともしない。
こみ上げてくる恐怖に抗いながらも唯一自由になる口を最大限に利用して男に罵声を浴びせるも声が震えるのは隠しきれない。
「大丈夫、怖くないからね。これからはずっと一緒だよ……? ふふ。」
腕にチクリとする刺激を感じてものの数秒で意識が落ちていく。テメェなんかと一緒にいるくらいだったら死んだ方がマシだボケ! と言おうとしたが唇がほんの少し震えるだけで何も音にはならなかった……。
「ふふ、さぁ、これで君はいつまでも今のままだよ。永遠に、美しいままでいられるからね。
僕の……いや、僕たちの天使。」
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1話*何がどうしてこうなった
ふわふわと気持ちのいい微睡みから一気に引き戻される感覚。
ドサッという音と共に感じた背中を打ち付けたような衝撃。思わず「いてっ」と小さい声が漏れる。
更に追い討ちをかけるようにガンガンと頭痛が鳴り響き、思わず頭を抱え……ようと手を動かしたら柔らかい布の感触と何かプラスチック板のようなものに手が当たったのがわかる。
「くそいってぇ……」
再び手をぶつけることがないよう身体に沿う形でそろっと片手を上げて頭をおさえる。ガンガンと響く頭痛に耐えながら目を開くと何処からか差し込んできている光で焼かれたような刺激を感じて思わず唸りながらすぐにギュッと閉じると頭を抑えているのとは反対の手で目を覆う。
薄っすらとすこしずつ開いたり閉じたりを繰り返して、ようやく慣れたのは数分ほど経ってから。
ようやく見えるようになった目を開いて確認してみれば、さっき手が当たったのは半透明なプラスチックのようなものだったらしい。どうやら四方を囲まれて箱のようなものに閉じ込められているらしく寝返りすら打てないような狭さなためほぼ身動きできない。
身体の上には柔らかくて手触りの良い白い布がかかっていて、めくってみると記憶にある自分の服をしっかりと着ていたから少し安心した。なんか閉じ込め方的に病院とかで着てそうな服とかになってるかと思った。
周りの箱をペタペタと触れる程度で探っていく。起きてから時間がたってくると次第に焦燥感が強くなっていき、それが手の動きにも現れる。ガンガンと叩いてみてもビクともしない狭い密閉空間に少しずつ恐怖がじわじわと押し寄せてくる。
「んだよ、なんだこれっ……」
手が痛くなったのでとりあえず一度落ち着こうと深呼吸をして箱の中を観察してみれば、ギリギリ視界に入る腰のあたりに赤いボタンのようなものがあることに気付いた。どうせならもっと早く気付けよ俺、と思ったが焦ると良くないってことだな。
爆発するとかじゃねぇよな、と恐る恐る押してみれば開閉ボタンだったらしくプシューッと音をたてながら足元から箱が開いていきほっと息をついたのもつかの間
「ゲホッ……ゲホゲホッ! なんだ、すげー埃っぽ……!」
中の空気が綺麗なものだったのかなんなのか、箱の外はものすごく埃っぽくて開閉により動いた空気のせいで思わずむせてしまうほどの埃が舞い上がった。
慌てて箱の中の柔らかい布を頭から被り口元を隠すと少し息苦しさは感じるが埃っぽさはなくなって息をするのが楽になった。
そういえばさっきまで箱の中は息苦しくもなかったから空気があったうえに綺麗だったってことだよな。
息も整って周りを眺めてみると無機質なコンクリートの打ちっ放しのような部屋だったらしく、変な輪のようなものがついた台が1つと俺の入っていた謎の箱が1つ置かれているだけだった。
何やら壁も床もヒビが入っていたり欠けてる部分があるが崩れそうにボロボロ、というほどではないのだけは安心できる。生き埋めとか困る。
掃除されずに放置されていたのか、埃や塵、汚れが大量に溜まっている。
上を見れば二階分以上ありそうな天井。そしてその天井にほど近い場所に設置されている明かり取り用であろう窓から射し込む光に反射してキラキラと幻想的な光景になるほどの埃の量だ。
箱から出ようと思ったら靴を履いていなかったが、近くにはないようなので仕方なく裸足で降りる。爪先立ちになりながら唯一の家具(と言っていいものなのか?)である輪のついた台に近付く。
近くで見ると手術台のような薄汚れた台で、ついていた輪は暴れないようにするための拘束具だったようで首に一箇所、手首で二箇所、足首でも二箇所という感じのベルトの様な輪がついていた。
元はステンレスか何かだったであろう鈍い銀色の台には輝きのようなものは一切なく、手垢や埃などが降り積もり想像できる新品のころの見る影もないだろう。
……ん……あ、れ……?
無機質な部屋、に手術台……?
横を見ればさっきまで入っていた半透明な箱は、さっきまでは見えなかったが後ろにあるデカイ装置のようなものと繋がっていて大量のコードが壁に繋がっていた。
なんか未来的なスパコンかなんかって感じに見えるがそのへんはさっぱり分からない。
……って冷静に見てたけどここあの変質者に拉致られた場所じゃねーのか!?
いや、でもな……あそここんなに汚かったか? ……気にしてる余裕なんてなかったから記憶違いなだけか? ……変な箱の中に閉じ込められてたことといい……どういうことだ……?
くっそ、変態ストーカー野郎め……拘束したり閉じ込めたりしてくれやがって……ってあれ? 今拘束されてなかったよな……なんでだ?
埃を右手で払いおとしてから台に座る。埃を払いおとすつもりで手をパンパンと叩いたら濃淡あれどどちらの手も真っ黒になった。くっそ汚ねぇな……。
腰あたりで手をゴシゴシと拭き、やはり黒くなるのを辟易としながら改めて周りを眺めつつ考えてみるも分からないものは分からない。
あの時俺は気付いたら変態に拉致られてて、罵声を浴びせまくってたら注射器で眠らされた。そんで気付いたら今だ。うん、情報が少なすぎるわ。
となれば考えても仕方ねぇし……脱出するか。
あの変態も今のところいないしこっそりいけばいいだろう。どっかで遭遇したらそんときはそんときだ、拘束されてるわけじゃないし暴れりゃどうにかなるだろ!
そうと決まれば、出口は1つ。
窓は上の方に1つだけあるが……位置が高い、小さい、そして太陽の光が眩しい……ってことで外の様子は全く見えないからどうしようもないにも程がある。
爪先立ちになってそろそろと扉に近づく。音を立てないようにソッとノブを捻ると、俺のコソコソ具合を鼻で笑うかのようにガチャリといい音を立てて引っかかる。まさかの鍵がついてた。しかも内鍵とか……気付けよ俺。そろそろとした意味ないじゃないか。
鍵を開けて扉を右に開くとそこはひっそりとした、部屋同様に無機質なコンクリートの打ちっ放しの廊下だった。今度こそこそっと開けたまま様子を伺ってみても誰かが近付いてくるような音は聞こえないのでホッと息をつく。
廊下には窓もないみたいで、部屋から漏れ出る光でかろうじて近くが見える程度。暗すぎて端が見えないのでどれくらいの広さがあるかは分からない。
扉を開けたまま壁伝いに進んでみるとそれほど広くなかったようですぐにコンクリの冷たい壁に突き当たる。扉より左側には部屋はなかったらしく部屋の広さくらいの長さの廊下があるだけらしい。
扉まで戻って反対側を覗いてみるとすぐ横に下りの階段が1つあった。螺旋階段が下に続いているようだけど廊下同様明かりは全く見えなかった。
もう一つ扉付けないんだったら無駄な廊下だな……。扉開けたらすぐ階段、にしたらもうすこし明るくなって良かったのに……。
冷たい壁に手を当てながら暗い階段を探り探り下っていく。
50段くらい下ったあたりで何か出っ張りに手が当たる。
ペタペタと探ってみれば、どうやら取っ手らしきものと四角く切り出されたようなデコボコがあることからドアだと判断する。というかもうそう思っちゃったからそうとしか思えなくなった。多分最初に当たった出っ張りはドアノブなんだろう。
もう一度ノブの場所を探り捻ってみると鍵はかかってなかったようでアッサリと開くが、先ほどの部屋とは違い小さい窓すらないらしく中はなにも見えない。
そのうえ比べものにならないくらい埃っぽいのでそのまま扉を閉める。
ドアを開けた空気の流れによって埃が相当舞ったらしく鼻がむずむずしてくしゃみが出る。
「ぶえっくし! あ"ー……ハウスダストアレルギーあったら耐えられないな、ここ。」
母さんがハウスダストアレルギーがあってしょっちゅう目がかゆいって言ってたな。部屋片付けると埃がたつから嫌だって結構汚かった。
そんで片付けないとそれはそれで埃がーって嘆いてて俺が掃除してたんだが……一緒にここにきてたらくしゃみして目を真っ赤にしてるんだろうなぁと想像して苦笑がもれる。
ストーカー被害は何回もあったけど拉致は初めてだったからな……心配かけてるだろうなぁ。
再び階段を降りていくと何やら下の方から薄っすらと明かりが漏れている。
部屋も小さい窓なのに相当明るかったし、まだ昼間のようだったから外に続くドアかもしれないと期待して進んでいく。
コッソリしていたことなんてあっさりと忘れてガチャッとノブをひねるとまたもや鍵。俺の学習能力の低さといったらもう。
顔を近づけ漏れる光を頼りに内側にある鍵を外してノブをひねると再びガチャリと音がなる。何かと思いよく見れば少し下にもう3つ並んでいるのと足元にも更に4つ鍵が付いていた。
なんでこんなに鍵だらけなんだ……?
首をひねりつつも全部の鍵をせっせと外して薄っすらとした明かりの中周りをよく観察してみるが鍵らしきものはもう見当たらなかったので「いざゆかん!」と無駄に多かった鍵を外した達成感で意気揚々とドアを開ける。
そして開け放った扉の前には緊張した面持ちで長めの銃(ライフル?)やハンドガンを構えている男2人と、俺の身長くらいはありそうな大剣を構えた男1人と遭遇した。
人間驚きすぎると悲鳴なんか出ないで思考が止まるんだな、と学んだ。
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