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小話
続・妖精王女と慕われ隊長4
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そんな姿を前にして、セシリアこそ目玉をひん剥いて一人大慌てな騎士を凝視した。
「ダレル隊長……」
──なんって可愛らしいおっちょこちょいさんなのかしらあああん!
いつも凛々しく、頼もしい推しが照れて恥じらい慌てる姿。なんて尊いのだろう。真面目な彼らしい。可愛い、恰好良い、いやとにかく可愛い! の情緒の乱気流にのまれてしまう。
たかだか胸ひとつでこんなにたまらない意外な一面を拝めるとは、毎度毎度、この人を前にするとじゅるりと垂れ流れてしまいそうなよだれを堪えるのに必死である。
しかし、これはこれで美味しいのだが、セシリアの理想としてはここで激しく暴いてもらわなければ困るのだ。
となれば騎士としてこの姿を謝罪されるのではなく、男として興奮してもらわねば困る。自分がダレル隊長にとって女性として見れる存在なのかが、一番の不安材料であった。
どれほど妖精だ可憐だと誉めそやされたとしても、そんなものダレル隊長のタイプに当てはまらなければなんの意味も無い。
そう思って視線を下に下げたところで──セシリアは刮目した。
ダレル隊長の下半身が、隊長自身が鎮座しておられるだろう場所が見間違いではなく隆起している。これはもしや、これがもしや、噂で聞いた男性の臨戦態勢であろうか。いや、そうであってほしい。そうであれ! と強く念を送る。
ゆるりと視線を上げたら、セシリアがなにを見たのかに気付いたのだろう。
ダレル隊長は赤い顔をまた青く変えた。どころか、青を通り越して顔面蒼白だ。慌てて身を引こうとする手を掴んで引き留める。ここで逃がしてはならない。
いつも剣を握っている硬く頼もしい手を、ギュッと両手で握り込んだ。押すしかない。
「ダレル隊長、お慕いしております!」
「…………はい?」
前のめりで告げたら、すっかり血の気が失せた顔が呆気にとられたようにセシリアを見下ろす。
おそらく突然のことに理解が追いついていないのだろう。セシリア自身も突然の告白だとは思っている。が、この隙に付け込まねば逃げられる。その前に捕まえねばならぬ。
絶対に逃がさないという強固な意志を持って、見つめる瞳に力を込めた。
「いつも、いつも陰から見ていました。日々鍛錬を怠らぬ姿勢を尊敬しております。それでいて隊員の皆さまに気を配り、慕われる姿に私も見習わねばと思うばかりで……そのようなダレル隊長が私は、私は、す、すす、好きなのれすっ! らから、あの、あの──ああっ」
──めちゃくちゃのぐちゃぐちゃに激しく抱き潰しちゃってほしいのです!
感情が昂りきったセシリアは。呂律も回らず噛み倒してしまった。これでは埒があかんと、我慢ならずに握っていた手を強く引っ張る。
鍛え抜かれた鋼の肉体であるはずのダレル隊長だが、すっかり思考停止しているのか大きな身体は呆気なくベッドに沈んだ。
これはチャンスとばかりに、セシリアは倒れた腹に馬乗りになった。
「ふあああ……っ!」
お尻の下に硬い筋肉を感じて身悶えするほどに感動してしまう。当たる腹筋が硬い。凹凸がエグイ。視線を下ろせば、いつも凛々しい顔を今はポカンとさせているダレル隊長がとてつもなく可愛らしい。
つまりただの絶景がそこにあった。
ぐいっと口元を擦って、毎度毎度滴りそうなよだれを拭う。
「ダレル隊長は、私などお好みではありませんか?」
ぐっと顔を近づけて問えば、大きく見開かれていた目が瞬く。
「…………え?」
ああ、きょとんとされている顔もなんて可愛いのかしら。
チュッ。
思ったと同時に、我慢できず勝手に身体が動いた。
小さなリップ音をさせて顔を離すと、目の前のポカン顔が瞬く間に燃えるように赤面する。
「な、な、なにを……っ」
逞しい身体が、口元を両手で押さえてプルプルしている。
「私は、もう胸が苦しくてどうにかなってしまいそうなのです。この気持ち、受け取ってくださいませんか?」
事実、現にもう心身ともに我慢の限界が近い。心臓は跳ねまわるし、ダレル隊長を目の前にして感情は今にも爆発しそうだ。ハアハアと荒くなる一方の息も苦しい。
じっと見据えて聞けば、プルプルしたまま小刻みに何度も頷いている。
「良かったですわ。では──!」
思いっきり襲ってくださいませ! と言わんばかりに逞しい胸に抱き着いた。胸板が硬い。鼻血が出そう。
しかし、そこで我に返ったらしいダレル隊長の身体が跳ね起きた。
「いやちょっと落ち着いてください!?」
「なにをですの!?」
ここにきてお預けはあんまりだ。
起き上がったダレル隊長と向かい合い、頬を膨らませて抗議するように見たら唐突に「うっ!」と胸元を抑えている。
対してセシリアは、はしたなくも舌打ちが出そうになるのを寸でで堪えた。
「あ、あまりに突然で……少し考えさせてくだ──んんっ!?」
飛びつくようにして口を口で塞いだ。ここで考えさせる隙を与えてはならない。そうすればこの人は絶対に引いてしまうに違いない。セシリアは確信を持って言葉を奪った。
それになにより、ダレル隊長に跨っているセシリアの下半身に当たっているのだ。硬いものが。これでもかと主張してくるものがしっかりと当たっている。
ここで逃がしてなるものかぁっ! と首に腕を回し、さらに腰に足を回して密着した。ビクゥッと逞しい身体が硬直する。
「いえ、待っ、王族の方が俺のような者に……っ」
必死に顔を反らしたダレル隊長が、セシリアの頬をぐいーっと押して引き剥がそうとする。それでも抵抗するセシリアから離れようとしてか、細い腰にごつごつとした手が添えられた。──が、そこで何かに気付いた様子で、ダレル隊長は無礼も何も吹っ飛んだようにセシリアの腰回りをぺたぺたと撫で回すように触れてくる。
「えっ、え? あの、王女、まさか……?」
「私が本気だと、分かってくださいました?」
やる気満々の王女は下着を身に着けていないが、それは当然ながら上だけではないのだ。つまり、この羽織っただけの薄い寝衣、それを腰で留めているリボンの紐を解けば容易く生まれたままの姿となれる。
ダレル隊長は腰回りに触れたことで、それに気が付いたのだろう。同時にセシリアの目的も明確に理解したはずだ。
「ならば話は早いですわね」
もはや説明不要であろうと、腰のリボンをシュッと引っ張る。そうすれば前の合わせ目が大きく開く。
ダレル隊長がギョッと目を剥いてる間に袖から素早く腕を引き抜いて寝衣を脱ぎ捨てれば、ババーンと生まれたままのセシリアが登場である。戸惑うダレル隊長の肩を押して、もう一度巨体をベッドに沈めた。
「ダレル隊長……」
──なんって可愛らしいおっちょこちょいさんなのかしらあああん!
いつも凛々しく、頼もしい推しが照れて恥じらい慌てる姿。なんて尊いのだろう。真面目な彼らしい。可愛い、恰好良い、いやとにかく可愛い! の情緒の乱気流にのまれてしまう。
たかだか胸ひとつでこんなにたまらない意外な一面を拝めるとは、毎度毎度、この人を前にするとじゅるりと垂れ流れてしまいそうなよだれを堪えるのに必死である。
しかし、これはこれで美味しいのだが、セシリアの理想としてはここで激しく暴いてもらわなければ困るのだ。
となれば騎士としてこの姿を謝罪されるのではなく、男として興奮してもらわねば困る。自分がダレル隊長にとって女性として見れる存在なのかが、一番の不安材料であった。
どれほど妖精だ可憐だと誉めそやされたとしても、そんなものダレル隊長のタイプに当てはまらなければなんの意味も無い。
そう思って視線を下に下げたところで──セシリアは刮目した。
ダレル隊長の下半身が、隊長自身が鎮座しておられるだろう場所が見間違いではなく隆起している。これはもしや、これがもしや、噂で聞いた男性の臨戦態勢であろうか。いや、そうであってほしい。そうであれ! と強く念を送る。
ゆるりと視線を上げたら、セシリアがなにを見たのかに気付いたのだろう。
ダレル隊長は赤い顔をまた青く変えた。どころか、青を通り越して顔面蒼白だ。慌てて身を引こうとする手を掴んで引き留める。ここで逃がしてはならない。
いつも剣を握っている硬く頼もしい手を、ギュッと両手で握り込んだ。押すしかない。
「ダレル隊長、お慕いしております!」
「…………はい?」
前のめりで告げたら、すっかり血の気が失せた顔が呆気にとられたようにセシリアを見下ろす。
おそらく突然のことに理解が追いついていないのだろう。セシリア自身も突然の告白だとは思っている。が、この隙に付け込まねば逃げられる。その前に捕まえねばならぬ。
絶対に逃がさないという強固な意志を持って、見つめる瞳に力を込めた。
「いつも、いつも陰から見ていました。日々鍛錬を怠らぬ姿勢を尊敬しております。それでいて隊員の皆さまに気を配り、慕われる姿に私も見習わねばと思うばかりで……そのようなダレル隊長が私は、私は、す、すす、好きなのれすっ! らから、あの、あの──ああっ」
──めちゃくちゃのぐちゃぐちゃに激しく抱き潰しちゃってほしいのです!
感情が昂りきったセシリアは。呂律も回らず噛み倒してしまった。これでは埒があかんと、我慢ならずに握っていた手を強く引っ張る。
鍛え抜かれた鋼の肉体であるはずのダレル隊長だが、すっかり思考停止しているのか大きな身体は呆気なくベッドに沈んだ。
これはチャンスとばかりに、セシリアは倒れた腹に馬乗りになった。
「ふあああ……っ!」
お尻の下に硬い筋肉を感じて身悶えするほどに感動してしまう。当たる腹筋が硬い。凹凸がエグイ。視線を下ろせば、いつも凛々しい顔を今はポカンとさせているダレル隊長がとてつもなく可愛らしい。
つまりただの絶景がそこにあった。
ぐいっと口元を擦って、毎度毎度滴りそうなよだれを拭う。
「ダレル隊長は、私などお好みではありませんか?」
ぐっと顔を近づけて問えば、大きく見開かれていた目が瞬く。
「…………え?」
ああ、きょとんとされている顔もなんて可愛いのかしら。
チュッ。
思ったと同時に、我慢できず勝手に身体が動いた。
小さなリップ音をさせて顔を離すと、目の前のポカン顔が瞬く間に燃えるように赤面する。
「な、な、なにを……っ」
逞しい身体が、口元を両手で押さえてプルプルしている。
「私は、もう胸が苦しくてどうにかなってしまいそうなのです。この気持ち、受け取ってくださいませんか?」
事実、現にもう心身ともに我慢の限界が近い。心臓は跳ねまわるし、ダレル隊長を目の前にして感情は今にも爆発しそうだ。ハアハアと荒くなる一方の息も苦しい。
じっと見据えて聞けば、プルプルしたまま小刻みに何度も頷いている。
「良かったですわ。では──!」
思いっきり襲ってくださいませ! と言わんばかりに逞しい胸に抱き着いた。胸板が硬い。鼻血が出そう。
しかし、そこで我に返ったらしいダレル隊長の身体が跳ね起きた。
「いやちょっと落ち着いてください!?」
「なにをですの!?」
ここにきてお預けはあんまりだ。
起き上がったダレル隊長と向かい合い、頬を膨らませて抗議するように見たら唐突に「うっ!」と胸元を抑えている。
対してセシリアは、はしたなくも舌打ちが出そうになるのを寸でで堪えた。
「あ、あまりに突然で……少し考えさせてくだ──んんっ!?」
飛びつくようにして口を口で塞いだ。ここで考えさせる隙を与えてはならない。そうすればこの人は絶対に引いてしまうに違いない。セシリアは確信を持って言葉を奪った。
それになにより、ダレル隊長に跨っているセシリアの下半身に当たっているのだ。硬いものが。これでもかと主張してくるものがしっかりと当たっている。
ここで逃がしてなるものかぁっ! と首に腕を回し、さらに腰に足を回して密着した。ビクゥッと逞しい身体が硬直する。
「いえ、待っ、王族の方が俺のような者に……っ」
必死に顔を反らしたダレル隊長が、セシリアの頬をぐいーっと押して引き剥がそうとする。それでも抵抗するセシリアから離れようとしてか、細い腰にごつごつとした手が添えられた。──が、そこで何かに気付いた様子で、ダレル隊長は無礼も何も吹っ飛んだようにセシリアの腰回りをぺたぺたと撫で回すように触れてくる。
「えっ、え? あの、王女、まさか……?」
「私が本気だと、分かってくださいました?」
やる気満々の王女は下着を身に着けていないが、それは当然ながら上だけではないのだ。つまり、この羽織っただけの薄い寝衣、それを腰で留めているリボンの紐を解けば容易く生まれたままの姿となれる。
ダレル隊長は腰回りに触れたことで、それに気が付いたのだろう。同時にセシリアの目的も明確に理解したはずだ。
「ならば話は早いですわね」
もはや説明不要であろうと、腰のリボンをシュッと引っ張る。そうすれば前の合わせ目が大きく開く。
ダレル隊長がギョッと目を剥いてる間に袖から素早く腕を引き抜いて寝衣を脱ぎ捨てれば、ババーンと生まれたままのセシリアが登場である。戸惑うダレル隊長の肩を押して、もう一度巨体をベッドに沈めた。
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