最下位の最上者

竹中雅

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第三章

散策

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学校に居られるのもあと5日を切り、何ら代わり映えのない時間が過ぎる。
時間が経てば多少は俺の噂が緩和されると想像していたが、事実は思うように進まない。
明日の放課後、俺たち四人の処分を伝えられる。処分と言っても停滞か退学のどちらか。
俺がたとえ退学となろうが、藤桜のためにもどうにか阻止をしたい。
変わった点で言えば、二つ。
一つは昼飯時の透百合とやらの行動が変わった。
会う以前は自然空気と同等に扱われていたが、俺が木影に座ると必ず目線がぶつかる。
一応会釈だけは交わしているが、ただそれだけ。距離が近づいたとはいえない、通常距離だろう。
もう一つは、藤桜が一緒に食べている。
「気持ちいいね~」
「そうだな」
食べ終わっても只管会話するわけでもなく、訥々と声を出すのみ。
どちらも無駄に話す性格では無い。
雲一つなく、燦燦と日光が庭周りを照らしている。小鳥の囀りや風に吹かれる草花は依然として清澄とした音を掛け合わせている様子は、5月ながらの涼しさを味わせてくれる。
この空気を味わえるのもあと少しだ。
「どうなるのかな...」
仰ぎながら小さな声を漏らした。
「もし私たちが残るとしても、茜澤君が居なくなるなら、私も退学する」
「...は?何言ってんだ?」
「何か楽しくないかなあ...って。藍水さんと樫谷君と三人で食べてるとき悪口とかばっかだし...携帯弄って別々に食べてるみたい」
「別に俺とだって話は少ないぞ?」
「うん...でも気分が違うから。だから...」
「気持ちはわかる。だがそれで自主退学は辞めてくれ」
俺にはその三人の時の様子はわからない。同じ状況でも人や周りの様子で心境は変化する。
携帯を弄って食べているならば、わざわざ一緒に食べる必要もないように感じるが、誰かと一緒には食べたいのだろう。孤独を避けたいためか、話のネタを取得したいのか。
「...でも」
「俺の判断も鈍る」
「...」
「どうにかおれも彼奴らの目論見の証拠を見つけるために尽力する」
「うん...私も協力する」
ここ数日何か証拠を探そうと、誰に声をかけても不審な眼差しを向けられ黙殺され続けている。
俺たちより上のグループに至っては相手にもされない。
結局どちらにせよ、相手にされない。
四面楚歌というべき状況だ。
「とりあえず誰かに聞いてみよう?」
先を歩く藤桜の姿は、ほんの少し頼りがいのあるように見える。
そこに丁度男子生徒二人が向かって歩いてきた。
「ちょっと良いか?」
『...』
試しに俺が声をかけてみる。
一瞥した後、すぐに何もなかったように無視された。
これが無視のルーティン。
だが、今日は藤桜が一緒だ。何か情報を得られるかもしれない。
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