最下位の最上者

竹中雅

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第二章

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「今日のホームルームは特になし。解散でいいぞ~。それとE-8のグループ、茜澤たちだな。ちょっと来てくれ~」
一週間が経ち、相変わらずのやる気を感じさせないホームルームが終わるとグループを通して呼び止められた。
「君たち、一週間前?もっと前か?知らんが何かあったか?」
目を合わせることなく誰も口を開かないので、俺が声を発した。
「Dグループの奴らに絡まれましたね」
「あーそれだな。そのグループのリーダー、桑原が君たちにいきなり攻撃されたと報告を受けてな」
「それ、アタシたちが被害受けたんですよ!練習場に居たら、邪魔だからどけって言われて!アタシたちは逃げましたし!」
「まあ、待て。今回は茜澤一人が一方的に攻撃したと報告を受けてている。報告書の要点だけ纏めると『Eグループの奴らが遊んでいると勘違いして、遊んでいるなら邪魔と言った。三人は立ち退いたが、一人はいちゃもんをつけ、襲いかかってきた。桑原たちは抵抗することもなく、されるがままで何箇所かに怪我をさせた。そして最後に自分の名を名乗って立ち去った』このように書かれているぞ」
三人の目が一斉にこちらへ振りかかった。
特に樫谷は体を射止めるかのように鋭い視線を浴びせてくる。
「その報告書、偽造だらけじゃないですか。攻撃してきたのはあいつらです。俺は相手に傷を与えない必要最低限のことしかしていない」
「抗おうが攻撃したのは事実なんだな。その時に傷ができてもおかしくはない」
かなり注意深く相手を攻撃した。だが、幾ら用心しても擦り傷は与えてしまう確率は高い。
わざわざ名前を聞いてきたのも、俺を嵌めるためだったのか。
負ければ被害者面で現れる随分とタチの悪い連中だ。
「まあ、そうですね。でも話の大部分が嘘だ。前提が事実でないなら一概に否定できませんよね」
「確かに茜澤、君の言う通りだ。しかし、傷を与え、それが報告されている時点でもう君の責任なんだ。君ならこの学校の規則を読んでいると思うが、どうしようもない」
『下の者が上の者に逆らってはならない。』
『理由なく、刀等による暴力行為を禁止とする。正当な理由が確認できれば行為は認められるが、上成績グループの意見が尊重される。ただし、殺めた場合、如何なる弁解があろうと退学とする。』
ああ、だから俺は必要最低限しか動かなかったんだ。訴えられた時を考えて抗戦した。
「じゃあどうすれば良かったんですか!」
「君の言うことが正しいなら、逃げるしかなかったんじゃないか?」
確かに逃げる選択も当初は残っていた。ただあの時、メンバーの一人が追いかけようとしていた。
もし俺が逃げたとしても金を取るまで追いかけてきたに違いない。また三人が危険に晒されることも大いに考えられた。
だから逃げるよりも人を護るという確かな選択をしたはずだった。
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