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魔物ハンターとサキュバス

柊(ひいらぎ) 真(まこと) 身長166cm B80 W58 H82 Bカップ ②

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 私たちは昼間、サキュバスの拠点である家の偵察に向かっていた。
 戦闘衣装を内側に着込んで、コートで隠している。
 片手にジュースをもって、さりげなく確認する。

「あそこがサキュバスの拠点よ」

 紗枝が指さすその先には赤色の屋根が目印のいたって普通の一軒家だった。
 道路からは少し離れているが住宅街であり、私たちのイメージからはかけ離れていた。
 
「普通ね。どうしようか?」

 梢が手に持った空き缶をゴミ箱に入れて、戻ってきた。
 わざわざ少し離れた場所まで捨ててきたということは何か空き缶に細工をしているはずだ。
 私はにらみつけるように見ている紗枝の肩をたたいて提案する。

「一度、夜になってから出直そう。目立ちすぎる」
「……了解。わかったわ」

 歯ぎしりをして紗枝は答える。今すぐにでも突入したい気持ちはあるのだろう。
 だが、妹たちのこと考えているには先走りすぎている。
 一度、クールダウンすべきだ。

「あっ、そういえばこれ使えるかな?」
「これは?」

 梢は懐から試験管を取り出した。
 どろりとした緑色の液体がなんなのか気になる。

「中身は何が入っているんだ?」
「媚薬です」
「び!? 媚薬!? なぜに!?」

 これからサキュバスを退治しに行くというのに媚薬を飲むのはおかしい。
 というか、梢は馬鹿なのか?

「馬鹿なこと言わないでよ。サキュバスに効くわけないじゃない」

 あ、そうか。普通はそう考える……あれ? 

(どうして私は、自分が飲むものだと考えたの?)

 自分の考えがおかしいことに気付いて寒気がした。

「そうですよね……。一応、天敵のインキュバスの翼が元になっているのですが、ぶっちゃけ同類ですからね」
「インキュバスの翼……そういえば、報告書にはサキュバスの翼が今回の原因って書いてあったわね」

 紗枝がじろじろと興味を持ちだした。
 インキュバスと言えばサキュバスの天敵……ではない。私の知っている限りではどちらも同類だ。
 淫魔の姿が男ならインキュバス。女ならサキュバスであり私の読んだ本では同じ扱いになっている。
 まぁ、魔物に性別なんてあるのかどうかそこから怪しかった。
 だけど、もしかするとそれを飲めば対抗する力が手に入るかもしれない。

「そんな代物、どこで手に入れたんだ?」
「え~と、あの、もらいました」
「誰から?」
「…………」

 珍しく梢の歯切れが悪い。
 視線を右往左往させて、怪しい。

「はぁ、ぶっちゃけて言いますね」

 やがて、耐えきれなくなり、ため息をついてしゃべった。

「今日、ポストを調べたら入ってました」
「「ポスト?」」
「はい。ポストです。これが証拠の手紙です」

 茶色に事務的な封筒を手渡される。
 紗枝が受け取り、乱暴に取り出して私も覗き込んで読んでみる。

『初めまして魔物ハンターさん。インキュバスです。近頃、偽物のサキュバスが悪さをしているので力になれたらと思い、使ってください。副作用として性欲が少し強まりますが1カ月で抜けるのでご安心を……』

「「………………」」
「……どうする? 使ってみる?」
「「使わない!」わ!」
「ですよねー」

 いくらなんでも内容が怪しすぎる。詐欺にしてももう少しましな文章を送ってくる。
 紗枝は怒りながら梢に試験管を返して先に行ってしまった。

「梢……いくらなんでもそれはダメだよ」

 これから命をかけて戦うのにこの茶化し方は紗枝を馬鹿にしている。
 そう思って、たしなめようとしたとき、梢の顔が泣いていることに気付いた。

「……真ちゃん。私もね、これはないなーって思ってたの。でもね……」

 梢はポツリと涙交じりの声で言葉を紡ぐ。

「万が一……これが本当ならって思ったの。だけど、逆効果だったね」

 そういって、梢は無理に笑った。
 その顔に私は胸が締め付けられるような苦しみを覚える。
 
(そうだ。梢だっていっぱいいっぱいなんだ。だから、こんな怪しいものを……)

 私は、梢から試験管を奪い取った。
 そして、ふたを開けて飲み込む。

「っ!?」
「ま、真ちゃん!?」

 液体が口を通し、喉を通り過ぎると体は異常に熱くなるを感じる。
 サウナにいるのかを勘違いするほどに全身から汗がしたたり落ちる。

「大丈夫!? ねぇ! だ、だれかっ」
「ま、待って、梢……大丈夫。だから」
「で、でも、汗が……」
「大丈夫。なんだか……わかるんだ」

 私は飲んだ瞬間に何かに気づいた。
 それが何なのかはわからない……でも、恐ろしいものではない。

「行こう。紗枝を追いかけよう」
「真ちゃん……わかった」

 梢は涙を拭いて私の手を握った。
 その手は少し……冷たく感じた。 
 
 
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