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魔物ハンターとサキュバス

姫路(ひめじ) 優衣(ゆい) 身長158cm B78 W53 H76 Cカップ 後編

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「あの。藤堂さん。どこに……」
「いいから、着いてきなさい」

 私は箱を持った腕を握られて、藤堂さんに連れてかれます。

「理事長。入ります」

 連れ込まれた扉の先にはすごい、グラビアアイドルみたいな女性が椅子に座って待っていた。

「詩衣里さん。その方は?」
「サキュバス様からの届け物を持ってきてくれた方です」
「へっ?」

 サキュバス!? いやいや、私が受け取ったのは普通の人……だよね?
 自分でもよくわからないけど……

「そうですか、ありがとうございます。ですが、それ以外にも要件があるわね?」
「えっ?」
「だって、サキュバス様が無関係者を使者として送ってくるとは考えにくい。この学園に何か用があるのでは?」
「……はい。実は」

 私はここまで来た経緯を説明した。
 一通り説明すると理事長と藤堂さんはため息をつく。

「なるほど、原因はこちらにありましたか」
「私はお姉ちゃんさえ……」

 そう私はお姉ちゃんさえ無事だったら別にいい。この状況だと難しいとは思っているが。

「ごめんなさい。現状は返すことができないの」
「どうしてですか? まさか、いないなんて」

 最悪の事態を想定してしまうが、それはすぐに否定される。

「いいえ、ちゃんと在籍しています。ですが、催眠状態ではなく、ある教師に洗脳されて言いなりになっているのです」
「洗脳?」
「ええ、彼女は科学的にサキュバス様の力を解析し、サキュバス様を否定し、学園を支配しています」
「待ってください。よくわからないのですが……」

 話がついていけない。サキュバスの力を……えっと、どういうことか本当にわからない。

「簡単に言うと彼女はこの世界を我が物にしようとしているのです。それも、現代の科学を超越した力でね」

 なんかすごく簡単に説明された気がする……が、まあそれは置いておくとしよう
 じゃなくて、お姉ちゃんのほうが気になる。

「それじゃ、お姉ちゃんはそれに……」
「ええ、第一の被害者ですね。後手に後手に回ってしまったせいかこの学園の半数以上はあちらに洗脳されてしまっています」

 なんてこった。ということはそれをなんとかしないとお姉ちゃんを連れて帰ることができない。

「打開策はあるんですか?」
「それがこの箱に入っています。詩衣里さん」
「はい。開けますね」

 パカッと音を立てて、箱は開かれる。
 中から盛大な光が放たれて、徐々に弱まっていく。
 その中に入っていたのは……



「えっ、何も入ってない?」
「「……」」

 光るだけ光って、中には何も入っていませんでした。
 正直、拍子抜けです。これではどうやってお姉ちゃんを助けたらいいか見当も……

「あれ? 二人ともどうしたんですか?」
「「はい、私たちは正常です」」
「んっ? いや、だから」
「私たちはサキュバス様の催眠の支配下にあります。ご命令を……」
「んんっ?」

 おかしい、明らかに二人の様子が変だ。
 遠くをぼんやり見つめて、意識がないようにも見える。
 口は半開きになっているし……待って、今確か、【催眠の支配下】って二人は言わなかったか?
 もしかして……これがカギになるんじゃないか?

「理事長先生。お姉ちゃんは洗脳されているんですよね?」
「ええ、その通りです」
「それを……催眠術で操ることができますか?」

 お姉ちゃんを連れて帰れさえすればいいんだから、そうすれば問題ない。
 この学園のことを他に人に任せればいい。だけど、そう簡単にはいかないみたいだ。

「恐らくは無理でしょう。すでにこの学園は催眠の支配下にありました。その上から洗脳されているので効果があるかは不明です」
「そうですか……」

 即座に否定される。

「逆に……催眠を解いてはどうでしょうか?」
「催眠を解く?」
「ええ、催眠術の下地があるからこそ洗脳は効果があります。相手がこちらの力を利用するなら、その力を使わなければいいのです」
「そ、そうなんだ。専門の用語がよくわからないけど、催眠術を解けばいいのね」
「ですが……問題があります」

 理事長はたんたんと答える。

「放送室が相手の拠点なのです」
「……えっ、じゃあ」
「どうにか誘導するか、正面突破か、どうするかは任せます」
「え、ええ!? 教えてくれないの!?」

 しかし、その答えの返答はしてくれない。

「…………」
「だんまりはやめてよ……」

 どうしよう。何をすればいいか振出しに戻ってしまった気がする。
 とんとん拍子で話が進んだからこのままいけると思っていたのに……

「待って、そういえばサキュバスはどうやって学園全体を支配したの?」
「それは体育館に集めて入学式の際に音を使用していました」

 頭がすごく冴えわたる。

「音か……見たことないけどスピーカーよね?」
「そうです」

 音が原因で催眠? でも、それだと一つだけ気になる。

「体育館よね? 全員がその時に催眠にかかったとしても誤差があるわよね? 教えて、サキュバスはどうやって全員に平等に催眠を刷り込ませたの?」
「……それは」
「教師が服を脱いでストリップショーをしてました」
「ストッ!?」
「はい、あれは衝撃的で、ほら、カメラにも残っています」

 見せてもらうと動画に取られている画像がわかる。
 その後、すぐに音が聞こえて携帯がしたに落ちて、動画は終わった。
 これがサキュバスの催眠術の仕組み。音と映像……違う、衝撃的な光景を付け足すことによって催眠状態にしている。
 それなら解除するにはどうすればいいのか? 恐らくは音が必要なのは確実だと思う。
 何を付け足せばいい? 何を見せれば……私の持っていた鞭が頭によぎった。

「閃いた……鞭で叩けば……」
「何を物騒なこと話しているんですか?」
「えっ?」

 気が付けば、私の背後には知らない女性が立っていた。
 手には拳銃らしきものを持っていて物騒だ。

「ああ、いいですね。ちょうど邪魔者二人がいい感じになっているじゃないですか」
「「……」」

 理事長と藤堂さんはしゃべらない。
 
(そうだ。二人は今、催眠の支配下に……)

 声を出そうと、駆け寄ろうとしたその瞬間、頭に衝撃が走る。

「なっ!?」

 視界が揺らめく。これでも魔物ハンターの訓練を受けていた。
 なのに、一撃で意識が持っていかれそうになる。
 一体誰が……

「えっ、おねえ、ちゃ」
「うるさいですよ。優衣。ご主人様の前で愚かな真似はよしなさい」

 そこには驚くほど表情が消えたお姉ちゃんが立っていた。



 人は誰でも、表情が先に出る。
 それが見た目の評価につながって人間的な評価になる。
 でも、今、洗脳されたお姉ちゃんに表情なんてものはなかった。

「よくやりました。これで仕留めておいてください」
「はい。ご主人様」

「お、お姉ちゃん。それは」
「これは絶頂銃です。愛水の快楽の限界値を相手に直接送り込めます」

 カチャリッとお姉ちゃんが絶頂銃の銃口をこちらに向ける。
 私は無意識に、自身の武器である鞭を握りしめていた。
 銃を対処する訓練は受けていた。魔物ハンターとして当然だ。
 今、この状況を打開する力を私は持っている。
 だけど……

「いや、お姉ちゃん……やめて……」
「……」

 私は涙を流した。
 苦しくて悔しくて、どうしてお姉ちゃんが私にそれを向けているのかを理解したくなかった。
 例え、お姉ちゃんが洗脳されていても家族だ。
 攻撃できるわけがない。だから……

「やめて、お姉ちゃん……」

 懇願する。
 やめてほしいと泣きながら、謝るように伝える。
 けど、その言葉はお姉ちゃんに届かなかった。

「優衣。うるさい」
「っ!!」

――バギュン! 

 部屋中に銃声が鳴り響く。
 その音が私の皮膚にこびりつく。

「ひっ!」

 怖い、まるで虫が全身を這うような感触がする。
 思わず武器を手放し、体中をさわりまくるけど実際にはいなく、ただの幻覚だとわからされる。
 嫌悪感でいっぱいになったところに、パァァンともう一発の銃声が聞こえる。

「ひゃぅ!? な、なにこれっ!」

 さっきまで気持ち悪かった感触が一瞬で取り払われる。
 まるで瘡蓋(かさぶた)を一気に引っ張って取り除いたような妙な感覚がした。

「あ、ぅぅ」

 ふと声が聞こえる。
 横目で確認するとそこには地面に倒れこんでいる藤堂さんがいた。
 どうやら、藤堂さんにも同じ感触が伝わっているらしく、全身を痙攣させている。

(あれ、理事長先生はどこに……)

 近くに理事長の姿はなく、気が付けば入っていた教師も姿を消していた。

「あっあっあっあっ」

 藤堂さんは蕩けた表情を浮かべて気持ちよさそうにしている。
 よくよく見れば、左手は胸に右手は股間をまさぐっている。

(いずれは……私も……)

 そう思うとぞわぞわする。
 期待じゃない。恐怖に支配されそうになる。
 奥歯が震えて、ガチガチと葉が音を立てる。

「……まだ、ダメなのですね」

 カチリッと引き金が惹かれる音が聞こえた。


 その後、何度も何度も無慈悲に繰り返される銃声に私は気が狂いそうになる。
 気持ち悪いと気持ちいを何度も強制的に上げ下げされて、自分が自分ではなくなりそうだ。

(も、もう、無理……」

 藁にもすがる気持ちでお姉ちゃんを見上げる。
 眉一つ動くことなく、無慈悲に見下ろされるお姉ちゃんに笑っていたころのお姉ちゃんを重ねた。
 
(そういえば、お姉ちゃん。まんじゅう好きだったよね)

 こんな時にどうでもいいことを思い出す。
 思い出すのはこの学園に来る前のお姉ちゃんとの日々。
 魔物ハンターのことを隠し、あまり一緒にいることは少なかったかもしれない。
 お姉ちゃんは家元の修行。私は魔物ハンター。それぞれの日々が重なることはあまりなかった。
 でも、しっかりと私の中でお姉ちゃんの思い出が残っている。
 二人でいつか都会に出ようって言った。子供をつくったらどっちがかわいいなんて話をした。
 だから、だから……

「お、ねえ、ちゃ」
「…………」

 喉が枯れ果てて、途切れ途切れに声を発する。
 視界がぼやけて、お姉ちゃんの姿が曖昧(あいまい)なる。
 
(ごめんね、お姉ちゃん)

 私の力が力尽きそうになったその時だった

「よく耐えたわね。優衣。あなたのおかげでなんとかなりそうよ」

 遠くの方で声が聞こえた。
 それが現実なのか。妄想なのかはわからなかった。

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