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1章

幼馴染の胸に信じられないものがありますー(棒)

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 ……目の前で、本当に信じられない。目の疑うような光景が繰り広げられます。
 さっきまで一緒にいたはずの雄くんが…………
 あれだけ私をカッコよく助けてくれた雄くんは……

(なぜ、女装をしているのでしょうか?)
「本当に大丈夫? 体調がすぐれないんだったら部屋に戻った方がいいよ?」
「い、いえ。雲母(きらら)ちゃん大丈夫です。ええ、はい。体調は大丈夫です」

 どちらかと言うと思考の方が問題になっています。
 が、そこで持ち直すのが私のいいところです。
 たとえ、予期せぬ事態に陥っても冷静を保つ。それが大事だと教わりっています。

 ……昨日はぜんぜん実践することができてないですが、まあ、それはご愛敬で。

 それにしてもこの状況……受け入れるにはものすごくきついです。
 どうして、雄くんは女装しているのか? そもそも女子寮に男子が入ってはダメじゃないのか?
 それ以前に、雄くんが縮んでいるように見えるし、心なしか声が高いような気もします。
 あー、駄目です。頭の仲が昨日からごちゃごちゃしっぱなしです。
 
(甘いものが……甘いものが……)

 テーブルの上を確認すると口直しのデザートのプリンがあります。
 最初からそれに手を付けるのは行儀が悪い気がしますし、その後にご飯を食べる気がしなくなりますが別いいです。

(プリンを食べて部屋に戻りましょう)

 そう思ってプリンに手を伸ばすと――――。

「はい。お姉ちゃん。これですね?」

 雄くんが横からプリンを手渡してくれます。
 私が手を伸ばしたプリンよりも上にさくらんぼやリンゴ。ミカンにバナナが乗っている豪華仕様の……て、これプリンアラモードだ。

「…………」
「どうしました? 顔色が悪いですよ?」

 誰のせいだと思っているんですか。の言葉を飲み込んで、受け取ったプリンを黙々と食べます。
 その間、隣では雄くんと雲母ちゃんが話しています。

「こんにちは。暁の優奈の双子の妹の雄です」
「ごきげんよう。私、優奈の親友の武井 雲母よ。めんどうだから雄って呼び捨てでもいい?」
「はい。紛らわしいのでそっちで呼んでもらえると助かります」
「わかったわ、雄。……で、その優奈の体調が」
「悪そうですね。ですので、少し部屋に連れて行ってきます。離れても大丈夫でしょうか?」
「いいわよ。周りには私が言っておくわ」
「ありがとうです」

 一心不乱にプリンを食べます。もう、プリンしか見えない。
 ああ、プリン。卵と牛乳でできあがるプリン。かぼちゃの入ったプリン。
 なぜ、あなたたちは私を魅了するの……。
 雄くんに運ばれながらも私はプリンを食べるのを辞めませんでした。

(ぷりん、おいしい……)




「お姉ちゃん……お姉ちゃん……。優奈ちゃん、起きて」
「っ! プリンは!?」
「さっき食べてたよ」

 指をさされた勉強机の上には白い皿。もとい、プリンが乗っていた皿があります。
 
「あれ、歓迎会は」
「抜けてきたよ。大丈夫? 優奈ちゃんなんだか様子がおかしかったけど」

「…………プリンを見つけたあたりから記憶がありません」
「そのプリン好きは変わらないのがすごいよ」
「失礼な。好物というだけです。そこまで執着はありません」
「昔からよく僕のプリンを食べていたよね」
「あれは置いてあったのを食べていただけです」
「名前を書いて容器を別に移し替えて、さらにロックしても外していたよね」
「………………」

 記憶にございません。というか、昔の私はそんなことをしていたのですか。
 さすがに7年近く前のことは鮮明に思い出せないのですが、雄くんは覚えているようです。

「って、そういえば雄くん。どうしてここにいるんですか!?」
「え、優奈ちゃんの看病に」
「そうじゃなくて……ここは女子寮ですよ! 男の子が入ってきたらダメな場所です!」

 ビシッと雄くんに指を突き付けます。
 気分は法律系ゲームの主人公です。
 ですが、証拠がそろってない時、確証がない時の主人公は弱いものと相場が決まっていました。

「うん。わかってるよ。だから、ほら揉んでみて」
「…………はっ?」

 突き出した指、もとい手を掴まれ、偽乳を触らされます。
 どうせ、こういうのはパットか何かで……

 ムニッ

 はっ?

「おっぱい。あるでしょ」

 はっ? はあっ? はああああああん!!??


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