牛小話 ～牛雑学 ときどき猫～

牛小話10 牛が産まれるのは

「牛が産まれてるよー」

　朝、一番早く牛舎に行く相方が母屋に戻ってきたなー、と思うと、たいていこの一言が発せられる。
　なぜか、うちの牛は大抵の場合、夜中～明け方前に産むんである。
　うちの立地は、牛舎のすぐ横に母屋おもやなので、牛の声がよく聞こえる。
　お産のときに鳴く牛も鳴かない牛もいるけれど、赤ん坊が産まれると周りの牛はほぼ必ず騒ぐので、寝ていてもその声で起こされる。……相方は。
　なんの加減なのか、同じ部屋で寝ている私は起きない。気付かない。
　同じ声でも、自分の子の泣き声なら、「んぎゃああっ」の前の「ふぇ」で起きるというのに、不思議なもの。
　逆に相方は、赤ん坊が夜泣きしてても大抵は爆睡しててくれたので、気が楽だった。
　いやいや、娘が成長痛にうなされてた数年、起きて対処してくれたのは相方だったから、やっぱり相方には足を向けて寝られない。
　そんなこんなで、心優しい相方は、ねぼすけな私を起こすことなく、いつも夜中に一人で子牛のへその緒を処理し、羊水で濡れた子牛を拭き、子牛スペースまで運んでくれるのだ。
　ありがたやありがたや。

　ってこんなこと書くと、次から起こされるかな？