340 / 360
14 トゥオネタル族
310 トゥオネタルのダンジョン4
しおりを挟むヤルモ&イロナVSベヒーモスの戦闘は、ヤルモがジリジリ前進して間合いに入ると、ベヒーモスの咆哮と共に開始する。
初手はベヒーモス。角を前に向けて、凄い速度で突っ込んで来た。
「重っ!?」
さすがは地下280階もあるダンジョンボスと同じ強さのレアボス。ヤルモの実力を持ってしても、ベヒーモスの角を大盾で受け止めると押し込まれてしまった。
「ぐおっ!?」
「偉そうなことを言っておいて、その程度か?」
そこをイロナが、ヤルモの背中を片手で受け止めてからのちょっとした説教。ヤルモはベヒーモスとイロナに押されて辛そうだ。
「ちょっと速度を見誤っただけだ。次は完璧に受け止める。とと……」
喋っている暇は与えてくれないベヒーモス。両腕に力を込めて、拳を落としまくる。
その猛烈な攻撃に、ヤルモは力だけでなく技で対応。少しだけ前に出たり下がったりしながら、攻撃の一番力が乗るポイントをずらしてしっかりと大盾で受け止める。
「オラッ! いまだ!」
「わかっている!」
ヤルモがベヒーモスの攻撃を弾き返した瞬間、合図の前にイロナは動き出す。そしてベヒーモスの右から斬り付け、大ダメージを与えた。
「うおおぉぉ~!!」
このままではイロナがターゲットになるので、ヤルモはロケット弾を連射しつつ、ベヒーモスの足をバズーカでぶん殴る。
ベヒーモスは顔面に五発のロケット弾を喰らったがダメージは少ない。だが、目を眩ますには十分。そこにきつい一発を足に喰らったので、ベヒーモスはヤルモを睨んだ。
「フンッ!」
ベヒーモスがイロナから目を離すと、連続斬り。またしてもイロナにベヒーモスのターゲットが移ったがすぐにヤルモの後ろに戻ったので、攻撃はヤルモが大盾で引き受ける。
「その調子だ!」
「なんだかな~」
ヤルモとしては、最高のデキ。イロナとしては、簡単すぎるのでイマイチ。しかし、今回はヤルモの作戦通り動く約束をしているので、イロナは指示に従ってくれている。
ヤルモは上手く受けてはいるが、ベヒーモスの攻撃力は本物だ。少しずつだがHPは減っている。しかしヤルモのHPは膨大なので、いまのところ回復アイテムの出番は無し。
でも、ダメージの減少は少なくしたいのか、他の対策。ベヒーモスが攻撃するタイミングで、ロケット弾を放って顔にぶつける。
これで三回に二回はHP減少はゼロ。今度はMPの節約方法を考えながら戦い続ける。
その間もイロナはヒットアンドアウェイでベヒーモスのHPをガンガン減らしていたので、ヤルモが思っていたより早く、ベヒーモスの【発狂】が発動するのであった。
ベヒーモスの【発狂】は、炎を撒き散らしながらの暴れ牛状態。真っ直ぐヤルモに向かって来る場合もあるが、ほとんどヤルモに当たらずに走り去り、戻るを繰り返している。
「ほとんど時間稼ぎだな」
「うむ……」
「イロナなら正面から向かい撃てるんだろうけど、俺が止めてから足を狙ってくれ」
「はぁ~~~」
やはりヤルモの作戦にイロナは乗り気ではない。しかし反論はせずにため息だけだったので、ヤルモは肯定と受け取って最後の戦いに挑む。
ベヒーモスが切り返してヤルモの近くを走り抜けるコースを見定めると、ヤルモはドタドタ走ってどっしり構える。
予定通りベヒーモスが正面から走って来たら、ヤルモはロケット弾を乱射。プラス、バズーカからエネルギー波を放ってベヒーモスの推進力を削る。
「ぐおおぉぉ!!」
「チッ……」
ヤルモが声を張り上げてベヒーモスの突撃を大盾で止めると、イロナは舌打ち。失敗を望んでいたようだが、瞬く間にベヒーモスの右足と左足を斬り落とした。
「一気に仕留めろ!!」
「はいはい」
ここまで来たら、もうイロナはやる気なし。ヤルモは正面からベヒーモスの攻撃を大盾で受けているから大変だけど、イロナがベヒーモスの背中を斬りまくってくれたので、すぐに決着となるのであった。
「フゥ~……しんど。やっぱ、トゥオネタルのラスボスは他と全然違うな」
ベヒーモスが倒れると、ヤルモもその場に腰を落とし、戻って来たイロナに目を向けた。
「せっかくのレアボスなのに、主殿のせいで興醒めだ」
ヤルモとは違い、イロナは楽すぎて手応え無し。頬を膨らませている。
「そんな顔するなよ~。俺だって魔王と戦う前に練習しときたかったんだ。どれぐらい強いかわかっていないと、イロナを守れないだろ」
「我を守る、か……」
「そうだ。もしもの時は俺を捨てて、カーボエルテまで逃げろ。イロナさえ生き残れば、世界は守られるはずだ」
ヤルモの作戦はこうだろう。カーボエルテ王国にはクリスタかいる。イロナでも倒せなかった魔王ならば、クリスタが世界中の勇者パーティを集めてくれる。
その戦力と、敗北を知ってレベル上げをしたイロナなら確実に魔王を倒してくれると……
「主殿……我のために死ぬ気なのか?」
まさかヤルモが自分のために命を差し出そうとしていると知って、あのイロナでも驚いている。
「イロナと結婚式ができないのは残念だけど、イロナが死ぬよりマシだ。先に言っておく……こんな俺と愛し合ってくれてありがとう」
ヤルモが頭を下げるとイロナは……
「そんなのダメ~~~!!」
涙ながらの抱擁。ヤルモが男気を見せたから、イロナは初体験だったので感動したのだろう。
「ごふっ!? し、死ぬ……」
その抱擁は、ヤルモでも死ぬレベルのタックルと締め付けだったので、瀕死の重傷となるのであったとさ。
0
お気に入りに追加
316
あなたにおすすめの小説
試される愛の果て
野村にれ
恋愛
一つの爵位の差も大きいとされるデュラート王国。
スノー・レリリス伯爵令嬢は、恵まれた家庭環境とは言えず、
8歳の頃から家族と離れて、祖父母と暮らしていた。
8年後、学園に入学しなくてはならず、生家に戻ることになった。
その後、思いがけない相手から婚約を申し込まれることになるが、
それは喜ぶべき縁談ではなかった。
断ることなったはずが、相手と関わることによって、
知りたくもない思惑が明らかになっていく。
【完結】言いたくてしかたない
野村にれ
恋愛
異世界に転生したご令嬢が、
婚約者が別の令嬢と親しくすることに悩むよりも、
婚約破棄されるかもしれないことに悩むよりも、
自身のどうにもならない事情に、悩まされる姿を描く。
『この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません』
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます
藤なごみ
ファンタジー
※コミカライズスタートしました!
2023年9月21日に第一巻、2024年3月21日に第二巻が発売されました
2024年8月中旬第三巻刊行予定です
ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。
高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。
しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。
だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。
そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。
幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。
幼い二人で来たる追い出される日に備えます。
基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています
2023/08/30
題名を以下に変更しました
「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」
書籍化が決定しました
2023/09/01
アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります
2023/09/06
アルファポリス様より、9月19日に出荷されます
呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております
2024/3/21
アルファポリス様より第二巻が発売されました
2024/4/24
コミカライズスタートしました
2024/8/12
アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です
【完結】会いたいあなたはどこにもいない
野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。
そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。
これは足りない罪を償えという意味なのか。
私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。
それでも償いのために生きている。
前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます
当意即妙
BL
ハーララ帝国第四皇子であるエルネスティ・トゥーレ・タルヴィッキ・ニコ・ハーララはある日、高熱を出して倒れた。数日間悪夢に魘され、目が覚めた彼が口にした言葉は……
「皇帝なんて興味ねえ!俺は魔法陣究める!」
天使のような容姿に有るまじき口調で、これまでの人生を全否定するものだった。
* * * * * * * * *
母親である第二皇妃の傀儡だった皇子が前世を思い出して、我が道を行くようになるお話。主人公は研究者気質の変人皇子で、お相手は真面目な専属護衛騎士です。
○注意◯
・基本コメディ時折シリアス。
・健全なBL(予定)なので、R-15は保険。
・最初は恋愛要素が少なめ。
・主人公を筆頭に登場人物が変人ばっかり。
・本来の役割を見失ったルビ。
・おおまかな話の構成はしているが、基本的に行き当たりばったり。
エロエロだったり切なかったりとBLには重い話が多いなと思ったので、ライトなBLを自家供給しようと突発的に書いたお話です。行き当たりばったりの展開が作者にもわからないお話ですが、よろしくお願いします。
2020/09/05
内容紹介及びタグを一部修正しました。
【R18】らぶえっち短編集
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)
R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。
※R18に※
※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。
※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。
※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。
※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる