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14 トゥオネタル族
302 トゥオネタル族の里4
しおりを挟む決闘を開始して一時間……
「もう諦めたらどうだ?」
同じ回数の攻撃を喰らったのにヤルモは涼しい顔で立っており、ペッコはボロボロで立っているのもやっと。それでもペッコは前に出続けていたので、ヤルモは降伏勧告をした。
「はぁはぁ……誰が諦めるか!」
「何時間やろうとも、結果は同じだ」
「フンッ……わかっているんだぞ。はぁはぁ」
「あん?」
「お前、鈍足だろ? はぁはぁ……だからお前は待ちの戦いをするしかないんだ」
さすがに長時間も戦えば、ヤルモのスペックぐらいは言い当てたペッコ。喋っているところに、ヤルモが攻撃して来たらラッキーまでを考えている。
「別に攻撃が苦手なわけではないんだがな~……」
「じゃあやってみろ! 今度は俺がカウンターを入れてやる!!」
「しゃあねぇ……」
ドーーーンッ!
っと、バズーカ発射。ヤルモは正面から撃ったのに、ペッコは飛び道具は予想していなかったのでまともに受けてしまった。
「ケホッ……き、汚いぞ!!」
「チッ……頑丈なヤツだな」
まともに入ったように見えたが、ペッコの両手の防御は間に合ったのでダメージは低い。
「これでどうだ!」
ドーンッ! ドドーーンッ! ドドドーーーンッ!
続きましては、右肩から発射されるロケット弾。危険だから人間には使えないし人には見られたくない技でも、トゥオネタル族にならば大盤振る舞い。
防御力が高いから死にはしないだろうし、例え戦車モードを見られたとしても集落から出ないだろうから、ヤルモの秘密も広められないので使っても問題ないと判断したようだ。
ロケット弾乱射に晒されたペッコは、最初は避けていたけど亀になるしかない。ロケット弾には追尾機能が付いているので、下手に避けると急所に入ってよけいダメージが入るからだ。
「化け物かよ……これも喰らえっと」
ダンジョンの最下層にいる巨大モンスターでもこれだけのロケット弾を喰らえば倒れるのだから、ヤルモの意見は正しい。でも、容赦なし。バズーカからガスバーナーのような青いエネルギー波を発射した。
「これも効かない……いや、効いてるはずだ」
ヤルモがよく見ると、ペッコの腕には抉れたようなあとが多数あるので、何かがおかしく感じた。
「クソッタレ~~~!!」
その瞬間、ペッコは防御を解いて攻撃に移る。ロケット弾を拳とメイスで叩き落としながらの特攻だ。
しかし、それは一番始めにやった攻撃。爆風が吹き荒れるなか、ヤルモはペッコの攻撃を盾でいなして、バズーカで地面に叩き付けた。
「ナビ。撃ち続けろ!」
『ファイアー』
そこに、ロケット弾の追い討ち。ペッコを連続する爆発で地面に張り付ける。そして、ヤルモはアイテムボックスから液体の入ったビンを取り出した。
「これなら効くかな?」
ロケット弾を止めた瞬間に、ヤルモは液体をペッコの背中にぶちまけた。
「あっちぃぃ~~~!?」
「やっぱり……」
ペッコが飛び跳ねてゴロゴロのたうち回るほどのダメージが入ったので、ヤルモは予想通りだと頷く。
「今度は何しやがった!」
「この水を掛けただけだ」
「な、なんだその禍々しい色の水は……」
「これのどこが……お前にはそう見えるのか?」
「ち、近付けるな! 目が焼ける!!」
ヤルモがビンを近付けただけで、ペッコは明らかに動揺。動揺を通り越して体が震えている。
「こ~んなに持ってるんだけどな~?」
「やめろ~~~!!」
「じゃあギブアップするんだな」
「うっ……ううううう……」
ヤルモがジャラジャラとビンを並べただけで、ペッコは戦意喪失。
「負けました……」
こうしてヤルモの勝ちは決まったのだが、トゥオネタル族は何がなんだかんわからないのであった。
「主殿。いったいぜんたいどういうことだ?」
「貴様~~~!! 神聖な決闘に何しやがっ……ごほっ!?」
勝敗がついたのでイロナがヤルモに近付くと、トピアスが納得いかないと飛び掛かった。けど、イロナに腹を殴られてその場に膝を突いた。
「あ~……こいつ、ゾンビだぞ」
「「「ゾンビ??」」」
ヤルモがペッコを指差して説明しても、イロナとトピアスだけでなく、ゾンビのはずのペッコまで首を傾げてる。
「さっきこいつに掛けた液体は、聖水だ。アンデット系に効くのは知ってるだろ?」
「「「まあ……」」」
またしても三人は首を傾げているところを見ると、あまり使ったことがないようだ。
「いつの時点かはわからないけど、こいつはゾンビにかじられて、ちゃんとした処置をしなかったからゾンビになったんだ。だからイロナが殺しても殺しても死ななかったんだよ」
「「「ああ~~~」」」
ここで三人はようやく納得。おそらくだが、イロナは死ぬほどの攻撃をしたと自覚があり、ペッコも不思議に思ったことがあり、トピアスもその現場を見たことがあるのだろう。
しかし、謎は残っている。
「ゾンビのわりには血色はいいし、腐臭もしないぞ?」
「まぁそこは俺にもわからないけど、種族のせいかも? 体は頑丈だし生命力があるせいか。はたまた気合……職業が関係しているのかもな」
ヤルモは可能性を羅列してみたが答えはわからない。事実はその全てが絡み合って奇跡的に脳までゾンビウィルスが届かなかったのだが……
「それは違う! 全て、いっちゃんへの愛の力だ~~~!!」
まぁ、許嫁気分のペッコならこう言うわな。
「ぶべっ!?」
そして、ヤルモ、イロナ、あとゾンビに娘を嫁がせるわけにもいかないトピアスにも、ペッコはどつかれたのであったとさ。
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