284 / 360
11 アルタニア帝国 帝都2
259 友情4
しおりを挟むヤルモと殺人ロボがロケット弾を撃ち合っていたら、イロナが両方のロケット弾を持って来たので、オスカリたちは逃げて行った。
「情けない……フンッ!」
その姿を見たイロナはキレていたが、両手に持っていたロケット弾を遠くに投げ捨てた。
ロケット弾が変なところで爆発すると、オスカリたちは戻って来てギャーギャー文句……を言いたかったところだが、イロナが怖いのでやんわりとした文句に変える。
「危ないだろ。そういうのは、せめて言ってからやってくれよ」
「爆発が広がる前に投げるのだから、危険などあるはずがなかろう」
「ん? 爆発が広がる前って……破裂してから投げたのか!?」
「そう言っているのだ」
ありえない動体視力と反射神経の為せる業。イロナはロケット弾が裂けるのを目で確認してから遠くに投げていたのだから、オスカリパーティが驚きすぎてもおかしくない。
「もう一度持って来るから逃げるなよ? 逃げたら……わかってるな??」
「「「「「はい……」」」」」
イロナに殺気を放たれて脅されたら、オスカリパーティはイエスと言うしかない。その返事を聞いたイロナはダッシュで、ヤルモと殺人ロボが放ったロケット弾を持って来るのであった。
「どうだ?」
「どうと言われても……似てるとしか言いようがないな……うおっ!?」
オスカリたちにロケット弾を見比べさせたが、早くも爆発。その前にイロナは遠くに投げたので、勇者パーティは驚くだけであった。
「こっちはどうだ? ちょっと潰れているが」
イロナが次に取り出したのは、弾丸。右手にヤルモ、左手に殺人ロボの弾丸が乗っている。これも素早くキャッチした物だ。
「これも似てるな……つまりヤルモは、モンスターの職業に就いたってことか?」
「それはわからん。だが、何かに似ていると思っていた謎が解けた」
「あ~……その確認で、あんな危険なことをしたのか」
オスカリ納得。どうやらイロナは、前々から殺人ロボとヤルモの攻撃方法が似ていると思っていたが、たまにしか出現しないからなかなか思い出せずにモヤモヤしていたようだ。
「しっかし、ヤルモもよく一人で戦えるな。俺でもそんなしんどいことやらないぞ」
イロナの確認が終わると、ヤルモVS殺人ロボの戦闘に目を戻したら接近戦となっていたので、オスカリは仲間内で喋っている。
「あの程度なら、お前でもいけるだろ」
しかしその会話はイロナに聞かれており、話にも入って来たのでオスカリは嫌な汗が出て来た。
「いや、ほら、勝てるけど、冒険者ってのはパーティで戦うモノだから……」
「ということは、ラスボスと一対一で戦ったことがないのか……」
「あるぞ! 何度かある!!」
オスカリは嫌な予感が働いたので、嘘をつく。いや、本当は中級辺りのダンジョンボスとは一対一で何度か戦ったことがあるので、嘘ではない。
「ならばいけるな?」
「えっ……」
しかし、イロナにはどっちでもいいこと。オスカリの首根っこを掴んだ。
「待った! 心の準備が~~~!!」
というわけで、オスカリはイロナに引きずられて殺人ロボの前に連れて行かれるのであったとさ。
「主殿。交代だ」
「ん?」
ヤルモが渾身の一撃を放って殺人ロボを後退させ、大盾を構えて一息ついていたら、イロナの声が聞こえたので振り向いた。
「あとはイロナがやってくれるのか?」
「我ではない。こいつだ」
「よっ……」
「お前……」
イロナがオスカリの首根っこを掴んだまま持ち上げると元気なく挨拶。その顔を見て、ヤルモはすぐに答えがわかった。
イロナがオスカリひとりに戦わせようとしていると……
「ま、お前なら大丈夫か」
「そこは心配して止めるとかないのか?」
「俺がイロナを止められると思っているのか??」
「無理を承知で言ってんだよ!」
「知るか! さっさと行け!!」
「お前……あとで覚えてろよ!!」
「俺に言うな!!」
二人でギャーギャー言い合ったら、オスカリひとりで突撃。ヤルモはジリジリ後退し、イロナと共に戦闘を楽しむのであった。
* * * * * * * * *
オスカリはヤルモの後ろから飛び出すと、殺人ロボがヤルモをロックオンしている内に横に回り込み、剣を振りかぶる。
「Vスラッシュ!!」
からのスキル発動。オスカリの会心の一撃は、殺人ロボをVの字状に傷付けて吹っ飛ばした。
「まだまだ~!!」
距離が開いてしまうと遠距離攻撃が来るので、オスカリは直ぐさま地面を蹴って殺人ロボに斬り付け。横に移動し、回りながら剣を振り続ける。
その攻撃は、殺人ロボの常に左側から加えられるので、左腕の機関銃を使えずに戦いにくそうにしている。しかしながら殺人ロボも馬鹿ではないので、フェイントを入れ始めた。
「おとなしく喰らってろ!」
その場合は、オスカリは力業。会心の一撃でフェイントを捩じ伏せ、常に優位に戦い続けるのであった。
* * * * * * * * *
「おお~。イロナほど華麗じゃないけど圧倒してるな」
オスカリVS殺人ロボの戦闘を見ていたヤルモはイロナと喋っていた。
「うむ。これぐらいやってもらわねば我が困る」
「かわいそうに……」
イロナが困る理由はまったくないのだが、ヤルモは察して哀れんだ目をする。オスカリとタイマンで殺し合いをしたがってると気付いて……
「おっ。発狂だ……。おお~。すんげぇ。殺人ロボの懐から離れないように戦ってる」
殺人ロボはヤルモと戦っていたことでHPがかなり減っていたので、攻撃力の高いオスカリが攻撃したことで早くも【発狂】に突入。
自分の持つ武器を乱発してはちゃめちゃな攻撃をしている殺人ロボだが、オスカリはその攻撃を当たらない場所に位置取りながら、ずっと剣を振り続けている。
「勘か……いや、経験か。それなりの死線は越えているのかもな」
「どうだろうな~……」
イロナの発言に、ヤルモは考えてしまう。もしかしたらその死線は、イロナと戦った時に培った物ではないかと……
「終わりだ」
「さすがは勇者。俺ではこんなに早く倒せん」
こうして殺人ロボは、勇者オスカリに斬り裂かれ、ダンジョンに吸い込まれて行くのであった。
10
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星河由乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる