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10 アルタニア帝国 帝都1

240 帝都のその後4

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 特級ダンジョンから戻った翌日、ヤルモとイロナはお昼過ぎになって、ようやく起床。これはダンジョンの疲れのせいで寝坊したわけではなく、夜遅くまで楽しんだせいからの大寝坊だ。

「昨日は凄かったな」

 それがよかったのか、イロナはベッドの中のヤルモに抱きついて褒めている。

「う、うん。グギギ……痛いんだけど?」

 しかし、万力のように力が入っているのでヤルモが細くなる。

「我に嘘をついた罰だ」
「な、なんのこと??」
「ほう……とぼけるのか。これは、もっと酷い罰がひつよ……」
「すいません! 俺が悪うございました!!」

 昨夜は二度もイロナを騙して気絶に追い込んだのだから、イロナはオコ。殺されると察したヤルモは誠心誠意土下座。すると、イロナは笑顔でヤルモを起こした。

「まぁ昨日は凄く気持ち良かったから、これで許してやる」
「これって……デコピン??」
「うむ。デコピンならちょっと痛い程度だろ?」
「いや、イロナがやったら死ぬって~~~!!」

 最強のイロナがやっては、ただのデコピンが必殺技。常人なら頭爆発。勇者クリスタなら即死。オスカリでも瀕死の重傷。
 そんな攻撃を「ドッコーーーン!」と食らったヤルモは、高い防御力のおかげで気絶。なんとか死を免れたヤルモであったとさ。


 昨夜は楽しみ過ぎてお互い汗だくのまま寝たので、昼食の前にお風呂。気絶中のヤルモはイロナに体を拭かれて、痛みのせいで飛び起きていた。
 それからなんかそんな気分になった二人は「ハァハァ」してから食堂に顔を出したら、昼食を終えて談笑していた勇者パーティが一斉に立ち上がった。

「ヤルモ。ちょっとこっち来い」
「なんだよ」

 オスカリが肩を組もうとして来たのでヤルモは払い除けたが、勇者パーティ全員で囲んでいたので逃げられず。ヤルモは食堂の端に拉致られた。

「昨日はお楽しみだったようだな……」
「あん? また覗いてやがったのか!?」
「ちげぇよ! 嬢ちゃんの声が聞こえて眠れなかったんだよ!!」

 どうやらヤルモが拷問されている声はタオルを噛んでいたから聞こえなかったようだが、イロナの感じる声は口を塞いでいなかったから、けっこう離れた部屋まで聞こえていたみたいだ。

「こっちは悶々もんもんとして眠れなかったんだぞ!」
「そ、それは、すまん……」

 ヤルモ、平謝り。しかし、どんなプレイかは聞かれても一切答えない。

「チッ……あともうひとつ。静かになる前に、勝者の雄叫びみたいなのが聞こえたんだけど、アレってなんだったんだ??」
「す、すまん」
「プレイはいいから、それだけは教えてくれ! 今日も眠れないだろ!!」
「言ったらイロナに殺されるから無理だ」
「頼むって~」

 イロナを気絶に持ち込んだと自慢したいヤルモでも、そんなことを言ったら最後、死しか待っていない。いくらオスカリたちが頼み込んでも、口を割らないヤルモであった。


 勇者パーティから逃げ出したヤルモは、先に昼食を食べていたイロナの隣に座ってガツガツ食べる。イロナはお腹がいっぱいになったら、ヤルモに餌付け。ぽいぽい口に放り込んでいる。
 勇者パーティはヤルモたちの前の席に座って、食後のお茶を飲みながら世間話。ヤルモたちの食事が終わったら、オスカリが切り出す。

「俺たちは明日、上級に潜るけど、お前たちはどうするんだ?」
「う~ん……三日ほど休んでから特級に行こうかな?」

 イロナが頷くと、オスカリも頷く。

「じゃあ、地図だけは頼むな。ヤルモたちが特級に潜る日までに戻れないだろうし、俺の部屋にでも置いておいてくれ」
「ああ。わかった」

 今後のスケジュールを確認したら、忘れていたサキュバス魔王の魔石の買い取りの話。ヘンリクもヤルモのお願いが面倒なのか、城にあった魔石を売るていで隠蔽するとのこと。ヘンリクが商業ギルドに魔石を持ち込んでくれるようだ。
 それならば騙されて安くなることはないかとヤルモも思ったが、念のため金額だけ聞いて、売るのは後日にするようだ。たぶん、まだヘンリクのことが信用できないのであろう。

 それからイロナと共に自室に戻ってもうひと眠り。深夜までヤっていたから眠いみたいだ。


 時刻は夕方……

 二人の部屋にノックの音が響き、ヤルモは寝惚け眼を擦りながらドアを開けた。

「よっ!」

 そこには、勇者パーティ勢揃い。オスカリが陽気に挨拶しているよ。

「メシか?」
「いや、飲みに誘いに来たんだ」
「んなもん、食堂で待ってればいいだろ」
「今日から酒場が開いたんだよ。ここだけの話……」

 オスカリはニヤニヤしながらヤルモに耳打ちする。

「かわいい子ちゃんにお酌してもらえるぞ~?」

 そのお誘いにヤルモは……

「いらん。お前たちで行って来い」

 冷たく拒否。しかし、オスカリは引く気がない。

「まぁそう来るよな。野郎ども! ヤルモを連れて行け!!」
「「「「おう!!」」」」
「なっ! やめろ!!」

 ヤルモ拉致事件発生。大魔導師リストと賢者ヘンリクの麻痺魔法ダブル掛けで動けなくなったヤルモは、パラディンのトゥオマスと魔法剣士レコに抱えられて連れさらわれるのであった。

「なんだそれは?」

 当然、イロナが救出に動こうとしたが、オスカリがジャンピング土下座をしたので動きは止まった。

「今日だけ! 今日だけヤルモを貸してくれ! 頼む!!」
「どういうことだ?」
「男どうしで飲むってのは、大事なコミュニケーションなんだ。それを快く許してやるってのが、いい妻だろ?」
「いい妻……我がか??」
「そうだ。たまには羽を伸ばさせてやれ。変な女が近付いて来たら、俺たちが追い払ってやるからな。な?」

 いい妻と言われたイロナは悪くない気分になって、ヤルモの貸し出しを許可する。オスカリがヤルモを誘う際、「かわい子ちゃんがいる」と言ったことを気付かずに……
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