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10 アルタニア帝国 帝都1
230 特級ダンジョン8(アルタニア帝国)
しおりを挟む「やっぱり四天王のフロアに変わってる……」
地下159階は、長い一本道と、その道中によっつの大きな扉のある四天王フロア。魔王発生が嘘であって欲しいと祈っていたヤルモは肩を落とす。
「まずは門番をやるぞ!!」
しかし、イロナはノリノリ。いま倒しても復活するだけであとから倒せば楽ができる、一番奥の扉を守るモンスターに突撃して行った。
イロナの速度についていけないヤルモは、遅れて一番奥に辿り着く。
「えっと……大魔人かな??」
門番の正体は大魔人。石でできた巨大な体がバラバラになって転がっているので、ヤルモは当たりを付ける。
「次は四天王だ!!」
「う~い」
だが、イロナには関係ないこと。来た道を戻り、一番近くの扉から部屋に入るのであった。
「レジェンドドラゴンだ!!」
四天王第一弾は、金色の巨大なドラゴン。モンスターの中でも最上位種に位置するドラゴンなのに、四天王になったことで倍は強くなっていると思われる。
「また綺麗に首を斬ったな~」
しかし、これまた楽勝。ドラゴンならばイロナの目の色が変わるので、ヤルモは取られても文句はない。パチパチと手を叩きながらイロナに近付いた。
「う~ん……ここが少し汚いな。やはり、剣の長さが足りなかったか」
それなのに、イロナは納得してない。お気に入りのロングソードではなく、レジェンドの普通の長さの剣を使ったから断面に荒さがあるらしい。ヤルモにはわからない作品のこだわりがあるみたいだ。
「ま、つぎ行こうぜ」
「うむ!」
ドロップアイテムを回収したら、次の部屋へ。
「ぐっ……ザコか……」
「いや、アレはヤバくない??」
四天王第二弾は、カイザーゴースト。見た目はとぼけた顔をした赤黒い幽霊なのだが、煙のように漂う体は物理攻撃を受け付けないのだ。しかし、イロナとヤルモの意見は相違。ヤルモも戦いたくないらしい。
「主殿に譲ってやる」
「えっ!? 俺、アイツ苦手なんだけど……剣、効かないし……」
「剣が効かない?? そんなわけないぞ」
「はい??」
またしても意見の相違。ヤルモでも知らないゴーストの弱点があるようだ。
「仕方がない。少し見本を見せてやる」
ここでイロナ先生のゴースト攻略法講座。無防備にカイザーゴーストに近付いて行くと、戦闘が始まった。
「と、いう感じだ」
「はい??」
カイザーゴーストがおよそ八割ぐらいの大きさになったらイロナが戻って来たのだが、ヤルモには意味不明。
「見てたのだろう?」
「見てたけど……普通に剣を振ったとしか……」
「そうだ。ヤツが霧散する前に斬ってしまえばダメージが入るのだ」
「それ、イロナしかできないヤツぅぅ~!!」
パワーファイターのヤルモには真似しようがない。勇者オスカリでも無理。イロナの剣速ならではの攻略法。
「何が我しかできないだ。やってみろ!」
「うわっ!」
なのに、イロナは酷い。ヤルモの背中をバシンッと叩いて突撃させた。
「つつつ……しゃあねぇ。やるだけやってみるか」
というわけで、ヤルモVSカイザーゴーストとの戦闘の開始。ヤルモは剣を振り続ける。
「やっぱ、まったく手応えがない。おっと」
イロナをマネても、カイザーゴーストにダメージは無し。逆に雷魔法の反撃を受けるヤルモ。
「おっ! さすがレジェンドの盾。痺れがまったくないな」
呪いの大盾大活躍。普通なら雷魔法なんて盾で受けたら、手が痺れて使い物にならなくなるのにダメージはゼロ。ヤルモでもピリッと来る威力でも、まったく効かないので嬉しい誤算だ。
「これでどうだ!!」
お互いダメージゼロなので、ヤルモは作戦変更。中華包丁のような剣の腹をブンブン振り回して攻撃してみる。
「う~ん……わっかんねぇな」
これは風圧でカイザーゴーストが散り散りになっただけ。やはり、イロナのように戦えない。
「しゃあねぇ……気が進まないが、アレをやるしかないか」
ヤルモはゴーストと戦うのが苦手なだけで、倒せないとういわけではない。
「くぅ~! もったいねぇ。どんだけ掛かんだろう……」
補助アイテムを使うのに気が引けていただけ。聖水をドバドバ剣に振り掛けて使うのが、ケチなヤルモは許せないのだ。
「あ~。もう! さっさと死ぬよ!!」
さらに、カイザー級で四天王となれば、出費が嵩む。いちおうヤルモの剣は効くようになったが、何度も聖水を振り掛けないといけないからヤルモも苛立っている。
「そうだ! ナビ。ビームだ!!」
『ビーム発射、5秒前……』
「アガガガガ……」
『2、1。ファイアー』
そこで思い出した、新技の炸裂。アゴが外れて痛いが、カイザーゴーストを吹き飛ばす太いビームを発射して、トドメを刺すヤルモであった。
「なんだ。我の見本がまったくできてなかったぞ」
カイザーゴーストを倒したら、アゴをムリヤリ嵌めて擦っていたヤルモに、イロナ先生の説教。
「俺の剣速じゃ無理だって~」
なので、泣き言。ついでにヤルモは殺さないでくれと懇願している。
「もういい。それに、ドラゴンみたいなブレスは見物だ。この首も……クックックックッ」
「俺はドラゴンじゃないからな!?」
いちおう許してくれたイロナだが、ヤルモの首を撫でながら笑うので、いつか首を刎ねられるのではないかと恐怖するヤルモであったとさ。
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