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09 アルタニア帝国

187 ケミヤロビの町4

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 ケミヤロビに襲来したモンスターを一掃したヤルモたちは、移動すると勇者オスカリたちと合流するのは難しいと考え、使いを送って外壁の上で待っていた。

「やっと来たか」
「わりぃわりぃ」

 オスカリたちはアルタニア兵にチヤホヤされて上がって来るのが遅くなったのに、そのことをヤルモがボヤイても軽い。
 その態度を見てヤルモは何を言っても通じないと察し、マルケッタに人払いさせて、手に入れた情報を共有する。

「ヴァンパイアロードが喋っただと……」
「俺と賢者も少し喋ったから間違いない。自分のことを指揮官だとも言っていたらしいし、他にも喋るモンスターがいると仮定したほうがいいだろう」
「てことは~……その指揮官ってのが複数いる可能性があるんだな」
「だな。その辺の対応はそっちで考えてくれ」
「また丸投げかよ~」

 適材適所。この手のことは賢者ヘンリクのほうが優れているので、オスカリは文句を言いながら話し合おうとする。

「ちょっと待った。これから皇帝との謁見がある。そっちを先に話し合おう」
「あ~……うちもマブダチからいろいろ言われてるんだった。てか、ヤルモもちょっとは喋れよ」
「できるだけな」

 こちらもオスカリに丸投げしたいヤルモであったが、そういうわけにもいかない。ざっくりとした担当を決め、軽く手持ちの携帯食を腹に入れてから移動を開始するのであった。


 マルケッタを使い、待たせていた将軍に案内を任せ、馬車に分かれて乗り込んで進めば、この町の領主の館へ到着。ここに皇帝が滞在していることもあり、兵士が取り囲んでいた。
 その兵士には将軍が軽く説明すると、案内役がついて中へと通される。そうして領主邸の中に設けられた玉座の間まで進むと、将軍、マルケッタ、勇者パーティと順に入り、最後はヤルモとイロナが腕を組んで入った。

「頭が高い! 皇帝陛下の御前であるぞ!!」

 老齢の皇帝の前まで進んだら、将軍以外は立ったまま。なので、アルタニア帝国の宰相である太った老人に怒鳴られた一行。
 ヤルモはひざまずこうかと思ったが、勇者パーティは動こうとしないので、後ろに隠れたまま様子を見る。

 すると、オスカリが頭をポリポリ掻きながら口を開いた。

「すんませんねぇ。うちら、田舎者の集団なんだ。そういった礼儀にうといんだ」
「これだから他国の者は……」
「てかよ~……そっちが俺たちを頼ったんだろ? なのにこの扱いはどうよ?? まずは、来てくれてありがとうじゃねぇのかよ」
「フンッ……最低限の礼儀も守れない者に感謝するわけがなかろう」

 ファーストコンタクトは、お互い喧嘩腰。そのやり取りを鋭い眼光で黙って見ていたアルタニア帝国皇帝は、オスカリではなくマルケッタに向けて声を掛ける。

「マルケッタ。お前の立つ位置はこちら側だ。何故、動かない?」
「………」

 マルケッタは魔法で行動を縛られているので、皇帝の言葉に返すこともできない。なのでヤルモがコソコソと前に出て、耳打ちして喋らせる。

「お父様。カーボエルテ王、並びにユジュール王から書状がありますわ。まずはそちらに目を通してください」

 ヤルモが二通の書状をマルケッタに握らせると、皇帝からの質問が来る。

「その男は何者だ?」
「……カーボエルテで雇ったS級冒険者ですわ」
「何故、毎回耳打ちされているのだ?」
「……それはカーボエルテ王の書状を読んでくれればわかりますわ」
「……持って来い」

 マルケッタの行動の理由が気になる皇帝であったが、質問してもらちが明かないので、将軍に指示を出して二通の書状を受け取る。

 まずはカーボエルテ王の書状。少し読んだだけで皇帝は怒りを込み上げ、最後まで読んだあとには顔を真っ赤にしていた。
 それでマルケッタの異変の理由はわかったのだが、ユジュール王の書状にも目を通し、さらに怒りの炎を燃やしたような顔となった。

「つまり、両国は、我がアルタニア帝国と戦をしたいのだな……」

 手紙の内容は両国とも、最強パーティを貸してやるから身を引いて幼い第七王子に王位を譲り、両国から派遣された者を側近として受け入れるようにと書かれている。
 そのことを約束できないならば、最強パーティは撤退させる。さらにはカーボエルテ王の秘術でマルケッタを縛っていることも。これで、聖女の交代も勇者の任命もできなくなるのだが……

「マルケッタを人質に取ったからといって、ちんが引き下がるとでも思っているのか!」

 皇帝は激怒して引くことを知らない。

「ま、予想通りの答えだわな」

 しかし、オスカリは冷静なもの。ヤルモは……マルケッタの後ろに隠れているよ。

(めっちゃ怒ってるし~! あのオッサン、何書いてるんだよ!! てか、最初からこれが狙いじゃね? ふざけやがって……)

 そして、カーボエルテ王に嵌められたと心の中で文句を言ってた。

 そんなヤルモとは他所に、オスカリと皇帝の話は続く。

「ぶっちゃけ、俺たちはアルタニアなんてどうでもいいんだ。このまま帰って、滅んでから魔王を倒しに来たらいいんだからな」
「ならば立ち去れ!!」
「……アレ??」

 続くと思えたが、皇帝の答えはオスカリの思っていたものと違っていたので少し止まる。おそらく、これで折れると思っていたのだろう。
 なので、賢者ヘンリクにゴニョゴニョと相談して、オスカリは言い放つ。

「しゃあねぇ。こんな君主じゃ民のためにならない。この場で暗殺するしかないな」

 そして、まさかの暗殺宣言。

(大雑把すぎますわ!!)

 からの、マルケッタの心の中のツッコミが炸裂するのであったとさ。
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