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06 カーボエルテ王国 王都3

147 女子会2

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「それで……お前たちには浮いた話はないのか?」

 クリスタのジャブをイロナがバズーカで打ち砕いたからには、イロナの秘密を知りたがっていた皆からの質問は途切れる。
 しかしイロナからの右フックが飛んで来たので、クリスタとオルガは肘で牽制し合い、二人で話すこととなった。

「私たちは教会で暮らしていたから……ね?」
「はい。男性とのお付き合いは禁じられていましたので……」
「ほう……人族とは、そのような不便な施設もあるのか。奴隷館とは真逆だな」
「まぁ、そうだけど……エイニ。あなたは自由恋愛してたよね?」
「私ですか!?」

 奴隷館というワードを聞いて、ヒルッカには耳に毒と感じたクリスタは、エイニに無茶振り。手を合わせて目で謝りながらお願いしている。

「私は……宿の復活で頭がいっぱいでしたので……恋している余裕なんてありませんでした~」
「子供の頃でいいのよ。心温まるような初恋とかなかった??」
「急に言われても思い出せないですよ~……そうだ! リーサ姉さんは既婚者ですよ!」
「ええぇぇ!?」
「聞かせてくれるよね?」

 エイニに突然振られたリーサは驚いていたが、クリスタにも頼られたからには話すしかない。しかし嫌そうに恋愛遍歴を語り出したリーサであったが、出るわ出るわ。
 子供の頃から男をたぶらかし、何十人と取っ替え引っ替え。いまの夫とは運命の出会いを果たしたとノロケ出したが、事実は金持ちの客に手を出した玉の輿なので、また一同ドン引き。

「ふむ……なかなかやり手なのだな。どのようなテクニックで落としたのだ?」

 その中で、イロナだけが興味津々。二人が大人な話で盛り上がっているので、ヒルッカの耳を塞ぐクリスタとオルガであった。


「ヒルッカちゃんは、リュリュ君とどうなってるの?」

 イロナたちの下品な話が終わったら、クリスタは心温まる話を求む!

「え……リュー君とは、ただの幼馴染みなんですが……」
「え~! いっつもいい感じじゃない? 親公認で付き合ってるもんだと思ってた」
「兄弟みたいに育ったから、仲がいいだけです」
「じゃあ、リュリュ君の片想いか~」
「そうなんですか!?」
「あっれ~? 幼馴染みなのに嬉しいのかな~??」

 クリスタ絶好調。鎌を掛けただけなのにヒルッカが顔を真っ赤にして食い付いたので、根掘り葉掘り聞いていた。

「なるほど。あのちっこいのと恋仲になりたいのだな。ならば、我とリーサで技を授けてやろう」
「イロナさん! それはいいから! 温かく見守ろう。ね?」
「そうですよ! こういうのは、モジモジしている若者を遠くから見て楽しむものなんです!」

 イロナがヒルッカを大人の世界に引きずり込もうとするので、常識人のクリスタとオルガが止めに入った。その他もウンウン頷いていたから、イロナも「そういうものなのだな」と納得していたが、ヒルッカは納得していない。

「楽しむってなんですか!? わたしの恋愛はそんなに面白いのですか!?」
「「「「まぁまぁまぁまぁ」」」」

 さすがに大人に酒の肴にされると知ったヒルッカは怒っていたが、ケーキを勧められて宥められていたら、幸せそうな顔に変わっていた。


「ふぅ~。女子会とは、なかなか面白いものだな」

 イロナが満足した顔で酒をクイッと飲むと、クリスタたちは「ハッ」として顔を見合わせ、こんなことを心の中で思っていた。

(((((トゥオネタル族のこと、聞き忘れてた~!)))))

 そう。この女子会は、イロナの秘密を聞き出す会。皆は心をひとつにして、クリスタが頷く。

「それでイロナさん。トゥオネタル族って、女の人なんているんだ~」
「ああ、いるぞ。主殿にも話したんだが、驚いていたな……」

 てっきり隠していると思っていた秘密をイロナはペラペラ喋り、トゥオネタル族についての情報はなんなく手に入ったクリスタたち。
 ただし、里を出た際の怖い逸話はドン引きしていた。

「親兄弟、親戚縁者を半殺しって……」
「そのおかげで、追っ手もなく自由の身だ」

 皆がドン引きしているのに、イロナはいい笑顔。協力者が体を張って止めてくれたならその笑顔は正しいのだろうが、自分一人で解決したからには、魔王の微笑にしか見えないクリスタたちであった。

「ところでなんだけど……そんな大事なことを私たちに喋ってもよかったの?」

 全てを聞き出したクリスタは、もしも漏らしたらどうなるかが怖すぎて聞かないことにはならない。

「特に秘密にしていることでもないからな」
「でも、ヤルモさんは止めてたけど……」
「ああ。主殿は目立ちたくないのだろう。トゥオネタル族はこちらでは珍しいらしいからな」
「あ~……そりゃ、勇者や聖女より一大事だ」
「ほう。お前たちより珍しいのか。そういえば、我の職業も珍しいらしいのだ」
「珍しい職業……だからそんなに強いんだ! なんて職業??」
「『戦女神』だ。お前たちは『戦女神』という職業のことは知らないか? 主殿がお伽噺のようなことを言っていたのだが、詳しく知らなかったのだ」

 イロナの職業について聞かされると、また全員フリーズ。しかし、クリスタとオルガはなんとか動き出した。

「そ、その職業は事実なの?」
「むろんだ。我が嘘を言うわけがなかろう。その顔は、何か知っている顔だな」
「知ってるというよりも有名なんです。ダンジョンが初めて確認された際、神が『戦女神』を地上に送り、世界を滅ぼそうとする悪魔の王『サタン』から守ったと教会の伝承に残っていまして……」
「そうそう。『戦女神』が崩御した際に世界が温かい光に包まれて、人々に職業の種が芽吹いたとなってるし……」
「つまりは……職業の開祖、もしくは職業を授けた女神……」
「女神? 我はそんな大それたものではないぞ」

 イロナが女神を否定するが、クリスタたちはそれどころではない。

「これ……ヤバくない??」
「は、はい……ヤバイです。教会では神の一柱になっているのに、人間だったなんて……」
「トゥオネタル族だけでも一大事なのに……」
「教会にこのことを知られたら……」

 クリスタとオルガは青い顔をして声を揃える。

「「イロナさんに滅ぼされる……」」

 どうやら二人には、こんな未来が見えたらしい。教会がイロナを女神として囲おうとしつこく接触し、反撃を受ける。さらには国をも動かし、国家、教会諸共滅ぼされる未来が……
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