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06 カーボエルテ王国 王都3
137 謁見3
しおりを挟む「なんで助けてくれないんだよ!」
国王との謁見の帰り道、馬車の中でヤルモの文句がクリスタに炸裂する。
「いや~。私じゃヤルモさんをこの国に留められないと思って……」
別室で王族直々にスカウトされたヤルモはげんなりしていたのに、クリスタが助けなかったのは、クリスタも残ってほしかったかららしい。
「止めないから王様のことをオッサンとか呼んじゃっただろ! 縛り首にされたらどうするんだ!!」
「あはは。かなり失礼なこと言ってたね。ま、お父様たちも笑っていたからお咎めなしよ」
ヤルモの怒りを笑って誤魔化していたクリスタは、急に真面目な顔に変わる。
「正直なところ、お父様があそこまでヤルモさんのことを気に入るとは思っていなかったわ。だから少しは信じて考えてくれない?」
「騎士とか貴族なんて言われてもな~」
「他にもあったでしょ? ヤルモさんには教師が合っていると思うの。冒険者を引退してからでもいいから、この国で教師として新人を育ててほしいの。何年でも待つから考えておいて」
「教師、か……」
真面目なクリスタの言葉に、ヤルモは考え込んでしまう。
謂れの無い罪で犯罪者となってからというもの、ヤルモは定住して暮らしていない。冒険者としては各地を転々とする生き方をしている者もいるが、それは若い頃の話であって、多くはひとつの町を拠点として活動している。
現にヤルモは行く先々の町で、同年代の冒険者が家族の話で盛り上がっている現場を何度も見た。カウンターで一人寂しく聞いていたヤルモは、そんな些細な幸せが羨ましくなって、切なくて泣いた夜もある。
もう30代半ば超え。冒険者として動ける時間も差し迫っている。引退してからも稼げるなら定住して、家族と幸せに暮らせる未来があるのでは……
「教師もいいかもな……」
長時間黙り込んでいたヤルモは感慨深くボソッと呟くが、クリスタはオルガと違う話をしていて聞き逃してしまった。
「いま、なんか言わなかった?」
「ん? なんでもない」
「あ、そ。でも、考えるぐらいしてよね~?」
「考えるだけならな」
「やった! 聖女様も聞いたよね!?」
クリスタ痛恨のミス。ヤルモが少しだけ歩み寄ってくれたと大喜び。本当は半分ぐらいは教師になることに揺れていたのだが、ヤルモの心の中に留められるのであった。
ウサミミ亭に帰った勇者一行は、お城の話題で盛り上がり、エイニから羨望の眼差しで見られていた。ただ、食事の腕前はエイニと同程度の技量と聞いて、かなり自信がついたようだ。
「宿屋の主人が料理長って、どうなんだ?」
「確かに……もう、経営者を雇ったほうがいいかも?」
「どちらも兼ねてるスペシャルな主人だからいいんですぅ~!」
その自信を打ち砕こうとするヤルモとクリスタは、頬を膨らませるエイニにツッコまれるのであったとさ。
その深夜……
ヤルモとイロナは日課の「ハァハァ」したあと、抱き合って横になっていた。
「今日は少し元気がないな。我に飽きたのか?」
ヤルモはいつも通りのサルになっていたのだが、イロナからしたら微妙な違いがあるみたいだ。
「ちょっと考えてしまってな~」
「考える……教師の話か?」
「聞こえていたんだ……」
「まぁな」
クリスタたちには聞こえなかったヤルモの呟きはイロナには筒抜けだったので、ヤルモは頭をガシガシ掻きむしる。
「もしもだ。もしもだけど、俺が教師になったらイロナはどうする?」
「どうするも何も、我は性奴隷だから主殿と一緒にいるぞ」
「ああ。性奴隷は一回忘れてくれ。教師になるってことは、好きなようにダンジョンに潜れなくなるってことだ。それでも一緒にいてくれるのか?」
遠回しの言い方だが、ヤルモに取ってはプロポーズ……
「いや、なんだかプロポーズみたいな言い方だな。イロナだって借金が返済されたら俺から離れて行くか。忘れてくれ」
いや、プロポーズではなかった。ヤルモは人の温もりを金で買ったと思い出して、未来の話は撤回した。
「何を言いたいかわからないが、確かにダンジョンに潜れない一生は退屈だな」
「だよな~……」
「でも、まぁ、主殿と一緒にいると我は楽しいぞ。先のことはわからないが、飽きるまでは一緒にいてやろう」
「楽しい……か。俺もイロナと一緒にいると楽しいな。ちょっとレベル差があって痛いけど」
「ならばさっさとレベルを上げろ。そういえば最近、主殿の喘ぎ声を聞いていないな。どれ、久し振りに我のテクニックを見せてやろうじゃないか」
「いや、今日の分は出し切ったからもういいかな~?」
ヤルモは何をされるかがわかったので股間を手で守るが、イロナにそんな紙装甲は通じない。両手でおっぴろげられてしまった。
「喰らえ~~~!!」
「きゃああぁぁ~~~!!」
そしてとてもそんなことをするようにない掛け声からのイロナフルコース。拷問のようなフルコースを受けたヤルモは、久し振りの痛みに叫び声をあげるのであったとさ。
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