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06 カーボエルテ王国 王都3

131 別行動3

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 昼食を終えた勇者一行はウサミミ亭を出てお買い物。王都一の仕立屋で勇者パーティ全員の正装をクリスタから買ってもらっていた。
 イロナ以外、値段を見てあわあわしていたが、クリスタはこれから必要になると言って押し付けていた。
 完成には数日掛かるというので、国王との謁見当日にウサミミ亭に届けてもらい、ついでに着付けてもらう契約となったようだ。
 何着も高級な服に袖を通した庶民は、それだけでくたくた。ウサミミ亭で泥のように眠るのであった。

 その翌日はダンジョンに必要な物の買い付け。その次の日には、各々の目指すダンジョンに潜る。

 ヤルモとイロナは特級ダンジョンの受付で嘘の目的を書いて通してもらう。ここではいつもクリスタと一緒に通っていたので、「地下40階まででレベル上げをする」と書いたら簡単に信じてもらえていた。

「二人はいつぶりだろう?」
「王都に着いた時以来か……」
「ま、今回は勇者たちもいないし、60階まで一気に行こうか」
「ようやく伸び伸びできるな」

 ヤルモとイロナは地下を走る。モンスターを盾で撥ね飛ばし、剣で斬り裂き、冒険者を驚かせ、昼食で少し休憩。それから休まず走り続ければ、一日で地下60階まで走破。
 セーフティエリアであんなことやそんなことをして英気を養うと、翌日の地下61階からは宝箱を漁りながらモンスターを狩り尽くすのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 クリスタたちの場合……

「さささ、さあ! いい行くわよよよ」

 中級ダンジョンの前でガチガチのクリスタ。受付でもペンが震えて、「新メンバーのレベル上げ」という目的も書けないのでオルガが代わっていた。

「緊張しすぎです。ヒルッカさんやパウリ君まで緊張してしまったじゃないですか」
「だって~。ヤルモさんがいないんだも~ん」

 初ヤルモ抜きのダンジョンはクリスタには恐怖の対象のようだが、オルガとリュリュは落ち着いたもの。それがクリスタは不思議なようだ。

「二人は怖くないの?」
「私も少し怖いですよ。でも、特級ダンジョンと比べたらマシです。イロナさんもいないですし」
「僕は一度、学校の授業で来たことがありますので。三階まででしたけど、初級ダンジョンのモンスターとあまり変わらなかったですよ。イロナさんもいませんし」
「じゃあ、どっちかがパーティリーダーで……」
「「勇者様がリーダーでしょ!」」

 二人にツッコまれたクリスタは、渋々ダンジョン内へ。そうしてヒルッカに索敵を任せていたら、オークが二匹いるとストップを掛けたのでクリスタも確認する。

「なんか弱そう……ちょっと一人で試していい?」

 皆が頷くと、クリスタは正面突破。オークに素早く近付いたら一刀両断。もう一匹は盾で受けたりして強さを確認してから、首を斬り落としたのであった。


「めちゃくちゃ強くなってる……」

 今までモンスターを楽勝で倒したことがないクリスタは、自分の実力を知って立ち尽くしていた。そこにオルガたちが駆け寄ると、クリスタは笑顔で振り返る。

「私、凄く強くない? これなら中級なんて余裕よ!」
「勇者様……調子に乗るなとヤルモさんに言われていたでしょ。気を引き締めてください」
「うっ……ちょっと喜んだだけよ~」

 鼻高々に調子に乗っていたクリスタは、オルガに鼻っ柱を折られて情けない声を出した。だが、次の瞬間には両頬を「パシーンッ」と叩いて気合いを入れる。

「これならみんなに経験値を分けられそう。みんな……私の指示通り動いてね!」
「「「「はい!」」」」

 これよりクリスタは、ヤルモの戦い方ををマネしてヒルッカやパウリに経験値が行くように戦う。
 モンスターを蹴り飛ばし、一対一で盾で止めたらヒルッカのナイフ、パウリの剣によって斬られる。蹴り飛ばしたモンスターが戻って来たら止めていたモンスターを吹っ飛ばし、トドメは二人に任せる。
 モンスターが多い場合はリュリュの広範囲魔法とクリスタの攻撃で数を減らし、ほどほどの数になったらレベル上げ。

 そうして二人のレベルが上がって来たら、HPを削ったモンスターを任せる。
 ヒルッカは素早く動いてヒットアンドアウェイ。危なげなくモンスターをナイフで斬り裂いて倒す。
 パウリは大盾で受け、チャンスがあれば剣を振って攻撃するが、この中で一番レベルが低いので少し手こずっていた。
 そのおかげでオルガにも出番。パウリオンリーに治癒魔法を掛けるので、何度も謝罪を受けていたが、クリスタのほうが大きな傷を負うことが多かったと慰めていた。

「だから私のことは出さないでよ~」
「「あはははは」」

 ただ、クリスタは不甲斐ないことをバラされてご立腹。そのことを知るオルガとリュリュに笑われていたが、そこまで怒っていないところを見ると、場の雰囲気を盛り上げようとツッコんでいたようだ。


 勇者パーティは冒険者ギルドが作った地図の最短距離を進み、モンスターを薙ぎ払い、ヒルッカやパウリのレベルも上がって限界が来た頃にセーフティエリアに到着。
 協力して夜営の準備を行い、オルガの作った料理をわいわい食べる。

「聖女様にはまた怒られるかもしれないけど……これぐらいなら楽勝よね?」
「ですね。特級と比べると、天と地かってほどです」
「初級からゆっくりレベル上げができていれば、あんなに不甲斐ないことにはならなかったのかも」
「自信も付きますしね。私たちは無理しすぎていました」
「あのバカお兄様がミスらなければ、こんなことにならなかったのにね~」

 クリスタとオルガは、いきなり勇者と聖女の使命を背負わされた苦労話に花が咲き、皆はそんな苦労があったのかと初めて知ることとなった。

「ヤルモさんたち、今ごろ何階ぐらい攻めてるんだろ?」
「規格外ですからね。案外、20階のセーフティエリアを飛ばして40階で休んでいるかもです」
「あはは。足手まといがいないもんね~」
「足手まといがいませんものね。ウフフ」

 自分で自分を足手まといと言いながらも二人は笑う。唯一、ヤルモとイロナの実力を知らないパウリだけは「そんなことないッス!」とクリスタを褒めていたので感謝の言葉を送り、夜が更けていくのであった。

 ヤルモたちは地下60階のセーフティエリアで、あんなことやそんなことをしているとは露知れず……
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