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06 カーボエルテ王国 王都3

129 別行動1

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 特級ダンジョンから出ると、いつも通りクリスタたちは冒険者ギルドに報告に向かい、ヤルモとイロナはイチャイチャしながらウサミミ亭に帰る。
 そして報告を終えたクリスタたちが戻るとささやかな宴会が行われ、エイニとリーサもしれっと参加して皆で楽しい夜を過ごした。

 その翌日……

「あの二人、なんかおかしくない?」
「はい。ずっとモジモジしてますね」

 朝食の席でクリスタとオルガは、ヤルモとイロナの異変に気付いてコソコソと喋っている。

「ヤルモさんの顔が超気持ち悪いんだけど……」
「イロナさんも、なんだかだらしない顔をしてますね……」
「聖女様から聞いてくれない?」
「勇者様から聞いてくださいよ~」

 二人の異変は気になるクリスタとオルガであったが、なかなか切り出せないでいると、空気の読めないエイニが質問してしまう。

「お二人とも、何かいいことあったのですか?」
「いや~……別に……なあ?」
「うむ……特に何も……な?」
「絶対何かありますよ~」

 通じ合うヤルモとイロナにしつこく質問するエイニであったが、二人ともニヘラっと笑うだけで答えは得られない。

「二人とも機嫌がよさそうだね」
「本当に……何があったのでしょうね」

 クリスタとオルガは話し合っても結論は出ない。何故ならば、昨夜は突発的な事故のおかげで童貞と処女が一線を越えたからだ。まさかこんなオッサンのヤルモが童貞、まさか性奴隷のイロナが処女だったとは知る由もないだろう。
 普段からやっているものだと思っているのだから、初体験を済ませた二人がモジモジしていたりニヤニヤしていても気付けないのだ。

 わけもわからないままラブラブな空気が流れる空間は居心地が悪いのか、一人、また一人と食堂から人は消え、ヤルモとイロナも自室に消えて行った。
 それから昼に食堂で集合し、夜にも集合したのだが空気は変わらず。クリスタたちは話したいこともできずに、ヤルモとイロナを無視し続けるのであった。


 その翌日も、ヤルモとイロナはだらしない顔。またクリスタとオルガは何やら勘繰っていたが、昨日よりは話しやすい空気だったので声を掛けてみる。

「ヤルモさん。マッピングの件で話があるんだけど……」
「ん? またダメ出しくらったのか? しょうがないな~。次回も頑張ろう」
「いや、今までにないぐらい詳細な地図だと褒められたんだけど……」
「あ、そう。これもみんなの頑張りのおかげだな~」

 あんなにマッピングを面倒くさそうにしていたヤルモなのに、何故か上機嫌で協力的なのでクリスタは気持ち悪い。

「あと、新メンバーが今日、城から派遣されることになってるの」
「もう決まったのか。いい人だといいな~」
「いちおう真面目な男の人だとは聞いてるけど……」
「男か~。いいんじゃないか? 強くなるといいな~」

 ヤルモは興味なさそうだが褒めているので、クリスタは吐きそうになったが、これならあの話も通じるかと思って言ってみる。

「お父さんがパーティメンバーを紹介しろってうるさいの。ついて来てくれない?」
「そりゃ大事な娘さんを、どこの馬の骨かもわからないヤツに預けているんだもんな。気になるだろう」
「じゃあ、来てくれるってことね?」
「うん。挨拶ぐらい……」

 ヤルモは上機嫌で首を縦に振ったところで、動物の防衛反応が働いて言葉が詰まる。

「どうしたの?」
「勇者の父ちゃんって……偉い人だったよな?」
「偉いっていうか……この国のトップ。知ってるでしょ?」
「お、おおお王様……王様だった!? 王様だった~~~!!」

 いまさら国王との謁見に頷いてしまったと後悔するヤルモ。

「無理です。行ったら必ず縛り首にされる……」
「どうして挨拶しただけで縛り首にされるのよ!」
「王様だから……」
「どんな偏見!? てか、もうすでに『うん』って言ったんだからね!」
「王族が脅して来る……」
「脅しじゃなくて決定事項。みんなも聞いたよね~??」

 言質を取られたヤルモの負け。結局はクリスタに押し切られ、城に行くことが決まった。


 それからいつもの警戒心の強いオッサンに戻ったヤルモがブツブツ言っていたら、リーサが馬車の音に気付いて食堂から出て行き、ほどなくして、全身鎧で坊主頭の男を連れて戻って来た。

「はじめまして! 自分は、騎士団から派遣されたパウリと申します! 弱卒ながら王女様の護衛を務めさせていただきます! よろしくお願いいたします!」

 部屋に入るなりパウリは深々とお辞儀。クリスタは立ち上がって、皆に紹介する。

「この人がさっき言ってた新メンバーね。最近騎士団に入ったのよね?」
「はっ! 一月前になります!」
「その前は、自分の村に出たモンスターを一人で追い払ったと聞いたけど事実?」
「はっ! 自分の村は貧乏でして、やるしかなかったであります! その功績で騎士に取り立ててもらいました!」
「という経緯だけど、どうかな?」

 いちおうパーティリーダーであるヤルモに話を振ると……

「がたいもいいし、盾役にはいいんじゃないか? でも、硬そうなのはいいけど、口調も堅いな」
「これが王族に対して普通の対応だからね?」
「普通じゃない俺は縛り首……」
「しないから! パウリもパーティメンバーなんだから気軽にしてくれていいのよ?」
「「はっ! わかりましたであります!」」
「なんでヤルモさんまで……はぁ……」

 何故かヤルモまで敬礼するので、クリスタはため息を吐くしかできないのであったとさ。
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