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05 カーボエルテ王国 王都2

089 来客4

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「それとなんだけど……」

 ヤルモ関係の諸々の話を終えたクリスタは、モジモジと確認を取る。

「イロナさんって、お嫁さんじゃなくて性奴隷だったのね……」
「そ、それがなんだ? この国では違法じゃないぞ!」

 夫婦設定が嘘とバレて、焦って大声を出すヤルモ。どうも性奴隷を使役している後ろめたさがあるようだ。

「いや、責めているわけじゃないの。かなり驚いたけど……」
「合法なんだから驚くことでもないだろ」
「だってあの強さよ? 戦闘奴隷でもありえない強さなのに、性奴隷よ? なんだったら、ヤルモさんの命令なんてまったく聞かないじゃない? どっちが主人かと聞かれたら、イロナさんって絶対言うわよ」

 クリスタが早口で捲し立てるなか、オルガはウンウン頷いているし、ヤルモも小さくウンウン頷いている。

「それに……じゃない! 言いたいことは、なんでイロナさんは性奴隷になってるの?? って、こと!!」

 こんな魔王みたいに強い美女が性奴隷になる理由の見付からないクリスタは、タブーに踏み込んだ。

「望んでやっていることだが……悪いか?」

 もっとこう、お涙頂戴的な話があるのかと思っていたクリスタたちであったが、イロナの答えに口をパクパクするしかない。

「えっと……そうじゃないと、イロナは性奴隷に落とせないと思う」

 なんだか二人がかわいそうに見えたヤルモが補足すると……

「「ですよね~」」

 納得するしかなかったとさ。


「私の権限があれば、奴隷から解放できるんだけど……」

 気を取り直したクリスタは、イロナにナイスアイデアを提示した。

「いらん」

 しかし、イロナは一蹴。そこにオルガが参戦する。

「でもですね。性奴隷じゃなくとも、ヤルモさんと一緒にいられますよ?」
「我は性奴隷に誇りを持っているのだ」
「いや、誇りを持つことじゃないんですよ」
「お前はやめろと言うのか?」
「はい……ヤルモさんと一緒にいたいなら、夫婦という関係でもいいはずです。ヤルモさんもそう思いますよね?」
「えっ!?」

 黙って傍観していたヤルモは、いきなりオルガに話を振られて驚いた。

「ヤルモさんは、イロナさんと結婚したいから、奴隷館から助け出したのですよね?」
「いや、普通にヤリたいと思って……」
「不潔です!!」

 正直すぎるヤルモは、オルガに一刀両断。聖女としては、性奴隷や奴隷をあまり認めたくないようだ。

「正直言って、いまの関係のほうが楽かな? 結婚なんて考えてなかったし、奴隷だから信頼できるところもある」
「主殿……」
「イロナさん。感動するところじゃないから」
「ヤルモさんも酷いことを言ってることを自覚してください」

 何やら通じ合うヤルモとイロナに、クリスタとオルガは冷やかにツッコムのであった。


 イロナの性奴隷の件はうやむやになったところでドアがトントンと叩かれ、エイニが入って来た。どうやら夕食の準備ができたらしく、クリスタたちにも食べて行くようにプッシュしていたので、有り難くいただく流れとなった。

「では、いただきます!」

 一同食堂に移動したら、エイニの挨拶で食事が始まるのだが、クリスタとオルガの視線がエイニに集まる。

「アレ? 食べないのですか??」
「あなたも一緒に食べるの? 宿の人でしょ??」
「……あっ! その……これがうちのスタイルでして……」

 エイニ、痛恨のミス。ヤルモたちとは普通に食べていたので、初日に言われていたことをすっかり忘れ、クリスタにツッコまれてしまった。

「まぁ食べろよ。うまいぞ」

 イロナと共にガツガツ食べていたヤルモはもう気にならないらしく、エイニを擁護する。それでクリスタたちも食べ始め、舌鼓を打つこととなった。

「ホントだ。聖女様の料理より美味しい……」
「私のは素人料理ですから比べないでください。お城の料理と比べてください」

 まさか自分と比べられるとは思っていなかったオルガは訂正を入れるが、クリスタは教会で長く暮らしていたので、子供の頃に食べていた宮廷料理の味は忘れているようだ。

「な? 言っただろ?」
「うん。よくこんな宿屋を見付けたね」
「まぁ最初は宿屋だとは思わなかったけどな。住めば都ってヤツだ」

 ヤルモとクリスタたちが食べながら喋っていると、エイニがそろりと手を上げた。

「あの~?」
「なんだ?」
「タピオさんは、勇者様とお友達なんですか?」
「いや、違うぞ」
「じゃあ、どうしてフレンドリーに話をしてるのですか! 勇者様は、この国の王女様でもあるんですよ!!」
「あ……」

 エイニに言われて、ヤルモはここで始めて敬語になる。

「そう言えばそうだった……度重なる非礼、申し訳ありません」

 そしてクリスタは、いまさらなことなので笑い出した。

「あははは。そういえば、ずっと普通に喋っていたね。緊急事態だったから忘れていたんでしょ? 私は気にしてないから普通に喋ってくれていいよ。逆に気持ち悪いから」

 ケラケラと笑うクリスタとヤルモをエイニが交互に見るなか、ヤルモは気になることを口走る。

「そんなことを言って、不敬罪で捕まえるのでは?」
「まだ信用してくれないの!?」

 疑り深いヤルモでは、当然の対応であった。

「だから皆さんの関係はなんなんですか~」

 仲良さそうなヤルモとクリスタを見たエイニが気になるのも当然の反応であったとさ。
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